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バーイード

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
バーイード
第65回ムーラン・ド・ロンシャン賞勝利後のバーイード(2021年9月5日、パリロンシャン競馬場
欧字表記 Baaeed
品種 サラブレッド
性別
毛色 鹿毛
生誕 2018年4月8日(6歳)
Sea the Stars
Aghareed
母の父 Kingmambo
生国 イギリスの旗 イギリス
生産者 Shadwell Estate
馬主 Shadwell Estate
調教師 William Haggas(イギリス
競走成績
タイトル カルティエ賞年度代表馬(2022年)
カルティエ賞最優秀古馬(2022年)
生涯成績 11戦10勝
獲得賞金 2,622,282ポンド
WTRR M125 / 2021年[1]
I135 - M130 / 2022年[2]
勝ち鞍
G1 ムーランドロンシャン賞 2021年
G1 クイーンエリザベス2世S 2021年
G1 ロッキンジステークス 2022年
G1 クイーンアンステークス 2022年
G1 サセックスステークス 2022年
G1 インターナショナルS 2022年
G3 サラブレッドステークス 2021年
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バーイードBaaeed2018年4月8日 - )は、イギリスで生産・調教されていた競走馬。馬名の由来はアラビア語の形容詞بعيد(ba‘īd,バイード)で意味は「遠い、遠く離れた」「遥かなる」。

主な勝ち鞍は2021年ムーランドロンシャン賞クイーンエリザベス2世ステークス、2022年ロッキンジステークスクイーンアンステークスサセックスステークスインターナショナルステークス

戦績

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3歳(2021年)

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デビューは遅く、3歳となった2021年6月7日レスター競馬場英語版の未勝利戦(芝1マイル53ヤード)でデーン・オニール英語版騎乗のもとデビューし初勝利を挙げる。続く一般戦とサーヘンリーセシルステークス英語版リステッド競走)を共に圧勝。重賞初挑戦となった7月30日のサラブレッドステークス英語版 (G3) では後方追走から脚を伸ばして先頭に立つと最後は6馬身半差をつけ重賞初制覇を果たす[3]

9月5日のムーラン・ド・ロンシャン賞では好位でレースを進め、直線で逃げるノーベンバ (Novemba) をかわして先頭に躍り出るとオーダーオブオーストラリア英語版に1馬身14差をつけG1初制覇を飾る[4]。10月16日のクイーンエリザベス2世ステークスではパレスピアをマークする形で追走すると、残り2ハロンでパレスピアとともに抜け出して一騎打ちとなり、最後はクビ差でパレスピアをかわしてG1競走2連勝となった[5]

4歳(2022年)

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明けて4歳となり2022年、5月14日のロッキンジステークス (G1) で約8か月ぶりに復帰。2着のリアルワールド (Real World) に3馬身14の差をつけ圧勝、デビューからの連勝記録を7に伸ばした[6]

6月14日、クイーンアンステークス (G1) に出走。道中を2番手につけたバーイードは残り600メートルからスパートをかけると、一度もムチを振るうことなく2馬身差で勝利し、連勝記録を8とした[7]。 7月27日、サセックスステークス (G1) に出走。このレースには日本馬のバスラットレオンも参戦した[8]。レースでは後方2番手につけ、残り1ハロン地点で逃げ粘るバスラットレオンを外から交わし2着モダンゲームズに1馬身34差をつけ勝利。デビューからの連勝を9に伸ばした[9]

レース後、バーイード陣営は次走として初の中距離戦となるインターナショナルステークス (G1) に出走することを決定。結果次第でチャンピオンステークスか連覇のかかるクイーンエリザベス2世ステークスへ向かうとした[10]

8月17日、予定通りインターナショナルステークスに出走。ここにはジョッケクルブ賞サウジカップドバイシーマクラシック等を制した前年覇者ミシュリフアイリッシュ2000ギニーを制したネイティヴトレイルが参戦[11]。レースでは前走と同じく後方2番手に控え、ヨーク競馬場の5ハロンにも及ぶ長い直線に入り持ったままで徐々に進出、残り300メートル付近で鞍上のジム・クローリー英語版が軽く促すと鋭く加速し、ラスト1ハロン地点でミシュリフを交わし差を広げ、最後には6馬身半差をつけ優勝。デビューからの連勝を10と伸ばし[12]、父シーザスターズとの父子制覇も達成した。

レース後、陣営は更なる距離延長となる凱旋門賞は避けて10月に開催されるチャンピオンステークスに向かい、そのレースをラストランとすると発表した[13]。この発表を受けて、ブックメーカー各社はバーイードを断然の一番人気とし、イギリスのウィリアムヒルは単勝1.4倍、アイルランドのパディパワーは単勝1.5倍のオッズをつけた[14]

最終的に凱旋門賞には出走せず、当初の予定通り正式にイギリスチャンピオンステークスに向かうことを表明した[15][16]

10月15日、引退レースとなる英チャンピオンステークスに出走。前年の欧州2冠馬アダイヤーや、この年1990mのGIで好走中のベイブリッジなどのメンバーが揃う中、単勝オッズ1.2倍の圧倒的1番人気に推される。最内枠からの出走となったレースでは、スタートで出遅れるもいつも通り中段やや後ろで前を追走し、最後の直線で外に出した。しかし、いつものような伸びがなく、前を行く勝ち馬ベイブリッジなどを捉えきれずまさかの4着。生涯初黒星を喫し、連勝記録は10でストップ。ゴール後鞍上のジム・クローリーは敗因に馬場状態を挙げながらも、「私たちの旅は信じられないほど素晴らしいものだ。彼は私にとって今でも特別な馬だ。」と悔しさを滲ませながらも労いの言葉を述べた[17]。この敗戦はイギリスを中心に波紋を広げ、歴史的名馬に値するかどうかの議論が過熱した[18]

カルティエ賞の年度代表馬および最優秀古馬に選出される[19]

競走馬引退後の2023年よりシャドウェルスタッドで種牡馬入りする[20]

競走成績

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以下の内容は英国競馬統括機構[21]フランスギャロ[22]、およびレーシング・ポスト[23]JRA-VAN Ver.World[24]による。

競走日 競馬場 競走名 馬場・距離
馬場状態
頭数 着順 タイム 着差 騎手 斤量 1着馬(2着馬)
2021年6月7日 レスター 未勝利戦 芝 1mi53yds (GF) 14 1着 1:43.60 1+14馬身 D.オニール 9st.3lb. (Tamaamm)
2021年6月19日 ニューマーケット 条件戦 芝 1mi (GS) 10 1着 1:38.72 7+12馬身 D.オニール 9st.8lb (Komachi)
2021年7月8日 ニューマーケット サーヘンリーセシルS L 芝 1mi (GF) 5 1着 1:36.95 4馬身 J.クローリー 9st.3lb. (Maximal)
2021年7月30日 グッドウッド サラブレッドS G3 芝 1mi (GS) 7 1着 1:41.20 6+12馬身 J.クローリー 9st.1lb. (El Drama)
2021年9月5日 パリロンシャン ムーランドロンシャン賞 G1 芝 1600m (BS) 6 1着 1:39.13 1+14馬身 J.クローリー 57kg (Order of Australia)
2021年10月16日 アスコット クイーンエリザベス2世S G1 芝 1mi (GS) 10 1着 1:42.57 クビ J.クローリー 9st.1lb. (Palace Pier)
2022年5月14日 ニューベリー ロッキンジS G1 芝 1mi (Gd) 9 1着 1:35.71 3+14馬身 J.クローリー 9st. (Real World)
2022年6月14日 アスコット クイーンアンS G1 芝 1mi (GF) 7 1着 1:37.76 1+34馬身 J.クローリー 9st.2lb. (Real World)
2022年7月27日 グッドウッド サセックスS G1 芝 1mi (GF) 7 1着 1:37.74 1+34馬身 J.クローリー 9st.10lb. (Modern Games)
2022年8月17日 ヨーク インターナショナルS G1 芝 1mi2f56yds (Gd) 6 1着 2:09.30 6+12馬身 J.クローリー 9st.8lb. (Mishriff)
2021年10月15日 アスコット チャンピオンS G1 芝 1m1f212yds(GS) 9 4着 2:09.82 1+34馬身 J.クローリー 9st.7lb. Bay Bridge

血統表

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Baaeed血統 (血統表の出典)[§ 1]
父系 ダンジグ系
[§ 2]

Sea the Stars
2006 鹿毛
父の父
Cape Cross
1994 黒鹿毛
Green Desert Danzig
Foreign Courier
Park Appeal Ahonoora
Balidaress
父の母
Urban Sea
1989 栗毛
Miswaki Mr. Prospector
Hopespringseternal
Allegretta Lombard
Anatevka

Aghareed
2009 鹿毛
Kingmambo
1990 鹿毛
Mr. Prospector Raise a Native
Gold Digger
Miesque Nureyev
Pasadoble
母の母
Lahudood
2003 鹿毛
Singspiel In The Wings
Glorious Song
Rahayeb *アラジ
Bashayer
母系(F-No.) 2号族(FN:2-f) [§ 3]
5代内の近親交配 Mr. Prospector M3×S4×M5、Northern Dancer S5×M5 [§ 4]
出典
  1. ^ JBISサーチ[27]およびnetkeiba.com[28]
  2. ^ netkeiba.com[28]
  3. ^ JBISサーチ[27]およびnetkeiba.com[28]
  4. ^ JBISサーチ[27]およびnetkeiba.com[28]

脚注

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  1. ^ The LONGINES World's Best Racehorse Rankings For 3yos and upwards which raced in 2021” (英語). ifhaonline.org. 国際競馬統括機関連盟. 2022年5月15日閲覧。
  2. ^ The LONGINES World's Best Racehorse Rankings For 3yos and upwards which raced in 2022”. IFHA. 2023年1月18日閲覧。
  3. ^ バーイードが無傷の4連勝、英G3サラブレッドSを圧勝”. JRA-VAN Ver.World. JRAシステムサービス株式会社 (2021年7月31日). 2021年10月18日閲覧。
  4. ^ バーイードが無敗継続、仏G1ムーランドロンシャン賞も快勝”. JRA-VAN Ver.World. JRAシステムサービス株式会社 (2021年9月6日). 2021年10月18日閲覧。
  5. ^ 英G1クイーンエリザベス2世S、バーイードがパレスピアとの一騎打ち制して無敗守る”. JRA-VAN Ver.World. JRAシステムサービス株式会社 (2021年10月17日). 2021年10月18日閲覧。
  6. ^ バーイードが英G1ロッキンジSで無傷7連勝、2着のリアルワールド陣営は白旗”. JRA-VAN Ver.World. JRAシステムサービス株式会社 (2022年5月15日). 2022年5月15日閲覧。
  7. ^ 現役世界最強馬、ムチなし楽勝で8戦8勝&G1を4連勝 海外衝撃「フランケル以来最強だ」”. THE ANSWER. 株式会社Creative2 (2022年6月15日). 2022年6月15日閲覧。
  8. ^ 【サセックスS】(英G1)出馬表確定 バスラットレオンが出走 | 競馬ニュース”. netkeiba.com. 株式会社ネットドリーマーズ (2022年7月26日). 2022年8月17日閲覧。
  9. ^ 英G1サセックスS、バスラットレオンは逃げて4着 バーイードが無敗継続”. JRA-VAN Ver.World. JRAシステムサービス株式会社 (2022年7月28日). 2022年8月19日閲覧。
  10. ^ マイルG1を5連勝のバーイードがいよいよ中距離挑戦へ、凱旋門賞参戦は否定”. JRA-VAN Ver.World. JRAシステムサービス株式会社 (2022年7月28日). 2022年8月17日閲覧。
  11. ^ 【英G1・インターナショナルS出馬表】 9戦無敗バーイード、昨年6馬身圧勝のミシュリフなど | 競馬ニュース”. netkeiba.com. 株式会社ネットドリーマーズ (2022年8月17日). 2022年8月17日閲覧。
  12. ^ 【英・インターナショナルS】世界最強マイラー・バーイードが6馬身半差圧勝! これで通算10戦10勝/海外競馬レース結果 | 競馬ニュース”. netkeiba.com. 株式会社ネットドリーマーズ (2022年8月18日). 2022年8月18日閲覧。
  13. ^ 【インターナショナルS】バーイードが6馬身半差の圧勝 10月の英チャンピオンSで引退へ”. サンスポZBAT!. 株式会社産経デジタル (2022年8月18日). 2022年8月18日閲覧。
  14. ^ 【海外競馬】10戦無敗のバーイードは英G1・チャンピオンSへ 単勝オッズは各社1倍台に | 競馬ニュース”. netkeiba.com. 株式会社ネットドリーマーズ (2022年8月18日). 2022年8月18日閲覧。
  15. ^ “Baaeed to bow out in Champion Stakes at Ascot”. Racing TV. (2022年9月14日). https://www.racingtv.com/news/baaeed-to-bow-out-in-champion-stakes-at-ascot 2022年9月14日閲覧。 
  16. ^ “10戦無敗のバーイードが凱旋門賞を回避 英チャンピオンSでラストランへ”. netkeiba.com. (2022年9月15日). https://news.sp.netkeiba.com/?pid=news_view&no=207664 2022年9月15日閲覧。 
  17. ^ Baaeed beaten, as Bay Bridge takes Champion Stakes” (英語). At The Races. 2022年10月16日閲覧。
  18. ^ 怪物バーイード引退レースでまさかの敗戦に「彼は歴史的名馬か?」と論争勃発”. 東スポ競馬 (2022年10月17日). 2024年7月21日閲覧。
  19. ^ バーイードが欧州年度代表馬に! 最優秀3歳牡馬は仏ダービー馬のヴァデニ | 競馬ニュース”. netkeiba.com. 2022年11月10日閲覧。
  20. ^ 引退のバーイード、シャドウェルスタッドでの種牡馬入りが正式発表JRA-VAN world、2022年10月22日閲覧
  21. ^ Baaeed (GB) - Horse Profile - The British Horseracing Authority” (英語). britishhorseracing.com. 英国競馬統括機構. 2022年8月19日閲覧。
  22. ^ BAAEED GB | France Galop” (フランス語). france-galop.com. フランスギャロ. 2022年8月19日閲覧。
  23. ^ Baaeed | Race Record & Form | Racing Post” (英語). racingpost.com. レーシング・ポスト. 2022年8月19日閲覧。
  24. ^ バーイード(Baaeed) | 競馬データベース”. JRA-VAN Ver.World. JRAシステムサービス株式会社. 2022年8月19日閲覧。
  25. ^ イギリス競馬のルール”. jra.jp. 日本中央競馬会. 2022年8月19日閲覧。
  26. ^ フランス競馬のルール”. jra.jp. 日本中央競馬会. 2022年8月19日閲覧。
  27. ^ a b c 血統情報:5代血統表|Baaeed(GB)”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2021年10月21日閲覧。
  28. ^ a b c d Baaeedの血統表 | 競走馬データ”. netkeiba.com. 株式会社ネットドリーマーズ. 2021年10月21日閲覧。

外部リンク

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