196cm、95kgの巨体は、一見、重量級の格闘家を思わせる。ベンチプレスでMAX180kgを挙げる桁外れの筋力。だがフィールドに立つと、彼が陸上競技の選手であることはすぐに分かる。 走り高跳び2m06、走り幅跳び7m45、そして棒高跳びで5mを跳ぶ。男子十種競技で今年、8308点の日本新記録を出した右代啓祐(28歳・スズキ浜松AC)は、いま、日本で最高の「身体能力」を持つアスリートだ。そして、日本の陸上競技史上、この種目で初めて誕生した、ワールドクラスの選手だと言える。 「キング・オブ・アスリート」――アスリートの王様。 十種競技の金メダリストはそう呼ばれる。女子の七種競技なら「クイーン・オブ・アスリート」。欧州ではこの種目の人気が高く、欧州の選手が金メダリストになると大スターになる。ロンドン五輪で十種競技の金メダリストは米国人選手だったが、女子の七種競技は開催国・英国のジェシカ・エニス