ノーベル文学賞の延長で村上春樹のことが話題になっており、小説はなんとなく追わなくなってしまったのだけど、このタイミングで村上春樹のことについて振り返っておきたい。 以前、論文として発表したのだけど(「村上春樹の西海岸文脈——全共闘運動から『アフターダーク』へ」『村上春樹と二十一世紀』おうふう、2016.9)、個人的には、村上春樹は片岡義男のように、アメリカ西海岸カルチャーの影響がさまざまなかたちで流れている作家だと思う。その意味で村上に対しては、しばしば言われるような、記号化して歴史を無化した存在だとはまったく思わない。強いて言えば、従来とは違ったかたちで歴史を示した存在だと思う。以下、拙論「村上春樹の西海岸文脈」に依拠しながら述べていく。 『風の歌を聴け』とザ・ビーチ・ボーイズ『風の歌を聴け』におけ