要約 1.近年、実力・実績主義的賃金制度を導入する動きが活発化しているが、その背景には、処遇格差によって個人間の競争を促し、企業の生産性向上を実現しようという「ミクロ的効率性」に着目した考え方が存在する。一方、賃金改革が所得格差の拡大をもたらす可能性の是非や、平等主義に基づく日本社会の安定性を損ねるとの懸念など、「マクロ的公平性」に関する議論が盛り上がりをみせている。しかし、日本経済全体の活性化という現下の緊急課題からすれば、「賃金システムのあり方が所得格差への影響を通じて経済活力にどう作用するか」という「マクロ的効率性」に焦点をあてた議論がもっと必要である。 2.近年における実力・実績主義的賃金制度の導入の動きは、経済環境の構造変化に裏打ちされたものであり、その意味で決してブームや流行といったものではなく、今後の人事制度改革の潮流として一段と進展していく公算が大きい。しかし、実力・実