Science
カリフォルニアの山火事を助長した外来植物
数世紀前、農業や景観づくりのためにカリフォルニアに持ち込まれた外来の草やユーカリの木は、カリフォルニアにおける火災の力学を大きく変えてしまった。
By Hannah Singleton
科学誌編集者ら、AI編集とコスト問題に異を唱えて集団退職
オランダの大手学術出版社エルゼビアが発行する科学誌『Journal of Human Evolution』で昨年末、編集者が集団辞職した。AI編集がミスを生んでいること、著者への高額掲載料、人件費削減、そして編集の独立性の危機が理由だという。
By Jennifer Ouellette
米国の「WHO脱退」が招きかねない惨事
米国が脱退すれば世界保健機関(WHO)の予算は大幅に少なくなる。だが、米国にとっての目先の節約は、世界各地での感染症の拡大という代償を伴うかもしれない。公衆衛生の専門家は「脱退は無謀で無法」だと指摘し、法的措置の必要性を指摘する。
By David Cox
DNAにデータを書き込んだ“本”が出版される。値段は60ドル
DNAにデータを保存した本が初めて商業出版された。これはDNAデータストレージの消費者向け利用の可能性を示す、最新の例となるだろう。
By Emily Mullin
そのドローンは鳥のように歩き、ジャンプしてから飛行する
鳥類の脚部の仕組みをヒントに、歩いたり飛びはねたりできるドローンをスイスの研究者たちが開発した。鳥のように歩いてジャンプしてから飛び立てるので、地形を選ぶことなく高いエネルギー効率で離陸できるという。
By Ritsuko Kawai
トランプ、就任初日にパリ協定からの再離脱を命令。気候危機悪化への懸念深まる
「パリ協定」から再び離脱し、化石燃料の採掘や使用を奨励するなど、トランプは大統領就任と同時にバイデン前政権の気候変動政策をことごとく転換している。
By Matt Reynolds
マンタのように泳ぐ! “柔らかいロボット”のメカニズム
エイの一種であるマンタが水中で推進力を得る仕組みをヒントに、深度を自在に変えながら遊泳できるソフトロボットを米国の研究者たちが開発した。シンプルな設計ゆえに高いエネルギー効率を実現している。
By Ritsuko Kawai
太陽に記録的な最接近、NASAの探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が果たした快挙
太陽の上層大気であるコロナへの突入やコロナ質量放出の中の通過など数々の偉業を達成してきた米航空宇宙局(NASA)の太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が、太陽への記録的な最接近を果たした。この快挙を受けNASAが公開した動画などをもとに、これまでの経緯をたどる。
By Shigeyuki Hando
MEDICAL MIXTAPE
音楽療法の浸透をAIが後押しする──特集「THE WORLD IN 2025」
約20,000年前から人々を癒してきた音楽。その効用がようやく科学的に実証され始めている。近い将来、AIがあなたの治療ニーズにぴったりの曲をセレクトしてくれることもあるだろう。
By Daniel Levitin
カリフォルニア山火事、海水での消火が最善策ではない理由
ロサンゼルス地域の大火災で、消火活動に海水が使われた。深刻な水不足のための緊急措置だったが、海水の使用は通常「最後の手段」とされる。塩水が森林に与える影響を研究する、スミソニアン環境研究センターの生態系生態学者による解説。
By Patrick Megonigal
空席だらけの飛行機でも、座席を移動しないほうがいい理由
機内で空席が目立つのに、客室乗務員はなぜか席の移動を許してくれない。重量バランスが崩れると説明されても、ひとりの移動でそれほど大きな影響があるのだろうか? 『WIRED』のコントリビューターである物理学者が解説する。
By Rhett Allain
見過ごされてきた「ヒトメタニューモウイルス」、中国で感染拡大。公衆衛生への影響は?
24年前に発見されたものの、インフルエンザと混同されがちだった「ヒトメタニューモウイルス」の実態が、ようやく明らかになってきた。新型コロナウイルスの感染拡大を経て、中国で呼吸器系ウイルスのサーベイランスが強化されたことも背景にあるという。
By David Cox
ロサンゼルスの山火事対策──必要なのは耐火住宅だけでなく、防火地域づくり
壊滅的な山火事による大惨事に見舞われたロサンゼルスでは、当局が街の再建に乗り出している。しかし、今後も発生が予想される山火事から住民を守るためには、建物だけでなくコミュニティ全体の防火対策をする必要がある。
By Matt Reynolds
未来への分岐を促す、カラフルなサンゴ礁のジェネラティブアート:スプツニ子!「コーラルカラーズ」
24年の夏、沖縄近海の海水温は記録的な高温で、サンゴの白化が各地で報告された。沖縄科学技術大学大学院(OIST)の初代客員アーティスト・スプツニ子!が制作したジェネラティブアート「コーラルカラーズ」には、海面水温のデータが活用されている。気候変動の影響、そして、未来に残したいサンゴ礁の色について考えさせられる作品だ。
By Erina Anscomb
天の川銀河の知られざる“真実の姿”を示した9枚の写真
ヨーロッパ南天天文台(ESO)が運用する宇宙望遠鏡が、まるで天の川銀河をかじっているかのように見える写真が公開された。このように望遠鏡と天の川銀河が“共演”したシーンを交えながら、天の川銀河の知られざる“真実の姿”を解き明かしていこう。
By Shigeyuki Hando
南カリフォルニアの危機的な乾燥状態、地図データが示す
カリフォルニア州の山火事の原因のひとつは、この地域の乾燥した状態にある。1月上旬、南カリフォルニアの広い範囲における土壌水分量は、過去の記録のなかで下位2%に入るほど低かった。カリフォルニア大学サンディエゴ校の水文学者であるミン・パンが解説する。
By Ming Pan
Next Global Pandemic
次のパンデミックに「高信頼性の原則」で立ち向かう──特集「THE WORLD IN 2025」
資金難やリソース不足に苦しむ公衆衛生分野は、変革せざるをえない状況にある。2025年は新しい原則を導入することで、複雑で高リスクな環境でも安全性と有効性を維持できるようになるだろう。
By Caitlin Rivers
サンゴの構造を模倣、骨の再生を促す生体材料
サンゴの多孔質構造や化学組成に着想を得て、欠損した骨の再生を促進する生体模倣材料を英国の研究者たちが開発した。健康な骨が形成された後は完全に分解されることから、体内に異物が残ることもないという。
By Ritsuko Kawai
INDIGENOUS GUARDIANSHIP
熱帯雨林を本来の守り手たちに返還する──特集「THE WORLD IN 2025」
アマゾン熱帯雨林から追い出された先住民族はついに故郷を取り戻す法的な力を得た。これは正義の回復にとどまらない。先住民たちの手に委ねることで、森林は生命力を取り戻すことができるだろう。
By NEMONTE NENQUIMO、MITCH ANDERSON
カリフォルニアの破壊的山火事──最悪のタイミングで重なった乾燥と強風
8カ月間以上まとまった雨が降らず、異常な乾燥状態にあった南カリフォルニアで、史上最悪レベルの山火事が発生した。地域コミュニティは現在進行形で猛威をふるう自然と、その背景にある気候変動という複数の脅威に直面している。
By Hannah Singleton
Global Plastics Treaty
プラスチック汚染の解決へ、国際条約を締結できるか──特集「THE WORLD IN 2025」
国際プラスチック条約は、使い捨てプラスチックの生産に終止符を打つ、その始まりになる可能性を秘めている。ただし、この汚染物質をめぐる闘いに勝利できるかどうかは、依然として不透明だ。
By SUSAN SOLOMON
イーロン・マスクがNASAのアルテミス計画を批判し、「わたしたちは火星へ直接向かう」と言った真意
NASAはアルテミス計画を通じて人類を再び月に送り、火星探査の拠点を築こうとしている。一方、スペースXを通じて協力しているイーロン・マスクは、NASAを批判した。次期トランプ政権と深い関わりを持つマスクの発言は、宇宙探査の戦略に影響を及ぼす可能性がある。
By Eric Berger
「デザイナーベビー」が10代に。自らの出生に悩み、カウンセリングを受ける人もいる
体外受精の過程で性別を選択したり、望む特性をもつ胚を選択したりすることで“デザイン”された子どもたち。しかし成長後、親の期待に応えられなかったり、自分が一種の「実験」であると苦悩したりする子どもが増え、カウンセリングを必要とするケースも出てきていると心理学者は指摘する。
By Emi Nietfeld
目に見えないほど微細で形状が変わる! DNAオリガミによるナノマシンの実現可能性が見えてきた
DNAオリガミと呼ばれる技術を用いて自由に形状を変えられる3次元のナノ構造体を、オーストラリアの研究チームが開発した。医療や材料工学に革新をもたらし、複雑な環境下で動作するナノマシンの実現につながる可能性が改めて示されたことになる。
By Ritsuko Kawai
髪の毛の直径より小さな“顕微鏡ロボ”が、ミクロの世界を映し出す
人間の髪の毛の直径よりもはるかに小さいロボットを、米国の研究チームが開発した。磁場を制御することで複雑な環境を自律的に移動でき、可視光の周波数に干渉することで高精度の顕微鏡としても機能するという。
By Ritsuko Kawai
MICROBIOME
マイクロバイオームと健康の広範な関係が明らかになる──特集「THE WORLD IN 2025」
腸内の微生物バランスの研究が進み、若年者の学習障害や慢性疾患、さらにはがんの発生にも腸内の微生物叢が関係している可能性が示唆されている。わたしたちは病気の根本的な理由として、マイクロバイオームにますます目を向けるようになるだろう。
By Marty Makary
“氷の衛星”の内部海に潜り、生命を探すプロジェクト「SWIM」が進行中
木星の衛星「エウロパ」などの“氷の衛星”の厚い氷殻の下に存在する内部海を、ロボットを用いて探査するための研究開発が進められている。NASAが公開した研究開発の様子を撮影した動画などから、そのプロジェクトについて紹介しよう。
By Shigeyuki Hando
FIRST SPACE HUB
月面経済を持続的に発展させる──特集「THE WORLD IN 2025」
地球の衛星への小さな一歩は、太陽系の探索における偉大な一歩になるだろう。そのためにはスペースXとブルーオリジン、そしてNASAが計画するあらゆるサイズの宇宙船での成功が欠かせない。
By Saurav Shroff
「読むのが得意な人」は脳に特徴がある
人間の左脳には、言語理解に重要な2つの領域がある。読む力が優れている人は、この部分に特徴があり、日々の習慣がそれをつくっているという。ルンド大学音声学教授が、脳の言語処理メカニズムの最新研究を解説する。
By Mikael Roll
CONSCIOUS BRAIN
無意識状態が続く患者に本当は意識があるかどうかを測定する──特集「THE WORLD IN 2025」
無反応覚醒症候群患者のための重要かつ新しいライフラインと期待されるTMS-EEG法の臨床試験が進行中だ。意識の有無を確かめることは、最も難しい決断を下す場で重要な役割を果たすだろう。
By Christof Koch
外惑星の大気を観測するNASAのプログラム「OPAL」、その10年間のデータから明らかになったこと
米航空宇宙局(NASA)がハッブル宇宙望遠鏡で外惑星の大気を観測するプログラム「OPAL(Outer Planet Atmospheres Legacy)」が10周年を迎えた。これを記念してNASAが公開した画像に基づいて、外惑星である木星、土星、天王星、海王星の大気について明らかになったことを解説する。
By Shigeyuki Hando
科学のパラダイムシフトと陰謀論:『WIRED』日本版が振り返る2024年(サイエンス編)
深海から火星、あるいは量子や原子や遺伝子まで、WIRED.jpで今年紹介したサイエンス関連の記事も発見や探求で溢れていた。そのなかでもよく読まれた記事をピックアップし、『WIRED』日本版が振り返る2024年(サイエンス編)としてお届けする。
By Michiaki Matsushima
END FOSSIL FUELS
化石燃料をめぐるナラティブは「排出削減」から「段階的廃止」へ──特集「THE WORLD IN 2025」
「排出削減」という言葉は、もはや役目を終えた。現実から目をそらす婉曲表現がグリーンウォッシュの道具と化しているとして、科学者や政策立案者は「石炭、石油、天然ガスを終わらせる」といったフレーズを使うようになるだろう。
By Genevieve Guenther
ANTIBODY APPLICATIONS
抗体が不老長寿のための有用なツールとなる──特集「THE WORLD IN 2025」
細菌やウイルスから身体を守ってくれる抗体。その特異性を医療に生かすため、研究者らは実験を重ねてきた。人間の老化を遅らせて、長寿を実現することはもはや絵空事ではなくなっている。
By Andrew Steele
SIGNS OF LIFE
40光年の彼方に生命が存在する兆候を発見する──特集「THE WORLD IN 2025」
高性能なジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のおかげで、わたしたちは銀河系外のハビタブルゾーンに生命が存在する可能性を示す分子成分を、初めて特定できるかもしれない。
By Lisa Kaltenegger
チョコレートの持続可能な未来へ。新たな製造方法が生み出す道筋
チョコレートの製造過程で生じる廃棄物を削減し、農家の収入を向上させるために、科学者たちははカカオの実を丸ごと使う新しい製造方法を開発した。だが、つくり方が違うチョコレートは、従来のものと同じくらい、甘くおいしいのだろうか?
By Eve Thomas
「クリスマスツリーとキノコ」が生み出す、CO2削減の可能性
マイコフォレストリー(菌林業)の新たな分野では、苗木と共生する菌類を組み合わせ、樹木とキノコを同時に生産しようとしている。
By Alexa Phillips
人工知能が実用フェーズに達した“転換点”の年:『WIRED』日本版が振り返る2024年(AI編)
生成AIは2024年に日進月歩ともいえる進化を遂げ、あっという間にAIを実用フェーズへと押し上げていった。そんな24年によく読まれたAI関連の記事を、『WIRED』日本版が振り返る2024年(AI編)としてお届けしよう。
By Daisuke Takimoto
ラボでつくられたフォアグラは、培養肉業界の牽引役になれるか?
オーストラリアの新興企業が、日本産ウズラの細胞を使って培養フォアグラを開発した。多くの培養肉企業が従来の食肉の代替を目指し大量生産に挑むなか、あえて高級食材としての展開を選んだ。その異色の戦略は、苦境にある培養肉業界に新たな可能性を示せるのか。
By Matt Reynolds
SZ MEMBERSHIP
この植物ハッカーは、これまで見たことも(匂いをかいだことも)ない花をつくり出す
生物工学研究者のセバスチャン・コシオバは、大学に通う学費を稼ぐために植物のハッキングを始めた。現在はロングアイランドの自宅にある研究室から、遺伝子工学のツールを一般の多くの人々に届けたいと考えている。
By Matt Reynolds
遺伝子改変されたブタの腎臓移植、3例目が成功。臓器不足解消へ新たな一歩
米アラバマ州に住む53歳の女性が、遺伝子改変したブタの腎臓移植を受けた3人目の患者となった。経過を見守る研究チームは、ブタの腎臓をヒトの体内で長期間機能させられるかどうかを探っている。
By Emily Mullin
LOOK AGAIN
すぐそばにあるものに目を向ければ、もっと幸せに生きられる──特集「THE WORLD IN 2025」
生活のなかにずっとあってもはや気づかないものに目を向けよう。いいものはじっくりと味わい、改めてそれらの存在を感じよう。嫌なことはさっさと終わらせてしまえばいい。
By Tali Sharot
FOOD WASTE
人類の途方もない無駄遣いは続くだろう:バーツラフ・シュミル──特集「THE WORLD IN 2025」
食料の生産量はかつてないほど増え、生産費も高騰している。それなのに食べられずに廃棄される食料は愕然とするほど多い。膨大なエネルギーを費やして生産した食料を無駄にしないための解決策は見えていない。
By Vaclav Smil
ALGORITHMIC BIAS
医療AIに潜む人種的バイアスの是正が進む──特集「THE WORLD IN 2025」
広く使用されていた医療AIにバイアスが潜んでいることが明らかになって数年がたつ。その解消に一役を買っているのもAIだ。この技術を全人類の健康に役立てるためには、規制と自覚が欠かせない。
By Layal Liverpool
AI × CRISPR
AIとCRISPRの組み合わせが世界を変える──特集「THE WORLD IN 2025」
医療をはじめ食料安全保障や気候変動対策への応用も期待されるゲノム編集技術は、人工知能によってとてつもないパワーを得るだろう──結果はすでに出始めている。
By Jennifer Doudna
このまま地球の気温が上昇すれば、サンゴ礁が消失する未来がやってくる
21世紀末までに地球の気温が3℃上昇すると、環境の変化に対するサンゴの適応力が限界に達する可能性が高いことが、最新の研究で明らかになった。パリ協定の目標を達成できなければ、サンゴ礁が消失する未来もありうるという。
By Ritsuko Kawai