数年前、『ヤンキー人類学』という展覧会を構想しているとき、広島市で開催された公募展のパンフレットで見つけたのが、伊藤輝政という名前だった。そこに掲載されていたのは、3点ほどの小さな紙製のデコトラ(デコレーショントラック)で、大きな期待はせずに僕は広島市にある作者の自宅を訪問した。 広島市にある小高い住宅街の一角で、伊藤さんは両親と暮らしている。玄関で両親に挨拶をしていると、奥の部屋から伊藤さんがやってきた。歳は僕より1つ上。ずいぶん色白の人というのが第一印象だった。母親に話を伺うと、出生時から心臓に障害があり、その影響で極端に運動が制限されるため、これまで生活のほとんどを自宅で過ごしてきたという。そんな彼がデコトラをつくり始めたのは、幼少期に観た菅原文太の映画『トラック野郎』シリーズがきっかけだ。この映画がブームとなり、電飾で飾りペイントを施して走るデコトラが全国で流行したが、彼がつくり始