マンガを電子書籍として配信していたが、大半の決済サービスが利用できなくなりサイトを閉鎖。クレジットカード会社から一部作品の削除要求があった後、決済代行会社に契約解除を通告された。ただ読者とマンガ作家を橋渡しするビジネスへの思いは強く、25年中のサービス再開に奔走する。
乙川 庸之氏
過去の名作から絶版本、単行本化に至らなかった作品まで、多くのマンガを電子書籍として配信するサービス「マンガ図書館Z」を手掛けています。作家の許諾を得て広告を挿入し、広告収入を作家に還元する方式です。海賊版への対抗も進めてきました。ですが、大半の決済サービスを利用できなくなり、2024年11月にサイトの運営停止を余儀なくされました。
「3日間で作品削除を」と通達
5月、「一部の国際ブランド(のクレジットカード会社)がコンテンツの削除を要求している」と決済代行会社から連絡を受けたことが発端でした。対象は具体的な作品名ではなく、「痴漢」や「暴力」、「犯」など特定のキーワード数十個を含む全ての作品です。アダルトコンテンツへの対応という立て付けでしたが、通達内容が非常に曖昧で、例えば殺人事件を扱った作品も引っかかるものでした。
アダルト作品は線引きが必要です。しかし当社が扱っている作品は合法です。合法である以上、流通自体を規制されるのは納得できません。曖昧なキーワードに基づいて判断されるのも困ります。
しかも、猶予はたったの3日。その間に該当する作品を削除しなければVISA(ビザ)やMasterCard(マスターカード)などのクレジットカードは契約が停止し、さらに最大で数千万円のペナルティーが国際ブランドに対して生じ得るとも言われました。詳細を検討しようにも時間がありません。
仕方なく一部のマンガは急きょ削除し、作家には事後承諾という形で進めざるを得ませんでした。本当に申し訳なかったです。
最近は他のサイトでもビザなどのカードが使えなくなるケースがあったので、「私たちにもついに来てしまった」という感覚でした。決済代行会社の担当者と相談し、クレジットカードはJCBのみとし、ビザとマスターカードは扱いを停止する方針も検討しました。
【初割・2カ月無料】お申し込みで…
- 専門記者によるオリジナルコンテンツが読み放題
- 著名経営者や有識者による動画、ウェビナーが見放題
- 日経ビジネス最新号12年分のバックナンバーが読み放題