「他国に対して軍事行動を取っている国の企業の株式や国債を年金積立金の運用先に選ぶことを禁止すべきだ」。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用手法に対して、2024年11月、立憲民主党の石垣のりこ参議院議員がこんな質問主意書を提出した。「我々の年金が戦争当事国や軍事企業に流れて、本当に良いものなのか。人道的な疑問を強く感じる」(石垣議員)との問題意識が背景にあるという。
念頭にあるのはイスラエルとロシアだ。事実として、GPIFの資金はイスラエルとロシアに流れてきた。ロシアの資産は経済制裁に伴い評価額がゼロになった。一方、イスラエル関連の資産はまだ残っている。
砲弾製造企業に投資
GPIFは投資先の明細を開示している。
24年3月末時点の資料によると、イスラエル国債の残高は約2270億円だ。同国の株式にも投資しており、イスラエルの軍事企業大手のエルビット・システムズの株式45億円超が含まれる。
エルビットは日本でも耳目を集めた過去がある。伊藤忠商事の子会社がエルビットと締結した覚書(MOU)に対して、ガザ侵攻の支援につながるとして市民団体から抗議の声が上がった。エルビットはイスラエル軍の砲弾製造のサプライヤーであることなど、同国の軍との密接な関係が問題視された形だ。結果として、伊藤忠商事は協力関係の解消に追い込まれた。
GPIFを管轄する厚生労働省に対しては、イスラエルへの風当たりが強まるとともに、オンライン署名サイト「Change.org」で24年10月に署名活動が開始された。「日本の年金、虐殺投資中」などと際どい言葉が並ぶ同キャンペーンに向けて、既に1万3000人が署名している。
国会議員や市民団体から寄せられるイスラエル投資への懸念は、根拠なしとはいえない。24年11月、国際刑事裁判所(ICC)はイスラエルのネタニヤフ首相らに対し、ガザ侵攻に伴う戦争犯罪の容疑などで逮捕状を発行した。逮捕状は同国が交戦するハマスの指導者にも同時に発行されている。
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