OKR
別表記:Objective and Key Result
OKR(Objective and Key Result)とは、組織における目標管理制度の手法のこと。「オーケーアール」と読む。組織全体としての目標を達成するために、個々がどのような成果を目指すのかという具体的な指標を定めて行動していくことをいう。
OKRには3つの特長がある。
1つめは目標を設定していく方法。まずはチーム全体で大きな目標を決めて、チームのひとりひとりは、全体の目標に連動した個々の目標を設定する。たとえば吹奏楽部であれば「コンクールで金賞を目指す」というチーム全体の目標設定が先に行われ、「そのために、部員全員が基礎練習を一時間行う」「肺活量をあげるために、腹筋を一日に50回する」といった個々の取り組みが決められる。これによって、どんな目標のために、今、自分たちは何をすれば良いのかという基準が明確になる。
2つめは、他の目標管理制度に比べてレビュー頻度が短期間(1ヶ月~四半期に一回)である点。チーム全体の目標と個々の行動目標がリンクしているため、個々の掲げた目標が絵に描いた餅になってしまっては全体の目標を達成することができない。短い期間で定期的に達成度を振り返ることで、目標に対してどの程度の位置にいるのか進捗を確認したり、目標の設定に無理がないかを確認したりすることができる。
3つめは、求める達成度が100%ではなく、個人の評価とは分けて考えている点。それぞれの目標を達成することが目的になってしまうと、人は達成しやすい低い目標を設定してしまうようになってしまう。あくまでも、チーム全体の目標を達成するためにそれぞれが努力するのだという意識を植え付けることがOKRの狙いである。
【背景】OKRの歴史は、目標管理制度の歴史であると考えられる。その始まりはドラッガーの提唱したMBOで、その後S.M.A.R.TやKPIを経て、OKRに至った。OKR自体は1990年代後半にアンドルー・グローヴによってintel(インテル)に取り入れられ、その手法に倣ったジョン・ドーアによってGoogleでも採用されるようになった。
【語源】Objective and Key Resultを日本語に訳すと、「目標(Objectives)と主な結果(Key Results)」となる。
【事例】IntelやGoogle、Facebookやメルカリなどの企業でも採用されている。
【類語】KPI(Key Performance Indicator)とOKRでは、OKRがチーム全体の目標を達成するために、個々それぞれの目標が「どれくらい」達成できているかどうか把握するものであるのに対して、KPIの場合は「達成できているかどうか」というYES/NOの評価になる点で異なる。
MBO(Management By Objective)は、報酬(ボーナス)の査定として用いられることが多い。OKRやKPIが組織全体の目標を考えることに対して、MBOは個人の目標設定に対する評価である。たとえば「甲子園に出場するために、個々が毎日素振りを100回しているかどうか」というOKRの考え方に対して「自分で決めた打率3割という目標を達成できているかどうか」を見るのがMBOの考え方になる。
OKR
OKR
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/06 03:13 UTC 版)
OKR(オー・ケー・アール 英語: Objectives and key resultsの頭字語)は、個人や組織の目標設定のためのフレームワークである。元インテルCEOのアンドルー・グローヴが1970年代に導入した。元インテル社員のジョン・ドーアがOKRに関する著書『Measure What Matters: How Google, Bono, and the Gates Foundation Rock the World with OKRs』を2017年に発刊している[1](仮題『何が重要かを測定せよ: Google、ボノ、ゲイツ財団はいかにしてOKRで世界を動かすか』)。
概要
OKRは、1つの「objective」と3-5個の「key results」で構成される。objectiveは具体的で明確に定義された「目標」であり、key resultsはその目標の達成度を測るための定量的で測定可能な「指標」である[2][注釈 1]。
objectiveは、具体的で明確に定義されるだけでなく、その目標を実現する個人・チーム・組織に「達成したい」と思わせるような刺激的なものでなければならない[3]。それ自体はkey resultsを前進させ、「initiative」というobjectiveの達成を目指す計画や活動によって推進される[4]。計画立案者や意思決定者が目標達成度の判断に使えるように、key resultsは0-100%のスケールや何らかの数値(金額や割合)として測定できる必要があるし、その定義に曖昧さがあってはならない[3]。
歴史
アンドルー・グローヴは、インテル在職中にOKRを導入し、のちに文書化したのが著書『High Output Management』である(1983年刊行[5])。1975年当時、インテルの営業マンだったジョン・ドーアは、同社内でグローヴが講師を務める講座に参加し、当時『iMBOs』(Intel Management by Objectives)と呼ばれたOKRの理論を学んだ[6]。
その後、インテルを退社してベンチャーキャピタル会社のクライナー・パーキンスに移ったドーアは、1999年にGoogleに対してOKRの手法を紹介した[7]。OKRはGoogleに定着し、「組織全体で同じ重要な課題に注力するための経営手法」として、すぐに同社の文化の中心となった[6]。
ドーアは2017年にOKRフレームワークに関する著書『Measure What Matters』を発刊し、グローヴによるOKRのコンセプトを次のように説明している[6]。
「key results」は測定可能でなければなりません。最終的にあなたは何の議論もせずに可視化できます。「私はそれをやったのか? イエスかノーか」。単純です。何も判断する必要はありません。
同書に序文を寄せたラリー・ペイジはGoogle共同創業者で、OKRを次のように評価している[6]。
OKRは、我々を10倍以上の成長に導くのを手助けしました。OKRは、「世界の情報を整理する」という我々の熱狂的で大胆なミッションを支え、達成可能にしました。OKRのおかげで私や他の社員は時間を守れたし、最も重要なときに軌道に乗せてもらったのです。
GoogleでOKRが定着して以降、この手法は、Twitter[8]、Uber[9]、マイクロソフト[10]、GitLab[11]、メルカリ[12]などの他の大規模企業にも導入されていった[13]。
ベストプラクティス
ドーアは最善手法として、組織のkey resultsの目標成功率を70%にするよう推奨し、この値に伴って、低リスクで労働者の能力を引き出す競争的なobjectiveの設定を奨めている。常に成功率100%を達成しているなら、key resultsを見直す必要があると述べた[6]。
OKR自体はその定義どおり行動指向でも、やる気を出させるものでもないため、組織はその作成に注意して平常通りの業務(BAU[注釈 2])をobjectiveにすることを避ける必要がある[14]。また、「help」(支援)や「consult」(相談)などの用語も抽象的な活動を表す傾向があり測定可能ではないため、採用するべきではない[15]。
key resultsには、遅行指標よりも先行指標が推奨される。何かが正しく実行されていないとき、先行指標は早期に警告を出し、組織は軌道修正ができる。遅行指標は特定の変化に起因しないため、組織は時間内に軌道修正することが困難になる[16]。
批判
一般にOKRは、組織とチーム、個人のレベルごとに設定されるが、それではウォーターフォール・モデルになってしまうという批判がある[17]。
類似のフレームワーク
OKRは方針管理における「Xマトリックス」やOGSM[注釈 3]のような、他の戦略計画のフレームワークと一部重なっている。ただし、OGSMには「戦略」(strategy)が構成要素の1つとして明確に含まれる点が異なる。
加えて、OKRは他のパフォーマンス管理のフレームワークとも重複し、重要業績評価指標(KPI)とバランスト・スコアカードの中間に位置づけられる[18]。
脚注
注釈
- ^ OKRに関する用語の日本語の定訳はないため、本項目では英語の単語のまま記している。objectiveは「目標」「達成目標」、key resultsは「主な結果」「主要な成果」「評価指標」「成果指標」などと訳される。
- ^ BAU=Business As Usual、平常の業務。
- ^ OGSM=Objectives, goals, strategies and measuresの頭字語。最終目的(Objective)、具体的な目標(Goal)、策略(Strategy)、方策(Measure)。
出典
- ^ “What is OKR? - Objectives and Key Results Guide in 2021” (英語). Corvisio OKR (2020年5月17日). 2021年10月15日閲覧。
- ^ Wodtke, Christina (2016). Introduction to OKRs. O’Reilly Media, Inc. ISBN 9781491960271
- ^ a b “What is an OKR? Definition and examples” (英語). What Matters. 24 August 2021閲覧。
- ^ Maasik, Alexander. Step by Step Guide to OKRs. Amazon Digital Services LLC
- ^ Grove, Andrew (1983). High Output Management. Random House. ISBN 0394532341
- ^ a b c d e Doerr, John (2018). Measure What Matters: How Google, Bono, and the Gates Foundation Rock the World with OKRs. Penguin Publishing Group. pp. 31 ISBN 9780525536239
- ^ (2011) (英語). In The Plex: How Google Thinks, Works, and Shapes Our Lives. Simon & Schuster. pp. 162–163 ISBN 978-1-4165-9658-5
- ^ Wagner, Kurt (2015年7月27日). “Following Frat Party, Twitter's Jack Dorsey Vows to Make Diversity a Company Goal”. Vox Media. Recode. 2021年2月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月6日閲覧。
- ^ Fowler, Susan. “Reflecting On One Very, Very Strange Year At Uber”. Susan Fowler Blog. Susan Fowler. 2018年4月19日閲覧。
- ^ Chadda, Sandeep. “6 things I learnt about OKRs @ Microsoft”. Medium. 8 February 2021時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月9日閲覧。
- ^ “GitLab: Objectives and Key Results (OKRs)”. GitLab. 2022年2月25日閲覧。
- ^ “Googleやメルカリも導入する目標管理手法、OKRの基礎知識”. www.hrbrain.jp. 2022年6月3日閲覧。
- ^ “OKR Cycle”. Enterprise Gamification (18 October 2017). 8 February 2021時点のオリジナルよりアーカイブ。14 August 2019閲覧。
- ^ “OKRs are not "BAU"” (英語). What Matters. 24 August 2021閲覧。
- ^ “re:Work - Guide: Set goals with OKRs” (英語). rework.withgoogle.com. 24 August 2021閲覧。
- ^ “Going from Good to Better Part 2” (英語). What Matters. 24 August 2021閲覧。
- ^ Formgren, Johan (2018年10月15日). “Power of making a difference at work”. Blog Article. Its in the Node. 8 February 2021時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月15日閲覧。
- ^ Davies, Rob (2018年10月9日). “OKR vs Balanced Scorecard”. Paul Niven Explains the Difference. Perdoo GmbH. 8 February 2021時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月3日閲覧。
関連項目
- 目標による管理(MBO: management by objectives)
- OGSM(objectives, goals, strategies and measures)
- 方針管理
- 重要業績評価指標(KPI: key performance indicator)
- バランスト・スコアカード
- SMART (マネジメント)
- GQM(Goal Question Metric)
- OKRのページへのリンク