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Pear Canker Caused by Valsa ceratosperma (=V. mali)

1972, Japanese Journal of Phytopathology

日 植 病 報 Ann. 38: 258‑260 Phytopath. (1972) Soc. Japan Valsa 38: 258‑260 (1972) ceratosperma 斎 Izumi (=V. 藤 mali)に 泉 * ・ 田 村 SAITO*, Osamu TAMURA*, Canker Caused by Valsa 従 来,洋 種 お よび 和種 も含 め,ナ シ の胴 枯 性 病 害 と してPhomopsis1)あ る いはDiaporthe2)に よ る ナ シ 類 修 * ・ 高 Makoto 桑 (=V. ら ん 病 亮 * TAKAKUWA*: ceratosperma が,多 の 腐 Pear mali) くは枯 死 した 外 皮 が 乾 燥 す る に した がい 裂 開 す よ る もの るた め に 不規 則 に生 じた もの で あ る 。進 展 中 の病 斑 は が 知 られ てい るが,北 海 道 各地 で 発 生 して い る ナ シの 褐 色 な い し黒褐 色 を呈 し,リ ン ゴ樹 上 の病 斑 に く らべ 胴 枯 れ お よび 枝 枯 れ を 検 討 した と ころ,リ ン ゴ腐 らん て や や 固 い が 爪 な どに よ り容 易 に 剥 ぐ こ とが で き る。 日数 を 経 た 病 斑上 に は黒 色,小 粒 状 の 子座 が散 在 し, 病 菌 の加 害 に よ る もの が 認 め られ た 。 リンゴ腐 らん 病菌 は リン ゴ な どMalus属 然 発 生 し,そ の学 名 と して従 来Valsa et Yamadaが 用 い られ,日 本,中 植物 に自 mali 国,朝 鮮 に 分 布す 本菌 と 病原 菌 の 形 態 の 間 に形 態 的 な差 異 が ま った く認 ceratospermaの 様 を 呈 す る。 枝 梢 部 の 発病 は リン れ ばそ れ か ら上 部 は ただ ち に枯 死 す る。 め られ な い の で 両種 を 同 一 種 と み な し た 。Kobaya‑ shi4)に 従 えばV. さめ は だ ゴ にお け る と同 様 急 激 で,病 斑 が 枝 の 全 周 に 行 きわ た Miyabe る と され て いた3)。しか し最 近Kobayashi4)は V. ceratospermaと 表面は 病 斑 上 の子 座 は 黒 褐 色 を 呈 し,樹 皮 上 に 埋 没 して形 寄 主 範 囲は リンゴ 成 され,樹 皮 組 織 との 明瞭 な 境 界(子 座 殻)3)は 認 め ら だ け で な く,各 種 広 葉樹 に 及 ん で い る の で リン ゴ以 外 れ な か った 。 子 の う殻 は 長 頸 を有 す る フ ラ ス コ型 で の 落 葉 性 果 樹 類 に も 自然 に 発 生 して しか るべ きで あ る (図版5),子 が,従 来 ナ シを リ ンゴ ふ らん病 菌 が加 害 した 例 は 知 ら 束 状 に 子座 を 貫 通 して 上 部 で 開 口す る。4‑7個 れ て い な い の で こ こに 報 告す る。 う殻 が1子 座 中 に認 め られ た 。 そ れ ぞれ の 内部 は 子 の 座 中に 一 団 とな って形 成 され,そ の 頸 部 は うで 満 され,頸 部 の長 さ300‑500μ,球 病 原 菌 の 形 態 観 察 な らび に 分離 に は支 那 系 ナ シ,千 の子の 状 部 の直 径350‑ 両(鴨 梨 の 実 生 系 で 身 不 知 と も称 す る)の 胴 枯 れ,枝 枯 420μ 。子 の うは棍 棒 状 あ るい は紡 錘 状 で頂 部 は 円 頭 な れ 症 状 お よび 西 洋 ナ シ(バ ー トレ ッ ト)の 枝 枯 れ 症 状 い しは 載 形,位 相 差 顕 微 鏡 下 で 暗 色 を呈 す る子 の う頂 の 標 本 を 供 試 した 。い ず れ も北 海 道 余 市町,江 部 乙町, 環(apical 上 湧 別 町 で 採 取 した 標 本 で あ る。標 本 の採 取 に協 力 さ 25.0‑40.0μ,平 均8.4±0.23‑33.5±0.48μ 。 子 の う胞 子 れ た 高 山英 吉 道 専 門 技 術 員 お よび 北 後 志 地 区農 改 普及 は1子 の うに8個 含 まれ,無 色,単 胞,わ ず か に 湾 曲 所 黒田 ring)を 有 し(図 版6),大 き さは7.5‑12.5× した ソー セ ー ジ型 で 大 き さ1.5‑2.0×6.5‑10.0μ,平 拓,梨 木 光 治 の 両 枝 師 に 深 甚 な 謝 意 を 表 均 1.8±0.03×8.4±0.15μ 。 す る。 調 査 した 標 本上 の子 座 は こ と ご と く子 の う殻 時 代 の 病 徴 も ので あ り,柄 子殻 は痕 跡 を 残 す だ け で,自 然 感 染 病 主 枝 お よび枝 梢 に病 斑 を 形 成 し,そ れ ぞ れ胴 枯 れ型 (canker type)お 症 両)の 枝 の 接 種 病斑 に形 成 され た 柄 子 殻 は1子 座 に1 2)。病 斑 に は 随 所 に 裂 け め が生 個 ず つ 含 まれ,寄 主 組織 と子 座 と の 明 らか な 境 界(子 よび 枝 枯 れ型(die‑backtype)の 状 を 呈 す る3)(図 版1, 斑 上 で は 柄 子 殻 時代 を まだ 確 認 して い な い。 ナ シ(千 じ,と くに 主枝 に お い て い ち じ る しい 。 裂 け め に は 病 座 殻)は 認 め られ な か った 。柄 子 殻 は 数 個 の 腔 部 が連 斑 拡 大 の過 程 で癒 合 組 織 形 成 の 結 果 生 じた もの もあ る 結 して不 規 則 形,1本 * 北 海 道 立 中 央 農 業 試 験 場 Hokkaido Central Agricultural Experiment の頸 部 に よっ て子 座 頂 端 に 開 口 Station , Naganuma, Hokkaido, Japan. 1) 遠 藤 3) 富 樫 浩 吾(1950).果 226: 1‑242. 茂(1926).病 虫 雑 13: 樹 病 学,朝 393‑400, 倉 書 店,東 622‑625. 京.4) 2) 中 島 友 輔 Kobayahsi, T. ・滝 元 清 透(1924).病 (1970). Bull. 虫 雑 Govt. For. 11: 415‑420. Expt. Sta. Ann. Phytopath. Soc. Japan 38 (3).July 1972 第1表 259 病 原 菌 の 測 定 値 の 比較 す る。 柄 子 殻 内に は 柄 胞 子 が充 満 し,リ ンゴ 腐 らん病 論 の場 合 と 同様,適 湿 を 与 え る と黄 色,ま きひ げ 状 の 胞 子 角 とな っ て溢 出す る。柄 胞 子 は無 色,単 胞 の ソ ー セ ー ジ型 で 大 き さは0.5‑1.5×4.0‑7.0μ,平 第1表 均1.0±0.004× に示 した よ うに,ナ シ上 の菌 の測 定 値 は リ ン ゴ腐 らん病 菌 の そ れ と よ く一 致す る。 た だ 子 の う殻 頸 5.1±0.09μ。 病 原 菌 の 測 定値 を第1表 に 示 す 。 部 の長 さが や や 短 い が,こ れ は寄 主 樹 皮 組 織 の 状 態 や 病 原 菌 は ブ ドウ糖 加 用 ジ ャガ イモ 煎 汁 寒 天(PDA) 上 で,は 議 湿 度,光 線 な どの 条 件 に よ って若 干変 化 す る もの で あ ろ う。 さ らに 培 地 上 の 菌 叢 の 状態 な らび に リン ゴに 対 じめ 淡 黄 褐 色 の 菌 叢 を形 成 し,の ち オ リー ブ 色 あ る いは 灰 褐 色 な い しは褐 色 で表 面 が 粉 状 とな り, す る病 原 性 な ど も加 味 す れ ば,明 らか に ナ シ上 の 菌 は リン ゴ腐 らん 病 菌 と同 一 種 とみ な し う る。 病 原 菌 名 柄 子殻 を含 む 子 座 を 形 成 した(図 版4)。 菌 株 に よ り程 度 は 異 な るが 多 くの もの は 培地 を褐 色 に着 色 させ る 。 は,Kobayashi4)に 従 いValsa ceratosperma (Tode これ ら菌 叢の 特 微 は リ ンゴ腐 らん病 罹 病 部 か ら通 常 分 ex Fries) Mireを 用 い たが,病 離 され る菌 の そ れ とお お む ね 一 致す る。 の 名称 がす で に あ るの で,リ 名 につ い て は 胴 枯 病 ンゴ の場 合 に準 じて腐 ら ん 病 を用 い るの が 適 当 と考 え られ る。 また 発 生 を 確 認 接 種 試 験 した 品種 は西 洋 ナ シお よび 支 那 ナ シ で,そ れ ぞ れ 分 類 上,種 を異 にす る もの であ るか ら と くに ナ シ類 腐 らん 常 法 に よ り分 離 した 菌 株 の ナ シ数 品 種 お よび リン ゴ に 対 す る病 原性 を検 討 した 。接 種 源 はPDA上 に培養 病 と した。 した 菌 糸(含 菌 寒 天)を 用 い,切 枝接 種 法5)に よ り接 種 を 行 な った 。 そ の結 果,千 両,長 十郎,バ 本 邦 以 外 で本 菌 の類 縁 種 が ナ シを 侵 した例 と して は ー トレ ッ ト Leucostoma persoonii (Valsa leucostoma)6お よび の い ず れ に も明 らか な病 原 性 を 示 し,褐 色 な い し黒 褐 Valsa sordida7)が あ る。 筆 老 らの 検討 した 菌 は 子 座 色 のや や 陥 没 した病 斑 を 切 枝 上 に 形成 したが 病 斑 進 展 殻(conceptacle)を 欠 くの で 前 者 とは 明 らか に異 な る の 程 度 は リンゴ(デ し4,8),また 子 の う胞 子 の 大 き さか ら も後 者 と区 別 で き リシ ャ ス)に お け る よ りもや や 劣 った 。 圃 場 で 植 栽 中 の7年 生 リン ゴ(デ リシ ャス)の 主 る4)。この ほ かCytosporaが 枝(3年 生 に 関 与 して い る例 の記 録 が み られ るが いず れ も完 全 枝)に 含 菌 寒 天 を 用 い て接 種 した結 果(7月 旬),顕 著 な 病 原性 を示 し,約2週 上 間 で 典型 的 な腐 らん 時 代 の 記 載 は な い6,9)。 Togashi8)は 病 の症 状 を 呈 す るに 至 った (図版3)。 5) 田 村 修 States. Zashch. Agric., 564. ・斎 藤 泉 Agariculture Rast., Hakkaido (Rev. appl. ・高 桑 亮.道 Handbook Tbilisi, Imp. Mycol. 19: 169‑174. Univ. 12: 8:318). 立 農 試 集 報.(投 No.165, (Rev. 265‑324. USDA ナ シの胴 枯 れ,枝 枯 れ 発 稿 中).6) (1960). Index 7) リン ゴ以 外 の 植物 に 対す るV. cerato‑ of Plant Dzagnidge, Plant Pathol. 49: 440. 9) Ferraris, T. (1928). 8) Diseases Sh. Togashi, Rivista I. K. Agricola, in (1967). (1924). xxi, the United Trud Inst. Jour. 554, pp. Coll. 563‑ 260 sperma 日本 植 物 病理 学 会報 (V. mali)の 第38巻 第3号 病 原 性 を 焼 き傷 に柄 胞 子 を 接 種 昭和47年7月 に 至 らな い場 合 もあ り うる。 事 実 リ ンゴ に お い てす ら す る こ とに よ り検 討 して い る が,こ の手 法 に よ って 感 Togashi8)と 染 させ得 な い植 物 の中 に 西 洋 ナ シ(Pyrus て も,接 種 時 期 に よ って は い ち じる し く発 病 率 が 低 下 communis 同様 の 方 法 に よっ て柄 胞 子接 種 を 行 な っ L.)を あ げ て い る。 これ は 筆 者 らが 行 な った 焼 か ない す る こ とが 明 らか に さ れ て い る(田 村 ら,未 発 表)。 傷 口に対 す る菌 糸 接種 の結 果 と反 す るが,接 種 条 件 が Togashi8)に 異 な るた め か,あ るい は供 試 菌 の病 原 性 の ちが い に よ る も の と考 え られ る。Valsaの よる接 種 試 験 は9月 中 旬 に行 なわ れ て い るが,こ の 時期 が感 染 に 最 適 で な か っ た こ とも考 え ら よ うな感 染 力 の 弱 い 菌 れ る。V. ceratospermaの 寄 主 範 囲 は広 い とされ て い の 場 合,胞 子 は 死 ん だ組 織 上 で発 芽,菌 糸 化 した うえ るが4),形 態 的 な差 異 は な くと も 寄 生 性 の異 な る菌 系 で 隣 接 健 全 部 へ 侵 入 を 開始 す る の で あ る か ら,無 処 の 存 在 す る こ とは否 定 は で きな い 。 リン ゴ腐 らん 病 と 理 の 傷 口に 菌 糸 接種 した場 合 も柄 胞 子 に よ る焼 傷 接 種 して 扱 っ て い る菌 株 の 間 で は リンゴ に対 す る限 り病 原 と本 質 的 な 相 異 は な い。 た だ接 種 後 の病 斑 進 展 程 度 が 性 の差 異 は現 在 の と ころ 認 め られ て い な いが,リ ンゴ 劣 る こ とか ら,ナ シの本 菌 に対 す る罹 病 性 の 程 度 が リ 以 外 の寄 主か ら分 離 され るV. 含め ン ゴ に比 らべ て や や低 い こ とが考 え られ る。 した が っ て,リ ン ゴ お よび 他 の 樹 種 に 対す る寄 生 性 の 分 化 が あ て 胞 子 発 芽 か ら菌 糸 化 に至 る ま で の過 程 で 好 条 件 が 与 るか 否 か を検 討 す る必 要 が あ ろ う。 え られ な け れ ば菌 糸 に よる侵 入 力 が 弱 ま り,発 病 す る 図 1. 主 枝 上 の 胴 枯 れ 型 病 斑(品 種;千 両) 2. 枝 梢 部 の 枝 枯 れ 型 病 斑(品 種;バ ー ト レ ッ ト) リ シ ャ ス)に 接 種2週 版 cepatospermaも (1972年1月17日 説 3. リ ン ゴ(品 種;デ 4. ブ ド ウ 糖 加 用 ジ ャ ガ イ モ 煎 汁 寒 天 上 の 菌 叢(25℃,約3週 5. 子 の う殻(位 6. 子 の う お よ び 子 の う胞 子(位 明 間 後 の 病斑 相 差 顕 微 鏡 に よ る 観 察) 相 差 顕 微 鏡 に よ る 観 察) 間 培 養) 受 理) Plate I