P糖蛋白
【概要】 チトクロームP450以外に薬物相互作用を説明するメカニズムの一つは、このP糖蛋白という細胞膜にある蛋白。細胞内に入ってくる薬物をかき出すポンプである。抗癌剤が効かない癌細胞がたくさん持っているので注目された。P糖蛋白の働きが多いか少ないかで、薬物の血中濃度に影響があることがわかってきた。
【詳しく】 腸管粘膜上皮細胞の管腔側でP糖蛋白が増えると、薬の腸吸収は落ちてしまう。腎尿細管刷子縁膜で増えると、薬の尿中への排泄が増える。肝臓の胆管側膜では薬物を胆汁中に排泄する。また脳血管関門で増えると薬の脳内移行が高まる。P糖蛋白を阻害する薬は、これらとは逆の効果をもたらす。このようにP糖蛋白に影響を与える薬は、その臓器によって薬物の濃度に大きな影響を及ぼす。薬物併用でのP糖蛋白に与える影響は薬ごとに違うので、相互作用の出方も一律ではない。
《参照》 薬物転送、 チトクロームP450、 薬物相互作用
P糖タンパク質
(P-glycoprotein から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/14 10:07 UTC 版)
P糖タンパク質(Pとうタンパクしつ、英: P-glycoprotein, P-gp, Pgp)は、分子量約18万のリン酸化タンパク質であり、細胞膜上に存在して細胞毒性を有する化合物などの細胞外排出を行う。P-gpはABC輸送体のMDR/TAPサブファミリーに属する分子であり、腸や肺、腎臓の近位尿細管、血液脳関門の毛細血管内皮細胞等に発現している。また、P-gpによる薬物の排出は薬剤耐性の形成に寄与している。P-gpはABCB1(ATP-binding Cassette Sub-family B Member 1)、あるいはMDR1(Multiple drug resistance 1)とも呼ばれる。細胞表面抗原の分類に用いられるCD分類ではP-gpはCD243と番号が振られている。なお、名称頭文字の"P"はその薬剤透過性を変化させる働きから"Permeability(透過性)"に基づいてつけられた[1]。
- ^ Juliano RL, Ling V."A surface glycoprotein modulating drug permeability in Chinese hamster ovary cell mutants" Biochim Biophys Acta. 1976 Nov 11;455(1):152-62 PMID 990323
- ^ Chen, C.-j., Chin, J. E., Ueda, K., Clark, D. P., Pastan, I., Gottesman, M. M., and Roninson, I. B. Internal dupilication and homology with bacterial transport proteins in the mdr1 (P-glycoprotein) gene from multidrug-resistance human cells. Cell, 47: 381-389 (1986)
- ^ Ueda, K., Cardarelli, C., Gottesman, M. M., and Pastan, I. Expression of a full-length cDNA for the human "MDR1" gene confers resistance to colchicine, doxorubicin, and vinblastine. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84: 3004-3008 (1987)
- ^ Kohji Takara,Masayuki Tsujimotoa,Noriaki Ohnishi,Teruyoshi Yokoyama 『Digoxin Up-Regulates MDR1 in Human Colon Carcinoma Caco-2 Cells 』 Biochemical and Biophysical Research Communications Volume 292, Issue 1, 22 March 2002, P.190
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