「ほー」と思わせる判決だった。「陸山会事件」の一審判決で東京地裁の登石郁郎裁判長は、大久保隆規元秘書が公共工事の談合で「天の声」を出す当事者であり、石川知裕元秘書と共に水谷建設から裏金1億円を受け取ったと認定した。そしてそれを隠蔽するため政治資金収支報告書に嘘の記載をしたとして3人の元秘書に執行猶予付きの禁固刑を言い渡した。それならこれは虚偽記載事件と言うより贈収賄事件である。 東京地検はなぜ贈収賄事件として贈賄側を逮捕し、次いで収賄側の立件に至らなかったのか。一連の事件には初めから不可解な点が纏わりついている。まず政権交代がかかった衆議院選挙直前の3月に「西松建設事件」で大久保秘書が政治資金規正法の虚偽記載容疑で突然逮捕された。形式犯とも言える容疑での強制捜査は前例がない。 しかも時期的に総理になる可能性の高い政治家に対する捜査である。検事総長以下最高幹部が意思統一し捜査に臨むのが決まり