SaaSに代表される新しいITサービスの本質はユーザーにアセットがないということである、これをノンアセットITと呼ぶ・・・な~んて当然の話であって「それを英語でいっただけじゃん!それも和製英語まるだしっ!」ってなツッコミは甘んじて受けるとしてw

先日の講演(11月10日開催の日経ソリューションビジネスDAY)で話したりなかったことを書いておこう。

ノンアセットITに我々IT業界が取り組むにはどうするか。

さて、ここで注意しなければならないのはアセットがなくなるわけではないという事実である。ノンアセットというのはユーザー側に資産がなくなるわけであって、どこにもなくなるわけではないのだ。そして、それはIT事業者が持たなければならないという事実。単なるハウジングサービスであれば話は簡単かもしれないが、昨今のサービスではアプリケーション、データまで持たなければならない。そしてそのセキュリティまで保証することが求められる。

「まだ当たり前なこと言ってるよ」って?
では、もう少し話そう。

アセットを我々IT業者が自社に持つということは、アセットを構築する投資が必要ということである。ビルを建設することを生業としているのは建設会社であって、完成した建物を賃貸するのは不動産会社だ。そのビジネスモデルは全く異なるドメインだという事実を把握してほしい。いまITサービス業が踏み出そうとしているのはそういう場所なのだ。いわば「異業種への進出」である。

では考えてみよう。
異業種への進出への際はなにが必要か。
そして成功の必須条件は?

あなたの会社が外食産業を始めると思っていただけばよくわかる。
まず、だれにやらせるか?
どこで始めるか?
どれだけ投資するか?

具体的に言うとこういうことだ。

レンストランチェーンを始めるのには、そのビジネスに造詣が深い役員を管掌とするだろう。いなければ、銀行筋をはじめ金融関係から呼んで来たり、紹介してもらったりするはずだ。次にプロを雇わなければならない。レストランチェーン経営のプロ、店舗経営、調理、コンサルタント招聘する可能性も視野に入れよう。

そういうことが必要って話ですよ。

で、最近SIerがこぞって興味を示しているのもこれ。「ストックビジネスを増やせって言われてるんだけど」「SaaSを始めなくちゃいけないんだ」「どうすりゃいい?」みたいなことを現場の部長クラスによく聞かれる。

なぜ彼らに言わせるのだ? どうしてそういう人々に押し付ける? そんなの明らかに経営の怠慢だし2番手、3番手あたりの役員が「ま、いっときの社長のアレだから」と失敗してもいいような形で進めようとしてる会社も多い、といっては邪推が過ぎるというものか。

ストックビジネス=ノンアセットITにビジネスを求めるなら新しい発想、または新しい発想を持つ人間が必要であり、旧来のビジネスを破壊しても進むという強い意志、そしてなによりこ、ちら側にアセットを調達する「投資」が必要である。(注:Web2.0なのでアセット調達にこだわる必要がないという意見もあるだろうが、自社にアセットを持たないで新しいビジネスモデルを生み出す術を考え付く人材はある意味、大変なアセットであり、やはり調達に困難と投資が伴うというダブルミーニングであると解釈頂きたい)

とにかく、いまの国内のITサービス産業各社はおしなべてそのあたりがわかっていない。ノンアセットITは単なるブームではなく、Web2.0の技術に後押しされたパラダイムシフトである。そして、これはあなたの会社にイノベーションをおこすチャンスなのだ。

3Kだとか学生に不人気業種になっちゃったと嘆いているだけではなにも起きない。人が来ないから売り上げが上がらないという機会を生かして、一気にアタマひとつ突き抜けてほしい。自社の若手を明るい将来へ導き、良好な環境をもって若者の雇用を促進することは長い期間、SI企業で禄を食んできた者の義務ではないだろうか。