詞書本文
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/03 07:50 UTC 版)
絵巻の詞書(ことばがき)として絵に対応する源氏物語の本文が抄出して書かれている。この本文の内容は青表紙本や河内本といった現在一般的に知られている源氏物語の本文と大筋で同じながら部分的にかなり異なる本文も含んでおり、中には陽明文庫本などの別本とされる本文に近いものを多く含んでいるとの指摘もある。これがもともと異なる本文を持つ写本を元にしたために異なるのか、それとも絵巻物の詞書という性質上もともとの本文を要約するなどの改変を加えたためなのかが不明であり、そのまま『源氏物語』の伝本とみなすことはできない。しかし、現在残っている源氏物語の本文として最も古いもので、平安朝の本文を今日に伝えてくれる現存唯一の重要なものである。また絵詞本文の伝来については、この絵詞本文作成の際に参照した書本(かきほん)が国冬本の系統であり、『河海抄』所引の従一位麗子本に一致するところがあることから、これらの本文系譜が一本に遡及されるとする説が唱えられている。近時、了悟「光源氏物語本事」に見える摂関家伝来の源氏物語本文の記事と、「柏木」巻の詞書の本文特性が別本の保坂本、国冬本に近接するという調査結果とを勘案して、この詞書本文を「摂関家伝領本」群本文と措定し、この本文系譜の祖本に「紫式部日記」に見える紫式部の「源氏の物語」草稿本を想定する論も提出された。
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