コンテンツにスキップ

ホカ大語族

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ホカ大語族
話される地域北アメリカアメリカ合衆国メキシコ他)
言語系統仮説段階の大語族
  • ホカ大語族
下位言語
ISO 639-5hok
GlottologNone
カリフォルニアのホカ大語族(チュマシュ語族を除く)

ホカ大語族(Hokan languages)は、アメリカ合衆国西部とメキシコを中心とする諸言語・語族を含む仮説段階の大語族。地理的に大きく分断された地域に分布する。

ホカ大語族が有効かどうかは現在も学者によって議論が分かれる[1]

学説

[編集]

ホカ大語族は、1913年に人類学者のローランド・ディクソンとアルフレッド・L・クローバーによって、当時知られていたカリフォルニア州の21種類の語族ないし言語を整理するため、ペヌーティ語族とともに立てられた。ペヌーティ語族と同様に、「ホカ」という名称は、これらの言語で数の2を意味する語に由来する[2]

1913年の段階では、以下の7つの言語・語族をまとめてホカ語族としていた。

また、チュマシュ語族サリナ語をあわせて「イスコム語族」と呼び、この2つもホカ系に含めることができるかもしれないとしていた。

これらのうち、ユーマ語族はカリフォルニア州以外にアリゾナ州およびメキシコのバハ・カリフォルニア半島ソノラ州に広がるが、それ以外はごく狭い範囲で話される語族である。

1915年、クローバーはメキシコのセリ語テキストラテック語族を加えた[4]。1919年のディクソンとクローバーの著書ではイスコム語族を統合し、さらにワショ語を追加した[5]

エドワード・サピアもホカ大語族に関する研究を発表していたが[6]、1920年代にはさらにコアウィルテコ語族英語版スパネック諸語英語版をこの語族に含めた[7]。ただし、現在後者はオト・マンゲ語族に含められている。1929年のブリタニカ百科事典の記事で、サピアはホカ大語族を含む巨大な「ホカ=スー大語族」を提案している[8][9]

1953年、ジョーゼフ・グリーンバーグモリス・スワデシュホンジュラス孤立した言語であるヒカケ語(トル語)をホカ大語族に加えた[10]

1988年にテレンス・カウフマンはホカ祖語を構築する試みを行った[11]

最近の研究ではチュマシュ語族をホカ大語族から除く傾向がある[12]

脚注

[編集]
  1. ^ Goddard (1996) pp.314-315
  2. ^ Dixon & Kroeber (1919) p.54。「2」を意味する語の一覧は同書 p.107
  3. ^ Dixon & Kroeber (1919) p.48
  4. ^ Kroeber (1915)
  5. ^ Dixon & Kroeber (1919) pp.104-112
  6. ^ Sapir (1917) など
  7. ^ Goddard (1996) p.311
  8. ^ Sapir (1929)
  9. ^ Goddard (1996) pp.315-316
  10. ^ Greenberg & Swadesh (1953)
  11. ^ Kaufman (2015)
  12. ^ Campbell (1997) p.292

参考文献

[編集]
  • Campbell, Lyle (1997). American Indian Languages: The Historical Linguistics of Native America. Oxford University Press. ISBN 0195094271 
  • Dixon, Roland B; Kroeber, A.L (1913). “New Linguistic Families in California”. American Anthropologist, New Series 15 (4): 647–655. JSTOR 659723. 
  • Dixon, Roland B; Kroeber, A.L (1919). Linguistic Families of California. Berkeley: University of California Press. https://archive.org/details/linguisticfamili00dixorich 
  • Goddard, Ives (1996). “The Classification of the Native Languages of North America”. Handbook of North American Indians: Languages. 17. Smithsonian Institution. pp. 290-323. ISBN 0160487749 
  • Greenberg, Joseph; Swadesh, Morris (1953). “Jicaque as a Hokan Language”. International Journal of American Linguistics 19 (3): 216-222. JSTOR 1263010. 
  • Kaufman, Terrence (2015) [1989]. “A Research Program for Reconstructing Proto-Hokan: First Gropings”. In Scott DeLancey. Proceedings of 1988 Hokan-Penutian Workshop. University of Oregon. http://www.albany.edu/ims/Kaufman-reconstructing%20protoHokan-first%20gropings-revd2015.pdf 
  • Kroeber, A.L (1915). “Serian, Tequistlatecan, and Hokan”. University of California Publications in American Archaeology and Ethnology 11 (4): 279-290. http://dpg.lib.berkeley.edu/webdb/anthpubs/search?all=&volume=11&journal=1&item=5. 
  • Sapir, Edward (1917). “The Position of Yana in the Hokan Stock”. University of California Publications in American Archaeology and Ethnology 13 (1): 1–34. http://dpg.lib.berkeley.edu/webdb/anthpubs/search?all=&volume=13&journal=1&item=4. 
  • Sapir, Edward (1929). “Central and North American Languages”. Encyclopædia Britannica. 5 (14th ed.). pp. 138-141