冬季対策設備
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冬期間の越後湯沢駅。スプリンクラーで融雪され、線路上の積雪は排除される。いずれも下りホームから東京方を撮影。 東海道新幹線は開業4か月目で雪害の影響により列車の定時運行ができなくなった。そのため、寒冷・豪雪地帯を通過する東北・上越新幹線では10年に1度の積雪量に対しても正常に運行することを目的に「新幹線雪害対策委員会」が設立され、その成果が実際の雪害対策に反映された。東北・上越新幹線では10年以上かけて沿線の気象調査や技術開発が行われ、沿線の状況に合わせた雪害対策が取られた。東海道新幹線では盛土が54%、全区間バラスト軌道であったが、上越新幹線では高架橋が49%、トンネルが39%であり、軌道はスラブ軌道が90%、バラスト軌道が10%となっている。さらに、上越新幹線沿線では比較的気温が高く、雪質が重いことや、降雪量が平年で最高3 mにもおよび、列車が走行する時に排雪する雪を高架下に貯める貯雪式では対応不可能であると想定された。これらの事情を踏まえて、上越新幹線では散水消雪方式の採用が決定された。1972年(昭和47年)の方針決定から1977年(昭和52年)にかけて新潟県南魚沼郡大和町(現・南魚沼市)に消雪試験場として九日町高架橋(延長971 m)を建設し、6冬にわたる開発試験が行われた(上越新幹線 雪に挑む【JRTT鉄道・運輸機構】を参照)。散水消雪設備は上毛高原駅 - 新潟車両基地間の157 kmのうち明かり区間79 kmに設置されている。水源は河川水やトンネル湧水で、加熱装置によって約10℃に加熱されてスプリンクラーによって散水される。散水量は降水量に換算するとバラスト軌道区間で72 mm/h、スラブ軌道区間で42 mm/hとなっている。雪を融かした水は高架橋に設けられた排水溝を勾配に沿って流れ、消雪基地に回収されて再利用される。 また、トンネル間の短い明かり区間にはスノーシェルターを設けることで高架橋への積雪を防止している。 なお、上毛高原駅 - 新潟駅の各駅では雪害対策のためホーム全体が屋根で覆われているが、特に豪雪地帯である越後湯沢駅、浦佐駅、長岡駅の3駅では屋根上に散水して消雪する方式をとっている。
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冬季対策設備
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 14:04 UTC 版)
東海道新幹線は開業4か月目で雪害の影響により列車の定時運行ができなくなった。そのため、寒冷・豪雪地帯を通過する東北・上越新幹線では10年に1度の積雪量に対しても正常に運行することを目的に「新幹線雪害対策委員会」が設立され、その成果が実際の雪害対策に反映された。東北・上越新幹線では10年以上かけて沿線の気象調査や技術開発が行われ、沿線の状況に合わせた雪害対策が取られた。東北新幹線沿線は上越新幹線に比べて降雪量は少ないものの、12月から3月の平均気温が0 ℃未満であることから、年最大積雪深が30 cm以上となる一ノ関駅 - 盛岡駅間に貯雪型高架橋が採用された。貯雪式高架橋は、高架橋の軌道面をかさ上げすることで生じた空間に、新幹線車両のスノープラウによって排雪された線路上の雪をためることが可能な構造になっている。貯雪型高架橋は盛岡駅 - 八戸駅間でも採用されている。七戸十和田駅付近では予想される最大積雪深が貯雪能力を上回るため、貯雪量を拡大したポケット式貯雪型高架橋や高架橋内の降雪を減らすための雪覆いを設けた半雪覆式貯雪型高架橋が新幹線として初めて採用された。 積雪量が多いがバラスト軌道である北上駅付近および第2北上川橋梁付近の延長3.0 kmは、貯雪能力が不足するため、散水消雪設備が設けられている。また、東京起点630.44 km以北(七戸十和田駅 - 新青森駅間)のトンネル間の明かり区間約13 kmにも散水消雪設備が設けられている。この区間は寒冷・多雪地帯であるため、上越新幹線で実績のあるスプリンクラーによる散水消雪方式の採用が検討され、2000年から2002年にかけて長さ60 mのモデル高架橋を設置した七戸消雪試験場で試験を行った後、2008年度に青森市内に船岡消雪試験場として300 mの本線高架橋を建設し、散水消雪試験が行われた。試験で得られた結果をもとに、七戸十和田駅 - 新青森駅間で散水消雪システムが導入された。 新幹線では高速で列車が走行するため、列車風によって雪が舞い上がり台車等に着雪する。その後気温の高い地域などで雪が落下し、地上設備を損傷させることがある。そのため12月1日から3月31日までの冬期間にバラストスクリーンを常時設置し、落雪によるバラストの飛散を防止している。また、400 km/hの営業列車からの落雪でも破損しない新型のEast-i地点検知地上子を開発した。また、建設当時に雪害が想定されていなかった大宮 - 仙台間では、降雪や積雪の状況によっては徐行を行うことで地上設備の破損を防止する。 分岐器においては雪による転換不良を防止するための対策がなされており、車両からの雪の持ち込みを防ぐために気温が規定値を下回ると作動する融雪マットヒーター、落雪防護マクラギ、レールを温めて雪を除去する電気温風式融雪機や直接加熱式電気融雪機、可動部に挟まった雪などを高圧の温水で除去する温水噴射式融雪装置が設置されている。
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冬季対策設備
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北陸新幹線の経由する上信越・北陸地方は日本でも有数の豪雪地帯であり、冬季においても安定輸送を維持するための対策が施す必要がある。1985年(昭和60年)12月に高崎 - 小松間の認可申請が行われると、北陸新幹線の雪害対策の検討が開始された。既設新幹線においては、比較的降雪量が少ない東北新幹線盛岡以南では貯雪方式が、降雪量が多い上越新幹線では散水消雪方式が採用されていた。しかし、散水消雪方式の導入には多額の費用が必要である。在来線で行われている機械除雪は安価であるが、人家に近接する場所や道路との交差箇所での雪捨て場の確保の問題がある。整備新幹線においては建設費の低減が求められており、沿線の気候条件に適した様々な技術を開発する必要があった。 1986年度に、北陸新幹線の建設主体であった鉄道公団は、北陸新幹線沿線の雪質および雪量に対応した貯雪量の多い貯雪式高架橋の実物大試験を行った。モデル高架橋は北陸新幹線沿線の富山市に近い富山県大沢野町舟倉地先に設置された。積雪深120 cmと170 cmの試験設備が設けられ、新幹線のスノープラウによる排雪を再現した実験が行われた。 さらに、鉄道公団と新日本製鐵は新たな対策方法として、温水が流れるパイプを設置したパネルによって雪を融かす消雪パネルの開発を行った。そして1987年度から1989年度まで飯山市の消雪試験場で試験を実施した。その後、「運輸省案」に基づき長野 - 軽井沢間を優先して着工する方針が示されたことで、北陸新幹線向けの試験はいったん終了したが、同時期に高速化が決定した北越北線の一部区間において、鉄道として初めて消雪パネルを導入することが決定した。 ハード面での対策としては沿線の積雪状況や周辺地形を踏まえて、区間ごとに様々な対策が取られている。飯山駅 - 金沢駅間では雪害対策のためホーム全体が屋根で覆われている。 JR東日本管内のうち比較的積雪量が少ない長野までの区間では高架橋の軌道下の路盤コンクリートを高くし、線路の両脇に雪を貯める貯雪方式を採用している。降雪量の多い区間ではスプリンクラーによる散水消雪方式が採用されている。飯山エリアでは、東北新幹線で実績があり、厳冬期に早期散水が可能となるよう予め送水本管内に温水を循環させておく「循環方式」を採用している。一方、上越エリアでは、上越新幹線で実績があり、散水終了後に送水本管内の水抜きを行うことで凍結を防止する「水抜き方式」を採用している。また、新規導入設備としてトンネル緩衝口端部より5 m幅で散水するトンネル雪庇散水や、下り線側の保守用斜路への散水消雪設備が導入された。 JR西日本管内では、沿線に水源を確保できる場合はスプリンクラーによる散水消雪を採用し、困難な場合には高架橋の軌道下の路盤コンクリートを高くし、線路の両脇に雪を貯める貯雪方式を採用している。比較的降雪量の多い区間では、高架橋内の降雪を減らすための雪覆いを設けた半雪覆式貯雪型高架橋が採用されている。貯雪可能な量を超える積雪が予想される糸魚川 - 富山間の黒部地区では、夜間にロータリーモーターカーで雪を高架下に投下できる側方開床式貯雪型高架橋が採用されている。しかし、道路などがあり高架下への投雪が困難な区間では、高架橋を拡幅して貯雪量を増やした閉床式貯雪型高架橋(拡幅型)、拡幅も困難な場合は高架橋のケーブルダクト上に加温した不凍液を循環させる温水パネルを設置して融雪するなど、周辺環境に合わせた対策を行っている。また、トンネル間の短い明かり区間にはスノーシェルターを設けることで高架橋への積雪を防止している。 ソフト面での対策としては、台車からの落雪により地上設備が破損することを防ぐため、東京方面へ直通する列車に対して、糸魚川駅上りホームにおいて雪落とし作業を行っている。雪落とし作業の要否については前日の降雪予報と経験によって判断されていたが、実際には着雪量が少ないため作業が不要である事例が生じていた。そこでJR西日本は人工知能 (AI) を用いて沿線の気象状況などから着雪量の推定を行い、雪落とし作業の要否判断を支援するツールの導入を検討した。着雪量推定モデル作成にあたってはオープンコンペティション方式を活用した。そのうち上位3件のモデルをもとに雪落とし作業の要否判断を支援するツールを開発し、実際の業務に導入している。さらに、画像分析AIによって営業列車の着雪量を測定することで、毎年冬に着雪量推定モデルの再学習が可能となり、さらなる精度向上が期待される。なお、金沢駅および白山総合車両所でも雪落とし作業を行っている。 上越妙高 - 富山間、富山 - 金沢間のうち、気象条件によって夜間に架線へ雪氷が付着する可能性がある区間について、雪氷を除去するために始発列車前に110 km/h以下の回送列車(雪払い列車)を運行している。また、北陸新幹線では列車本数が少なく、激しい降雪の場合に列車間合いにおいて運転中止基準(積雪量レール面上31 cm)に達すると予想される場合、排雪列車として臨時回送列車を設定する。開業後、実際に4本の排雪列車を運転し、運転中止を回避している。 2018年1月から2月にかけての大雪(平成30年豪雪)により、北陸地方では交通網に大きな影響が生じた。1月下旬、大雪による道路通行止めの影響で、係員が新高岡 - 金沢間の除雪基地にたどり着けない事態が発生した。この時は他の区間から除雪車を手配することができたが、夜間の除雪作業ができないことは翌日の新幹線の運行に大きな影響を及ぼす。そこで、同様の事態が再び起きた場合に備えて、回送列車を用いて除雪基地付近まで係員を移動させる案が検討され、同年2月上旬には実際に行われた。 さらに、開業以来実施されたことはないが、高架橋外への投雪が困難な富山 - 金沢間において上下線で運転中止となるほどの降雪が生じた場合、単線運転を行うことが可能になっている。単線運転時には下り線を投雪スペースとして除雪車による除雪を行った後、上り線のみを使用する。保安装置については通常のDS-ATCではなく代用のRS-ATCを使用し、最高速度110 km/h以下で運転することになる。 建設中の金沢駅 - 敦賀駅間では、石川県能美郡川北町と福井県あわら市伊井の2か所に除雪基地が設けられ、冬季は基地内に格納した除雪車が必要に応じて出動する予定となっている。
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