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Where Is the Japan Association for Wind Engineering Headed?

Wind Engineers, JAWE

日本風工学会誌 第 48 巻第 3 号(通号第 176 号)2023 年 7 月 Wind Engineers, JAWE Vol.48, No.3(No.176), July 2023 巻頭言 日本風工学会のこれから Where Is the Japan Association for Wind Engineering Headed? 宮下 康一*1 Koichi MIYASHITA 私が初めて日本風工学会で行った発表は,今から 38 年 ンポジウム」のちに「風工学シンポジウム」の論文の変遷 前の 1985 年の年次大会で,当時,修士課程に入ったばか を見ながら,日本風工学会の将来について考えてみよう りの大学院生の時でした。場所や詳細なことは覚えてい と思います。風工学シンポジウムは,前身の構造物の耐風 ませんが,とにかく大変緊張したことだけは記憶してい 性に関するシンポジウムが 1970 年に第 1 回を開催して以 ます。その後,風工学研究所に入社し,仕事の傍らで年次 来,2022 年に第 27 回を迎え,52 年の歴史を誇っていま 大会や風工学シンポジウムで発表を続けてきました。光 す。私が初めて風工学シンポジウムに投稿した年は 1986 陰矢のごとしで,時間はあっという間に過ぎて,ここまで 年の第 9 回です。 来たと実感しています。 図 1 に示す論文の編数の推移をみると,第 1 回から第 日本風工学会は,1976 年に前身となる日本風工学研究 5 回は 30 編前後で,その後,徐々に増え続け 1996 年の第 会が,土木,建築,電気,気象等の学会の垣根を超えた相 14 回で 101 編となり,100 編を超えています。100 編を超 互の連絡,情報の交換などを行う目的のために設立され, えているのはこの回のみで,その後は,徐々に減少傾向に その後,1982 年に名称を日本風工学会に変更して,今日 あり,2022 年の第 27 回には 33 編となり,ほぼ日本風工 に至っています。日本風工学研究会の会誌の発足にあた 学研究会の発足時点の編数まで減っています。 っての最初の文書に, 「“風工学”という言葉は耳慣れない かもしれませんが, 」という記述がありました。この表現 から,当時は「風工学」という言葉が一般的でなかったこ 120 論文数 100 80 とがわかります。パラパラと過去の学会誌を眺めると, 1982 年の日本風工学研究会誌には,当時日本電信電話公 社の赤木さんが角柱周りの流れを解析した数値流体解析 60 40 論文や特集のタイトルページのデザインに の風況図 1)が, 20 使用されていました。このデザインは現在でも使われ,こ 0 のページでも巻頭言の文字を挟んでいます。このような デザインの採用は,日本風工学会の先進性を感じさせま 図 1 論文数の推移 す。この日本風工学会も,2007 年頃から徐々に会員数が 減少しているようです 2)。 次に,各回ごとに,筆頭著者の専門分野 (建築,土木, ここで,日本風工学会と深い関わり合いを持ち,日本風 気象,電気,機械,その他),所属 (大学,民間,公的機 工学会の写し絵とも言える「構造物の耐風性に関するシ 関,学生),論文内容の分類 (風の性質,耐風設計,空力 *1 株式会社 風工学研究所 代表取締役所長 [email protected] President & CEO, Wind Engineering Institute, Co., Ltd. - 241( 1 )- 特性,風環境,風災害),研究の方法 (実験,観測,解析, 100% 100% 数値流体解析)の 4 つの項目について,どの程度の頻度で 80% 80% 分布しているかを整理してみました。これらを厳密に,分 60% 60% 類することは難しく,かなり独善的な分類になっている 40% 40% ことについてご了承いただきたいと思います。 20% 20% ます。分野間のバランスには大きな変化が見られません 建築 でした。2010 年頃からは,気象関連の比率が増加傾向に 土木 ありますが,論文の総数が減少しているために,実際の数 気象 電気 機械 2022 2022 2018 2018 2014 2014 2010 2010 2006 2006 2002 2002 1998 1998 1994 1994 1990 1990 1986 1986 1982 1982 1978 1978 木の分野が他の分野よりも多い傾向にあることが分かり 1974 1974 0% 0% 1970 1970 図 2 の筆頭著者の専門分野の分布を見ると,建築,土 その他 図 2 筆頭著者の専門分野 としては気象関連もやや減る傾向にあります。 図 3 の筆頭著者の所属を見ると,大学や民間に所属し 100% 100% ている方の比率が高い傾向にありますが,学生の比率は 80% 80% 徐々に上昇しています。学生の研究者が増加することは, 60% 60% 次世代の日本風工学会を担う人材が増える可能性がある 40% 40% ことを意味します。 20% 20% ことが分かります。しかしその後,空力特性に関する研究 大学 の比率は減少傾向にあり,代わって風災害の研究が増加 していく傾向にあります。 民間 ⺠間 公的 2022 2022 2018 2018 2014 2014 2010 2010 2006 2006 2002 2002 1998 1998 1994 1994 1990 1990 1986 1986 1982 1982 1978 1978 1974 1974 0% 0% 1970 1970 図 4 の論文内容の分類を見ると,2000 年頃までは,風 の性質,耐風設計,および空力特性の研究が主流であった 学生 図 3 筆頭著者の所属 図 5 の研究方法を見ると,風洞実験の比率が徐々に減 り,数値流体解析の比率が徐々に増えていることが分か 100% 100% ります。その合計を見ると,大よそ 60%前後の割合で推 80% 80% 移しており,風洞実験から数値流体解析へ移行している 60% 60% ことが分かります。また,2016 年以降,観測による研究 40% 40% が徐々に増える傾向にあるようです。 20% 20% 作成しました。これまで,このような視点での集計は,あ 風の性質 まり行われてこなかったように思います。この資料が少 耐風設計 しでも会員の方々が日本風工学会の今後を考える手助け 空力特性 風環境 2022 2022 2018 2018 2014 2014 2010 2010 2006 2006 2002 2002 1998 1998 1994 1994 1990 1990 1986 1986 1982 1982 1978 1978 1974 1974 0% 0% 1970 1970 資料を整理するにあたり,日本風工学会の課題が可視 化され,問題の一端でも抽出できないかと考えて資料を 風災害 図 4 論文内容の分類 になればと思います。日本風工学会,風工学シンポジウム の良さは,玉石混淆,多種多様,まさに“ごった煮”状態で, 100% 100% 議論を交わすことにあると思います。この日本風工学会 80% 80% が長く続くことを願っています。 60% 60% 40% 40% 20% 20% 関するシンポジウム, 第 5 回, pp. 139-146, (1978) 2) 奥田 泰雄, 「日本風工学会第 6 期を振り返る」, 日本 風工学会誌, 第 47 巻第 3 号, pp. 209-210, (2022) - 242( 2 )- 実験 観測 解析 数値流体解析 図 5 研究の方法 2022 2022 2018 2018 2014 2014 2010 2010 2006 2006 2002 2002 1998 1998 1994 1994 1990 1990 1986 1986 1982 1982 および風圧力に関する数値解析」, 構造物の耐風性に 1978 1978 0% 0% 1974 1974 1) 藤本 盛久, 大熊 武司, 赤木 久真, 「角柱周辺の気流 1970 1970 参考文献