【MiG-23】(みぐにじゅうさん)
旧ソビエトのミグ設計局が開発した、MiG-21の後継機。
NATOコードはFloggar(フロッガー)
本機は、前作MiG-21の欠点を意識して1960年代初期から開発がスタート。
当時、ソ連軍は「MiG-21より大きな兵器搭載量・航続距離・火力・速度・上昇力等を有する戦闘機を製作せよ」と言う要求をミグ設計局に提出、その要求に対し、ミグ設計局は1967年に試作機23-11を製作した。
しかし、軍からの要求を全て満たしたために予想していたものより大型の機体となり、「大型化による運動能力の低下」を心配したミグ設計局は、当時同時期にスホーイが開発していたSu-17フィッターと同じ可変後退翼(手動)を導入、これにより離着陸距離が短縮され、超音速での機動性も上昇して大型化のリスクは改善された。
その後、小規模の改良を加え1969年に初期生産型であるMiG-23Sの量産が開始。
後のMiG-23Mではパルス・ドップラー式のサファイアレーダーを搭載したことにより中射程空対空ミサイル(AA-7「エイペックス」)の運用能力が追加された。
実戦配備から30年以上経っているが、現在でもロシア軍の他、多数の国へ輸出され運用されている。
なお、本機は1978年にソ連がフィンランドとフランスを訪問した時に西側諸国に初めて公開された。
また、後に、本機を改造してMiG-27攻撃機が設計された。
実戦での戦績
本機初の実戦は1982年のレバノン侵攻だった。
この時、イスラエル軍の報告ではF-15とF-16がシリア軍の本機7機を撃墜した、とされている。
しかし、シリア軍側はBQM-34×1機・F-16A×3機・F-4E×4機・E-2C×1機を本機で撃墜したと主張している。
その後、1986年にはリビア沖のシドラ湾にてリビア空軍のMiG-23×2機がアメリカ海軍のF-14AにAIM-9「サイドワインダー」とAIM-7「スパロー」で撃墜され(シドラ湾事件)、これと並行して行われたソ連軍のアフガン侵攻では、2機がパキスタン軍のF-16Aに撃墜されるも、その時にF-16A1機を撃墜している(ただし、パキスタンは味方の誤射による損失としている)。
しかし、これはどちらかと言うとパイロットの技量に由来する問題であり、また、BVR交戦能力の無い輸出型の機体が使用されていたからでもある。
事実、アンゴラでは、AA-7ミサイルを運用できるキューバ空軍所属の本機が、損害無しに南アフリカ空軍のインパラ・ミラージュF1C.Zを各1機撃墜しており、また他にもキューバ側の空対空による撃墜との主張に対して、南ア側はSAMによる損失としている例がいくつかある(有利な体勢で戦闘を行うことの出来た希な例である)。また、ソ連空軍のMiG-23は、領空侵犯したイランのAH-1攻撃ヘリ2機を撃墜している。
他にも湾岸戦争(イラク軍:MiG-23による撃墜数0)、イラン・イラク戦争(イラク軍:F-4E×3機・F-4D×1機・AH-1J×1機・不明2機=合計撃墜数7)、チャド紛争(リビア軍:撃墜数0)等でも使用された。
撃墜数においては、大抵の場合どちらの国も過大評価しているのであまりあてには出来ない。
スペックデータ(MiG-23ML)
乗員 | 1名(単座型)/2名(複座型) |
全長 | 17.18m/15.65m(機首プローブ除く) |
全高 | 4.82m |
全幅 | 7.78m(後退角72度)/13.97m(16度) |
主翼面積 | 34.2㎡(72度)/37.4㎡(16度) |
空虚重量 | 10,200kg |
最大離陸重量 | 17,800kg |
最大兵装搭載量 | 2,000kg |
エンジン | カチャツロフ R-29-300ターボジェット(推力81.3kN/122.6kN(A/B使用時))×1基 |
最高速度 | マッハ2.35 |
最大水平速度 | 729kt(海面高度) |
上昇率 | 14,400m/min |
実用上昇限度 | 18,500m |
航続距離 | 1,050nm/1,520nm(フェリー時) |
戦闘行動半径 | 323nm(Hi-Lo-Hi) |
固定武装 | GSh-23L 23mm機関砲×1門(装弾数200発) |
兵装 | R-23/-24 R-27 R-3S/R-13 R-73 Kh-23AGM UPK-23-250 23mm機関砲パック 爆弾(FAB-500、FAB-10) ロケット弾(S-5、S-8、S-24) 増槽等 |
2003年現在での各国での保有数(推測)
- アフリカ地域:
アルジェリア空軍:18機(MiG-23MS/UBフロッガー)
アンゴラ空軍:6機(MiG-23ML/UBフロッガー)
ナミビア空軍:2機(MiG-23フロッガー)
リビア空軍:70機(MiG-23MS/UBフロッガー)
ジンバブエ空軍:3機(MiG-23フロッガー)
- アジア地域:
シリア空軍:80機(MiG-23MF/ML/MS/UBフロッガー)
インド空軍:25機(MiG-23MF/UBフロッガー)
北朝鮮空軍:45機(MiG-23ML/UBフロッガー)
イエメン空軍:20機(MiG-23ML/UBフロッガー)
イラク空軍:不明(MiG-23フロッガー)
- ユーラシア地域: カザフスタン空軍:31機(MiG-23MLD/UBフロッガー)
ロシア空軍:270機(MiG-23ML/MLD/UBフロッガー)。
トルクメニスタン空軍:230機(MiG-23M/ML/MF/UBフロッガー)
主なバリエーション
- 初期型
- MiG-23S"フロッガーA"
初期生産型。
MiG-21と同じサプフーィル21(RP-22)レーダーを搭載し、ミサイル誘導装置はデーリタNとラズーリSを搭載する。
1969年から1970年にかけてモスクワのズナーミャ・トルダーで少数が生産されたのち、主として練習機として使用された。
- MiG-23UB"フロッガーC"
S型を複座にした戦闘訓練型で転換用高等練習機としても用いられた。
レーダーを装備していないが、限定的な戦闘能力は有していた。
量産型は中期型に準じた機体構造になり、R-29B-300エンジンを搭載、主翼も張り出しのあるものに変更された。
生産は1970年から1978年までイルクーツクのイルクーツク航空機工場で行われた。
- MiG-23S"フロッガーA"
- 中期型
- MiG-23M"フロッガーB"
前線戦闘機として開発された本格的な量産型で、レーダー・エンジンが強化されR-23(AA-7「エイペックス」)が搭載出来るようになった型。
レーダーはサプフィール23D、エンジンはR-29B-300を搭載している。
また、赤外線探知装置としてTI-23を装備している(後にTI-23-1に更新)。
ミサイル誘導装置はデリータNGとラズーリSMを搭載している。
- MiG-23M(E)"フロッガーE"
ワルシャワ条約機構外への輸出用モデル。
機体能力は大幅にダウングレードされており、レーダーは初期型と同じくサプフィール21を搭載しているが、赤外線探知装置は装備していない。
エンジンはR-27F2M-300ターボジェットを搭載している。
主に、中東諸国に輸出された。
- MiG-23MS"フロッガーE"
M型のダウングレード型。
アルマーズ23兵器システムを装備し、レーダーはサプフィール21(RP-22)、エンジンはR-29-300に換装されている。
なお、赤外線センサーは搭載されていない。
主にアラブ諸国やアフリカ諸国で運用された。
- MiG-23MF"フロッガーB"
M型のワルシャワ条約機構向け輸出型。
しかしMS型と違い能力は低下していない。
後にワルシャワ条約機構外へも輸出された。
- MiG-23M"フロッガーB"
- 後期型
- MiG-23A
前線戦闘機として開発された試作型。
- MiG-23ML"フロッガーG"
M型の改良型。
サプフィール23MLレーダーを搭載し、赤外線探知装置はTI-23M、ミサイル誘導装置はラズーリSMLに更新された。
機体を軽量化しエンジンが高出力のR-35-300に強化され、飛行性能は飛躍的に向上した。
- MiG-23UM
MiG-23MLの複座戦闘訓練型。
- MiG-23P"フロッガーG"
ソ連国内向け迎撃戦闘機型。
ML型と性能は同じだが、迎撃管制用データリンクが追加装備されソ連軍の防空軍のみ使用された。
アメチースト・レーダー、TI-26赤外線探知装置を搭載。
- MiG-23MLA"フロッガーG"
MiG-23Pの空軍型。
レーダーはサプフィール23MLA、赤外線探知装置はTI-26が装備された。
- MiG-23K
艦上戦闘機型。MiG-29KおよびSu-27Kと競合したが、試作中止。
- MiG-23MLD"フロッガーK"
ML/P型の改良型でチャフ・フレアディスペンサーが追加装備された型。
サプフィール23MLAレーダーを搭載、赤外線探知装置はTI-26を装備。
- MiG-23MLG
MLD型の発展型。MiG-29の実用化に伴い計画中止。
- MiG-23MLS
MLG型の輸出型。
- MiG-23MLDG
MLD型の発展型。
- MiG-23A
- 近代化改修型
MiG-23 (航空機)
(MiG-23 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/22 16:02 UTC 版)
ソビエト連邦空軍のMiG-23戦闘機
- 1 MiG-23 (航空機)とは
- 2 MiG-23 (航空機)の概要
MiG-23
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 17:36 UTC 版)
「Ye-150 (航空機)」の記事における「MiG-23」の解説
1961年のツシノでの展示後、西側の情報監視団がYe-152Aに誤って指定した型式。
※この「MiG-23」の解説は、「Ye-150 (航空機)」の解説の一部です。
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