A320neoの開発
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/06 05:48 UTC 版)
「エアバスA320」の記事における「A320neoの開発」の解説
A320neoは名前の通り装備エンジンが最新のターボファンエンジンに一新された。設定されたエンジンは、プラット・アンド・ホイットニー (P&W) 社のピュアパワーPW1100Gシリーズと、CFMI社のLEAP-1Aシリーズの2種類である。両エンジンとも直径が大きなファンを備えてバイパス比を上げることで、燃費性能の向上が図られた。 PW1100Gは、ピュアパワーPW1000Gシリーズの中の1タイプである。PW1100Gはファンの回転数を最適化するため減速機を備えておりギヤードターボファンエンジンとも呼ばれる。これにより12:1という非常に高いバイパス比を実現した。エアバスは、2008年10月に開発中のPW1000エンジンをエアバス社有のA340-600に装備して飛行試験を行い、P&W社の開発作業を支援していた。この時点でエアバスはPW1000エンジンの導入は未定だとしていたが、結果的にA320neoに採用されることになった。 LEAP-1Aは、CFM56の後継エンジンとして、2008年7月に正式開発が開始された。こちらはファンの減速機を持たないものの、最新の材料技術や空力設計技術により、エンジンコアを小型化・高効率化したりファンを最適化したほか、システムにも改良を加えることで燃費性能の向上が図られた。 A320neoの両エンジンは、A320ceoのエンジンと比べてファンの直径が数十センチメートルほど拡大しているが、エアバスはカウリング下端と地面の間には必要な距離が確保できるとして、降着装置の延長などは行われなかった。限られた期間で開発するため、新エンジンのカウルの設計には3次元モデルによるデジタル・モックアップが積極的に用いられた。 エンジン以外の基本的な機体設計はA320ceoファミリーのものが踏襲され、設計の95パーセントが共通とされた。A320neoでは、主翼のシャークレットが標準装備となった。 エアバスはA320neoの開発と合わせてA320ceoのさらなる改良も行なっていた。neoとceoの双方に適用された改良として、スペースフレックス (Space-Flex) と名付けられた新客室レイアウトや、客室照明の完全LED化、コックピットへのヘッドアップディスプレイ (HUD) 導入があげられる。スペースフレックスでは、機体後部のギャレーとトイレのスペースを圧縮することで、座席数を6席増やすことが可能になった。ヘッドアップディスプレイは機長席と副操縦席にそれぞれ装着でき、新造機にオプション設定されたほか、既存機への装着改修も可能とされた。 A320neoの初号機はPW1100Gエンジン装備型で、2014年9月25日にトゥールーズで初飛行した。翌2015年5月19日には、LEAP-1A装備型も初飛行した。同年11月24日、まずPW1100G仕様に対してA320neoの最初となる型式証明がEASAとFAAより交付された。 当初は2015年中にカタール航空が最初のA320neoを受領する計画であったが、PW1100Gエンジンの性能上の問題により延期された。その結果、翌年1月20日ルフトハンザ・ドイツ航空に対してA320neoの初引き渡しが行われた。ルフトハンザは1月のうちにドイツ国内線でA320neoの路線就航を開始し、同年4月にはロンドンとフランクフルトを結ぶ国際線にも投入した。 2016年5月31日には、LEAP-1A装備仕様についてもEASAとFAAから型式証明が交付され、7月19日にトルコのペガサス航空に対して初引き渡しが行われた。 PW1100Gの初期バージョンでは、エンジン始動に時間を要する問題があり、P&W社は改良に追われた。それ以外にも、A320neoの運航開始後の初期にはPW1100GエンジンとLEAP-1Aエンジン共にいくつかの問題が見つかり、それぞれのメーカーによる改良や対策が行われた。
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