2024年12月12日(木)
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<俳句>小川軽舟選 ◇熱燗や鍋敷となる求人誌(志木市 谷村康志) <短歌>米川千嘉子選 ◇ほくの手が戦わせてた 押し入れにウルトラマンと抱き合う命(四日市市 早川和博) 寒さが本格化して熱かんが恋しい時期になりました。谷村さんの句は求人誌を鍋敷きに使ったところに生活感があふれています。早川さんが押し
毎日俳壇
熱燗(あつかん)や鍋敷(なべしき)となる求人誌 志木市 谷村康志<評>就職が決まって用の済んだ求人誌だと読んでおこう。明日からの仕事を気にしながら、ほどほどに酔いを楽しむ。着古した古着ばかりの冬支度 愛西市 小川弘<評>冬物を出してこれからの寒さに備える。着古した服ばかりでも思い出と愛着がある。霜晴
思ひ出すことに始まる秋思かな 久喜市 利根川輝紀<評>秋は殊更もの思いの多い季節。人生を重ねてくると、思い出が秋思を誘うということが多いことに気がつく。通用門閉じたる後も木の葉降る 鎌ケ谷市 海野公生<評>人間の時間の区切りが、必ずしも自然界の区切りではないことを思わせて興味深い。この道を行けとばか
風の棲(す)むひと部屋ありて冬近む 相模原市 小山鞠子<評>その部屋はどこからともなく風が吹いて、寒々しい部屋なのだろう。風と同居しているかのような、詩情豊かな作品である。冬虹の太きがままに消えゆきし 直方市 岩野伸子<評>冬の虹が、思いがけなく大きく太かったのだ。虹が、鮮やかなまま消えていくのも冬
若武者は十郎五郎菊人形 前橋市 松本潤<評>曽我兄弟の敵討ちの場面。22歳と20歳だったという兄弟の人形が、華やかなキクの衣装で飾られている様子が目に浮かぶ。冬に入る肉を多めに炒めもの さぬき市 景山典子<評>今年は残暑が長く続き、身体も衰えたことだろう。寒さに向かって活力の湧く食べ物を。木犀(もく
毎日歌壇
ぼくの手が戦わせてた 押し入れにウルトラマンと抱き合う命 四日市市 早川和博<評>幼時、両手にウルトラマンと怪獣を持って戦わせた、その時のままの形で玩具が出て来た。戦うための命、はない。ねむってるきみがすきだよ喋(しゃべ)らない代わりに日中より熱い体 東京 遠野鈴<評>作者に、世界に、熱く話しかけて
リアリズム文学みたいな描写力上司のパワハラ書いた手紙が 広島市 堀眞希<評>同僚の手紙を見せてもらったのだろうか。上司のパワハラを迫真的に描写している。怒りと苦痛が根底にあるのだろう。失禁のパッド交換に古老や狼(おおかみ)の如(ごと)き咆哮(ほうこう)を為(な)す 須崎市 野中泰佑<評>介護の現場だ
波と時間 姉妹がいつか会うように水晶片を海へ返した 東京 碓井やすこ<評>ひさびさに見る純粋な叙情の美しさ。波と時間の姉妹が水晶のひとかけらによって出会うのか。偶然に出逢(であ)えるかだよ 雷のようになぞった詩の一節に 京都市 よだか<評>これは意外に素直な正述心緒(せいじゅつしんちょ)の一首と思う
俳句てふてふ 注目の一句
◇ジャンベ鳴るマルシェでおはぎ文化の日 山月 季語「文化の日」の一句。1946年11月3日に公布された日本国憲法の「自由と平和を愛し、文化をすすめる」という趣旨から制定された国民の祝日で、各地で文化的な催しが行われます。 掲句はアフリカの文化を紹介するイベントを詠んだものでしょうか。ステージでは民
喋(しゃべ)らない、嚙(か)みついてくる 何一つ思い通りにならずインコも吾子(あこ)も 福岡市 川波麗<評>思春期の子をもつ母親の歌だろう。「喋らない、嚙みついてくる」と。結句でインコを登場させてイメージが広がった。思春期に入りかけの子が膝に乗ってくるもう前も見えない 奈良市 久保祐子<評>「前も見
「兄戦場 父母は戦火の 国にあり エゴール君の 心ぞいかに」。ロシアの侵攻を受けるウクライナから1年前に避難してきた県立長崎鶴洋高2年(長崎市)で相撲部のエゴール・チュグンさん(17)を題材にした短歌を、同市の歌人ローズコーンさん(82)=本名・只熊豊子=が詠んだ。ローズコーンさんは作品を同校に寄
<俳句>片山由美子選 ◇山肌に家しがみつく秋出水(伊勢市 藤井信弘)<短歌>伊藤一彦選 ◇どれだけの多くの人を救ったか憲法自身何も誇らぬ(筑紫野市 二宮正博) 藤井さんの句の季語「秋出水」は、秋の集中豪雨や台風で河川の水があふれること。山の斜面で危険にさらされている家を「しがみつく」と表現しました。
山肌に家しがみつく秋出水(あきでみず) 伊勢市 藤井信弘<評>昨今の集中豪雨は想像を絶するものがある。川の氾濫で流されそうになった家が山肌にしがみついているというのがリアル。茶の花や雫(しずく)のやうに開きをり 狭山市 小俣敦美<評>丸くふくらんだつぼみが開いたところ。下を向き、大きなしずくがこぼれ
ひと駅で尽きし家並(やなみ)や秋の暮 東広島市 福岡宏<評>次の駅までに家が尽きてあたりは真っ暗になった。地方都市ならばこんな感じだろう。秋の暮れの寂しさがつのる。城址(しろあと)に木造校舎小鳥来る 朝倉市 鳥井てんせき<評>明治の世になって城が壊され最初にできた学校か。木造校舎が長い歴史をしのばせ
平原に影を並べて秋の雲 神奈川 中島やさか<評>大景を見渡したスケールの大きな句。ひとつひとつの雲の影もくっきり見えてくる。大気の澄んだ秋の心地良さ。みづうみのきらめきに消え秋の蝶(ちょう) 岸和田市 妙中正<評>実体は消えてないのだが、人の目にはそう見える。湖の光の強さと秋のチョウのはかなさ。ゴム
鵙(もず)の贄(にえ)見開く眼濡(ぬ)れにけり 名古屋市 平田秀<評>モズがにえを忘れたまま、しばらく時間が経過して、にえは底光りしているのだろう。無残な情景を冷ややかに描いている。ふるさとは遠州の在空つ風 浜松市 久野茂樹<評>芝居のセリフのような口調が楽しい。遠州といえば、北西からの空っ風が有名
どれだけの多くの人を救ったか憲法自身何も誇らぬ 筑紫野市 二宮正博<評>日本国憲法の掲げる基本的人権の尊重がいかに国民を救っているか。下の句のつぶやきのような一言が深く印象に残る。ママのこと大好きだからと言う吾子(あこ)に既に作戦負けをしている 奈良市 久保祐子<評>ママ大好きというのは作戦だろうか
誰もゐぬ部屋へと帰る安息を遠くの君と分かち合ひたし 名古屋市 外山雪<評>一人の部屋に帰るのは寂しいことなどではない。誰にも縛られない唯一の場所なのだ。そうでしょ、とたくさんの人へ。ゆうぐれのディーゼルゆけば弥次郎兵衛(やじろべえ)なんかになりて線路を帰る 垂水市 岩元秀人<評>こちらはもう一つの帰
………………………………沈黙の初句二句をジョン・ケージのために 雲南市 熱田一俊<評>「4分33秒」へのオマージュである。言葉がないのではない。偶然の言葉、意図しない言葉を「…」は示唆している。 今はなき「快速月山」走る頃 キオスクで買うトマトジュース缶 千葉市 佐藤綾子<評>陸羽西線は山形県の鉄
これこそが白だと海を握りしめる極彩色の泡粒のなか 東京 非鋭理反<評>海を握りしめるその手は真実の白を求めるのか。海の青を捨ててかえりみない残酷さと純粋さ。沈黙をこわがらないで宝石がいくつも眠る冬の湖 松本市 飛和<評>宝石たちは互いに語り合っているのかもしれない。果たしてそれは沈黙か。新しきデニム
季節折々の句を紹介します。
コピーライター・仲畑貴志さんが選句する川柳コーナーです。毎日18句を掲載。
SNSアプリ「俳句てふてふ」と連動したコラム。俳人の円堂実花さんが「注目の一句」を分かりやすく解説します。アプリのダウンロードはこちらから(https://www.tehutehu.com/)。