過疎地域
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過疎地域(かそちいき)とは、人口の著しい減少に伴って地域社会における活力が低下し、生産機能及び生活環境の整備等が他の地域に比較して低位にある地域[1]。総務省が過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法[2]により原則として市町村単位で指定するが、平成の大合併前の旧市町村の区域に限定して指定することもある。
日本以外にも過疎地域は存在する。例えば、アメリカでは農村部や山間部など、都市から離れた地域では人口が減少して過疎化が進んでいる。また、韓国でも日本と同様の過疎問題が生じている。
概要
[編集]2010年の過疎地域面積は、日本国土の57.3%にあたる216,000平方km2、過疎地域人口は8.8%の1120万人[3]。地域の自治体は地方税の税収が少なく、財政力が弱いという特徴がある。
全ての都道府県に、過疎地域に指定された市町村が存在する(滋賀県は2022年までに長浜市の旧虎姫町・旧木之本町・旧余呉町・旧西浅井町と高島市の旧朽木村のみで、市町村全域が指定されている自治体は存在しなかった)。東京都は奥多摩地域と伊豆諸島に過疎地域がある(檜原村、奥多摩町、大島町、新島村、三宅村、八丈町、青ヶ島村)。神奈川県と大阪府は長い間、過疎地域に指定されている市町村が一つもなかったが、大阪府では2014年3月31日付で南河内郡千早赤阪村が[4][注 1]、神奈川県でも2017年3月31日付で足柄下郡真鶴町がそれぞれ過疎地域に指定された[5]。また、島根県においては全市町村に過疎地域に指定された地域が存在するほか、北海道の檜山振興局、日高振興局、留萌振興局、宗谷総合振興局管内の市町村は全域が過疎地域に指定されている。なお、真鶴町以外の神奈川県内の市町村でも、局地的に同様の問題に直面している地域がある[注 2]。
過疎化の背景として若者の都市部への流出や雇用の場の不足等があり、その結果高齢化が進んでいる。対策として過疎地域自立促進特別措置法の他に「特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律」[6]や「山村振興法」等が制定されている[3]。
2021年4月1日、過疎地域自立促進特別措置法の失効により、過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法が施行[7]。
法令上の定義
[編集]日本の法令上の過疎地域の定義は、財政力指数にもとづく財政要件と、人口減少率・高齢者率・若年者率を勘案した人口要件によって定義される[8]。
過疎地域自立促進特別措置法の「過疎地域」は法改正により定義指数が変化する国政上の定義概念であり、時代や国境を超えた共通概念ではない。法令上は、単に人口が減っただけでは過疎地域にはならず、財政が悪化しただけでも過疎地域とはならない。人口が減り、老人が増え、または若年人口が減り、かつ、地域財政力も減っているなど、様々な要件を日本国政府が認めた場合に限り「過疎地域」となる[8]。
なお、都道府県や市町村あるいは学術団体などが、新国民生活指標(PLI)[9]や暮らしの改革指標(LRI)[9]、その他幸福度指標[10]をもとに、独自に「過疎地域の定義」を定め、独自の定義にもとづき、地方公共団体が過疎地域を指定し、自治体独自の社会政策を実施することは可能である。
しかし、日本国政府の支援を受ける場合は、法律の定義による過疎地域の指定が必須である。地方が過疎地域を指定し、政府がその地域を支援することは基本的にはできず、独自財源が必要となる。その意味で特別措置法に基づく過疎対策は、地方分権化の課題のひとつである。
一覧
[編集]下表は2022年4月1日時点での過疎地域の一覧である(全885市町村)。うち過疎市町村(過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法2条)は713市町村、過疎地域と見なされる市町村(同法3条・41条、いわゆる「みなし過疎」)は14市町村、過疎地域と見なされる区域を含む市町村(同法3条・42条、いわゆる「一部過疎」)は158市町村がある。また、旧法における一部の過疎関係市町村が過疎地域の要件を満たさなくなったため、新法の施行に伴い指定が解除された(ただし、うち一部は2022年に再び過疎地域となった)[11][12]。かっこ内は該当自治体の数(特定市町村を含まず)と全市町村の数。
指定解除団体
[編集]2021年の新法の施行に伴い、過疎地域の要件を満たす区域がなくなる市町村(2022年に再び過疎地域となった市町村を除く)[11]。
都道府県 | 全部指定 | 一部指定 |
---|---|---|
北海道 | 京極町 | 函館市(旧函館市) |
青森県 | 東通村 | 八戸市(旧南郷村) |
秋田県 | 秋田市(旧河辺町) | |
福島県 | 湯川村 | |
群馬県 | 上野村・嬬恋村 | 高崎市(旧倉渕村) 藤岡市(旧鬼石町) |
新潟県 | 柏崎市(旧高柳町・旧西山町) | |
富山県 | 富山市(旧山田村・旧細入村) | |
石川県 | 白山市(旧吉野谷村・旧鳥越村・旧白峰村) | |
福井県 | 福井市(旧美山町・旧越廼村) おおい町(旧名田庄村) | |
山梨県 | 甲府市(旧上九一色村) 富士河口湖町(旧上九一色村) | |
長野県 | 南相木村 | 長野市(旧大岡村・旧戸隠村・旧鬼無里村・旧信州新町・旧中条村) 松本市(旧四賀村・旧奈川村・旧安曇村) |
静岡県 | 浜松市(旧春野町・旧龍山村・旧佐久間町・旧水窪町) 沼津市(旧戸田村) 島田市(旧川根町) | |
愛知県 | 豊田市(旧小原村・旧足助町・旧旭町・旧稲武町) | |
三重県 | 津市(旧美杉村) | |
京都府 | 京都市(旧京北町) | |
岡山県 | 岡山市(旧建部町) | |
広島県 | 福山市(旧内海町) 東広島市(旧福富町・旧豊栄町・旧河内町) | |
山口県 | 宇部市(旧楠町) 周南市(旧鹿野町) | |
徳島県 | 東みよし町(旧三好町) | |
香川県 | 高松市(旧塩江町) | |
愛媛県 | 松山市(旧中島町) 新居浜市(旧別子山村) 四国中央市(旧新宮村) | |
福岡県 | 大牟田市 | |
大分県 | 大分市(旧野津原町・旧佐賀関町) | |
宮崎県 | 木城町 | |
鹿児島県 | 鹿児島市(旧桜島町) | |
沖縄県 | 北大東村・竹富町 |
過疎地域の問題に関する取組み
[編集]一般的に過疎対策のための連盟組織の設立や行政による民間の過疎対策等の表彰が挙げられる。
2022年現在、過疎地域市町村や特定市町村や過疎に関係する都道府県が会員となる一般社団法人全国過疎地域連盟が活動しており、当該連盟は1970年5月に設立され、過疎法の制定と過疎問題に対応する特措法制定等に伴い、以下のように名称変更を行っている[13]。
- 1970年 過疎地域対策緊急措置法により全国過疎地域対策促進連盟
- 1980年 過疎地域振興特別措置法により全国過疎地域振興連盟
- 1990年 過疎地域活性化特別措置法により全国過疎地域活性化連盟、
- 2000年 過疎地域自立促進特別措置法により全国過疎地域自立促進連盟
- 2021年 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法により全国過疎地域連盟
- 2022年 一般社団法人全国過疎地域連盟
例えば、2022年現在の和歌山県町村会においては、全国過疎地域連盟和歌山県支部の支部長を和歌山県知事が務め、副支部長を有田川町の町長と和歌山県議会理事長が務めるという組織構造となっており、全国過疎地域連盟和歌山県支部は、会員間の連絡・連携を行うとともに一般社団法人全国過疎地域連盟・関係諸団体と連携・協力して、過疎地域の生活の充実等を目的として、政府・国会に予算や施策に関連した要望を行うとしている[14]。
連盟の活動内容は、過疎地域の持続的発展のための施策・予算に関連する運動、調査研究及び資料の収集・整備、機関誌の発刊、情報提供・情報交換・その他必要な事業からなる[13]。
過疎地域における地域の持続的発展・風格の醸成・課題の解決策として創意工夫が図られている優良な取組み事例は、総務省の表彰制度と全国過疎地域連盟のその他必要な事業として表彰される[15]。表彰制度は1990年から始まって2021年度を含んでそれ以前までに32回行われており、その表彰に至るまでに、都道府県からの推薦を受け、地域の持続的発展と活性化において先進的モデルケースであるか否か、地域の資源により地域の魅力を高めるか否か、地域の自主的取組みで、かつ地域住民の参加と連携が図られるか否か、相当期間の活動によって取組みの効果が定着したか否かという審査基準で表彰委員が書類審査を行い、表彰委員が現地調査を行ったうえで、表彰委員会において優良事例が決定されるという流れを辿って、総務大臣賞と全国過疎地域連盟会長賞がそれぞれ授与される[15][16][17]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 徳島県庁コールセンター 2013年6月11日 徳島県
- ^ 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法 (PDF) 総務省
- ^ a b 過疎対策の現状と課題 (PDF) 2011年7月28日 総務省地域力創造グループ過疎対策室
- ^ ●平成26年3月31日付けで以下の市町村が公示されました(4月1日施行)。 (PDF)
- ^ [1]
- ^ “特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2018年5月18日). 2020年1月27日閲覧。 “平成三十年法律第二十三号改正、2018年11月16日施行分”
- ^ 政令第百三十七号 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法施行令 (PDF) (総務省)
- ^ a b 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法第2条
- ^ a b 菅内閣・内閣府 (22 December 2010). 幸福度に関する研究会資料 我が国における指標化の取組み (PDF). 内閣府第1回幸福度に関する研究会. pp. 1–5. 2017年6月17日閲覧。
- ^ 菅内閣・内閣府 (22 December 2010). 幸福度に関する研究会資料 国際機関及び各国政府で研究が進められている社会進歩及び幸福度の測定について (PDF). 内閣府第1回幸福度に関する研究会. pp. 1–17. 2017年6月17日閲覧。
- ^ a b 過疎地域市町村等一覧 (PDF) (総務省)
- ^ 令和2年国勢調査に基づく過疎地域の追加について (PDF) (総務省)
- ^ a b “連盟の紹介|一般社団法人全国過疎地域連盟”. 一般社団法人全国過疎地域連盟. 2022年8月6日閲覧。
- ^ “和歌山県町村会[全国過疎地域自立促進連盟和歌山県支部]”. www.wck.jp. 2022年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月6日閲覧。
- ^ a b “過疎地域持続的発展 優良事例表彰制度の概要” (PDF). 総務省. 2022年8月6日閲覧。
- ^ “令和3年度過疎地域持続的発展優良事例表彰における 総務大臣賞及び全国過疎地域連盟会長賞の決定” (PDF). 総務省. 2022年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月6日閲覧。
- ^ “総務省|過疎対策|優良事例表彰”. 総務省. 2022年8月6日閲覧。