OS/360とは? わかりやすく解説

OS/360

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/20 05:43 UTC 版)

OS/360(オーエスさんろくまる) は、IBM1964年に発表したメインフレームコンピュータであるSystem/360用のオペレーティングシステム (OS) である。

名称

正式名称は「IBM System/360 Operating System」である。

概要

本格的な商用のOSとしては世界初であり、以下の特徴がある。

  • (System/360自身の特徴だが)汎用(商用計算および科学技術計算)で、コンピュータファミリーを形成
  • 80桁のパンチカードを入力としたバッチ処理を起源に発達
  • 文字コードはEBCDICを採用
  • 磁気ディスク装置(DASD) を扱う最初のOS
  • OSはSystem/360アセンブリ言語で記述された
  • 当初より企業用として、プログラム(プログラマ用API)と運用管理(オペレータ用システムコマンド、JCL)を明確に分離している
  • System/360の大ヒットにより、メインフレームの主流OSとなる
  • 現在のIBMメインフレームOS (z/OS) も、OS/360を受け継いでいる(上位互換)

ファミリー

時期にもよるが、主に小型機種(モデル)向けには BOS、大型機種(モデル)向けには MFT、更には MVTが用意された。

  • 主流(大型機種用)
    • PCP(Primary Control Program)1966年
    • MFT(Multiprogramming with a Fixed number of Tasks)1966年
    • MVT(Multiprogramming with a Variable number of Tasks)1967年〜 (現在のz/OSの起源)

なおOS/360ファミリーではないが、System/360では、タイムシェアリング用OSであるTSS/360(1967年〜)、仮想化OSであるCP/CMS(1967年〜。現在のz/VMの起源)、ユーザー大学開発の MUSIC/SP などのOSも使用された。

歴史

起源

OS/360は、3つのコントロールプログラムファミリーとして生まれた。機能と同様に、そのサイズも増加していった。まず最初に、ジョブを順次に処理するシングルタスクPCPが生まれた。次に、マルチタスクを処理する、しかし予め大きさと数を設定しておいたメモリ分しかタスクの同時処理を許容しないMFTが生まれた。最後に、使用するメモリのサイズを動的に変えることが出来、同時に処理するタスクの数も可変で扱えるMVTが登場した。OS/360はまた、IBMのバッチ処理スクリプト言語である JCL を生んだ。

しかしOS/360は、IBM組織上の混乱と、巨大ソフトウェア開発の経験および技術上の重要な変更の経験の不足から、予定より遅れてリリースされた。当初の予定では、最初のシンプル版を1965年(昭和40年)に、機能を盛り込んだ複合版を1966年(昭和41年)に出荷する予定であった。しかしそれぞれ1年遅れ、PCPが1966年に、MVTが1967年(昭和42年)にリリースされた。

そのためSystem/360を使用する顧客には、代替としてよりシンプルなシステムBOSTOSDOSファミリーが、セットで急いで提供された。

その後の開発

そのような事情で、DOSは暫定的なツールと企図・制作されたものであったが、それは今日まで生き残った。仮想記憶を扱うDOS/VSに変化・継続し、後にDOS/VSEVSE/ESAz/VSEと変遷していった。

後にSystem/370のために可変アドレッシングを行うハードウェアが開発されたとき、OS/360ファミリーはアップグレードし、MFTはOS/VS1 に、MVTはOS/VS2と名前を変えた。OS/VS2は2つの形が発表された。1つはOS/VS2 Release 1、別名 SVS (Single Virtual Storage)、もう1つはOS/VS2 Release 2、別名MVS (Multiple Virtual Storage) である。SVSはMVTからMVSへと至る道程塚として意図されたバージョンで、今日では歴史的な興味の対象としてのみ存在する。

MVSは、成功したマシン IBM360シリーズのSystem/370やSystem/390zSeriesSystem zのOSとして、OS/390z/OSとその名前は変えているが、現在も使い続けられている(2008年(平成20年)時点)。

2000年(平成12年)以降、OS/360はパブリックドメインとなり、フリーソフトとしてダウンロードして使うことが出来るようになった。LinuxWindowsmacOS上で動くフリーのHercules emulator上で、ハードウェアSystem/360で動くのと同じように動かすことが出来る。

教訓

System/360とOS/360のプロジェクトを率いた経験の後、フレデリック・ブルックスは有名な『人月の神話』("The Mythical Man-Month") を書いた[1]

彼は自身のOS/360の経験から、ブルックスの法則セカンドシステム症候群英語版、など多くの教訓を書き記している。

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク


OS/360

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/12 02:29 UTC 版)

IBMメインフレーム用オペレーティングシステムの歴史」の記事における「OS/360」の解説

詳細は「OS/360」を参照 OS/360は様々なレベル機能サポートしており、共通のAPIで、より多くコード共通化された。PCP同時に1つプログラムだけしか実行できない廉価版で、MFT (一定個数タスク実行できるマルチプログラミング版)とMVT(タスク無制限に実行できるマルチプログラミング版)は、後継機発売されてから5年経過した1970年代後半頃まで使用された。PCPMFTMVT3つ分割した理由は明らかではなくMVT中間クラスモデル使用するにはメモリ喰い過ぎたのか、あるいはIBMマルチプログラミング版をMFTとして至急リリースしなければならなかったかなどの理由考えられるPCPMFTMVT3つメモリ管理方法異なっているが、機能的には非常に似ている(下記参照)。 共通化されたアプリケーションプログラミングインターフェイス(API)。アプリケーションプログラムバイナリは再コンパイルすることなくPCPMFTMVT実行できるDOS/360よりも柔軟使いやすい同じJCLDOS/360と同じファイル読み書き方式(シーケンシャルインデックスダイレクト)に対応。データ通信のBTAMにも対応している新しパーティション分けされたファイル構造とアクセスインターフェイスであるBPAMに対応。主にプログラムライブラリの管理用いられた。パーティションスペース解放するために圧縮する必要が相変わらずあったが、PCPMFTMVTではパーティションの数に制限がなく、プロジェクトごとに1本以上のパーティション割り当てることができるため、DOS/360のコアイメージライブラリとは異なり作業止まって開発作業支障が出ることがほとんどなかった。 ファイル階層として管理できるようにするファイル名システム。PROJECT.USER.FILENAMEなどの命名可能だったスプーラ機能 (DOS/360にはない)。 アプリケーションジョブの中でサブタスクを生成できるマルチタスクに対応。 OSが256KB未満システムインストールすることは当時経験から推奨されず、これは1960年代にはどこでもよくある制約だった。

※この「OS/360」の解説は、「IBMメインフレーム用オペレーティングシステムの歴史」の解説の一部です。
「OS/360」を含む「IBMメインフレーム用オペレーティングシステムの歴史」の記事については、「IBMメインフレーム用オペレーティングシステムの歴史」の概要を参照ください。

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