1840年に、イギリスが宣戦して始まった「アヘン戦争」。インドで生産させたアヘン(=麻薬)をイギリスが中国に密輸したことが発端ですが、なぜイギリスは麻薬の密輸に踏み切ったのでしょうか。また、なぜ戦争に発展したのでしょうか。『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)の著者である河合塾講師の平尾雅規氏が解説します。 “朕が茶を恵んでおるのに…”貿易の壁となった「中華思想」 17世紀からはじまった清王朝。清代の東アジアでは中華思想のもとに、皇帝を頂点とする体制が形作られていました。 対ヨーロッパ貿易もこの理念に組み込まれ、「貿易はあくまで皇帝の恩恵である」というコンセプトによって、貿易の条件は全て清が一方的に決定。乾隆帝[けんりゅうてい]がヨーロッパ船との貿易を広州の公行[コホン]に独占させたのも、その表れです。 そんな中、中国貿易のウェイトを高めてきたのがイギリスでした。18世