概念の一般化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/03 09:07 UTC 版)
ところが、その後遺伝子発現の制御の研究が進むに従って、遺伝子発現が転写の段階で調節されるということは至極ありふれた事象となり、これを取り立ててオペロンと呼称することは少なくなった。これはオペロンが普遍的な価値を持つ概念だったためだが、と同時にいささか気の抜ける発音を要求することの不幸な結末かもしれない。さらに、単一プロモーターによって転写された一次転写産物から、複数の遺伝子産物が由来することにのみ着目された結果、オペロンはおもに原核生物に見られ真核生物には基本的に存在しない、と言われるようになる。つまり、この時のオペロンは複数の遺伝子産物を支配していることが必要条件となる。真核生物の例外として、線虫類に多く存在するオペロンとはこちらのことであり、C. elegansでは全遺伝子数の1/4程度がオペロンとして転写されることが知られている。この場合それぞれの遺伝子産物はプロセシングを受けた別々のmRNA分子から翻訳される。これは、一分子のmRNAから複数種のタンパク質が複数の翻訳開始点から翻訳されるという原核生物の機構とは異なっている。また、これらの転写産物に機能的な関連性があるとは限らない点も異なる。 現在の状況としては、原義で言うところの1遺伝子のみからなるオペロンは遺伝子と呼び、構造遺伝子部分はコーディング・リージョンと呼ぶのが比較的正確かつ円滑な意思疎通を産むといえるのかもしれない。
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