記録に残る最古の女性科学者・ヒュパティアは、非業の死を遂げた。彼女を等身大の大きさで描いた絵画は何を意味するのか。作家の中野京子さんが解説する――。 ※本稿は、中野京子『名画の中で働く人々 「仕事」で学ぶ西洋史』(集英社)の一部を再編集したものです。 記録に残る「最古の女性科学者」の人生 その絵画に描かれた、豊かに波打つ長い金髪で裸体を隠し、必死に何かを訴える女性は、はるか1600年の昔、エジプトのアレクサンドリアに実在した数学者にして天文学者、哲学者にして教育者でもあったヒュパティアだ。 縦2.5メートルほどの大画面に等身大で描いたのは、イギリスのラファエル前派に属するチャールズ・ウィリアム・ミッチェル(1854〜1903)。 神話や古代史の登場人物をヌードで表現することは珍しいことではない。しかしここでヒュパティアが裸体なのは、別の理由があってのことだ。記録に残る最古の女性科学者の足跡