行動計量学 第 41 巻第 1 号(通巻 80 号)
2014 年,1
追
悼
柳井晴夫先生のご逝去を悼む
——研究一筋に過ごされた生涯——
日本行動計量学会理事長
岡
太
彬
訓
In Remembrance of Professor HaruoYanai
——Who Devoted His Life to Research on Multivariate Analysis——
Akinori Okada(President of the Behaviormetric Society of Japan)
旧年 12 月 21 日柳井晴夫先生がお亡くなりになりま
した.73 歳というあまりにも早過ぎる旅立ちでした.
かねてよりご体調が十分ではないことは伺ってはいた
ものの,このように急にお亡くなりになるとは全く想
像もできない驚きでした.天才的な研究者であった柳
会誌第 33 巻 4 号にも先生の論文が 2 編掲載されまし
た.これは先生が研究に最後迄力を尽くされたことを
如実に示すものです.一方で,柳井先生は教育にも力
を注がれて多くの研究者を育てられました.柳井先生
の薫陶を受けた多数の研究者がさまざまな研究分野で
井先生が亡くなられたことは,単に本学会のみならず
多変量解析や線形代数の領域に与える損失が計り知れ
ないほど大きいことはいうまでもありません.また,
柳井先生の裏表のない純粋なお人柄に今後はもう接す
ることができないと思うととても寂しい気がします.
また本学会を含む多くの学会の運営で大きな力を発揮
しておられるのを見ても,柳井先生が研究と並んで教
育にも多くの情熱を傾けられていたことがわかります.
柳井先生には 1973 年の本学会創立前の 1971 年に開
催された第 3 回行動計量学シンポジウムでお会いした
柳井先生は 1994 年 4 月から 2000 年 3 月まで本学
会の理事長を務められました. 1987 年には第 2 回の功
績賞(現在の林知己夫賞(功績賞)
)を受賞され,2011
年には第 1 回の杉山明子賞(出版賞)を高根芳雄・竹
内啓の両氏と共に受賞されました1) .極めて多くの優
れた論文を評価の高い海外の学術誌に書いておられる
のが最初で,以来 40 年以上にわたりお付き合い下さい
ました.柳井先生の頭の中には研究のことが常に一杯
に詰まっていたのでしょう,先生との会話はいつも研
究の話でいわゆる世間話をしたのは数える程しかあり
ません.この 40 年余の間で特に印象深いのは,柳井先
生が組織委員会委員長として 2001 年 7 月に大阪大学
ことは多くの研究者が認めているところであり,柳井
先生の研究面でのご貢献はこのように顕著なものであ
ることはいうまでもありません.「行動計量学」の本号
(pp. 15–32)にも柳井先生の論文が掲載されており,先
生がお亡くなりになる直前に発行された日本看護科学
で開催された IMPS2001(International Meeting of
the Psychometric Society)で,1997 年 7 月に第 10 回
European Meeting of the Psychometric Society の
際 Psychometric Society へ開催の希望を伝えてから
4 年間の準備を経て実現しました.現在使われている
International Meeting of the Psychometric Society
(IMPS)という名称(略称)はこの時に初めて使われ
多摩大学大学院経営情報学研究科
(Graduate School of Management and Information
Sciences, Tama University)
連絡先:〒 206–0022 東京都多摩市聖ヶ丘 4–1–1
Tel:042–337–7103
E-mail:
[email protected]
小文をまとめるにあたりトロント大学名誉教授西里静彦
氏および名古屋大学准教授石井秀宗氏にご助言を頂きま
した.ここに記して感謝いたします.
ました.末筆になってしまいましたが,柳井先生のご
冥福を心より祈念する次第です.
1)
Yanai, H., Takeuchi, K, & Takane, Y. (2011). Projection matrices, generalized inverse matrices, and
singular value decomposition, New York: SpringerVerlag.