【齋藤 剛】68歳の「ヤバすぎる隣人」のせいで、5200万円の土地が「めちゃくちゃ値下がり」…不動産売買をめぐる「残酷なトラブル」
5200万円での売り出し
住宅の建築や土地の売買についての相談を受けている私のもとには、日々さまざまな不動産の悩みが寄せられます。
今回はそのなかから、土地が相場よりも大きく値下がり、安い価格でしか売れなかったという残念なケースをご紹介します(プライバシーの観点から、実際の事例にアレンジを加えています)。物件の購入や販売の際の参考にしてみてください。
東京都内のとある市に住む佐々木武雄さん(75歳・仮名=以下同)は、自宅の隣にある40坪の土地を、40年にわたり戸建の土地としてAさんに貸していました。
2年前、長いあいだ貸していたその土地の「賃貸借契約」が終了するのにともなって、佐々木さんはAさんから更地になった土地の返還をうけました。
佐々木さんは返還された後に自分で使用することも考えましたが、地価が高騰傾向にあることも考慮し、B不動産会社の担当である30代男性のCさんのサポートを受けて、土地を売却することにしました。
売却を開始するにあたり、販売開始額は付近の相場(130万円/坪)にあわせて、【130万円/坪×40坪=5200万円】に設定しました。
この土地は整形地……つまりきれいに形が整った土地で、需要も高く、近隣に類似物件もないため、希少性があり、もう少し高い価格設定にして売り始めることもできました。しかし、早めに売ってスッキリしてしまいたいという佐々木さんのご意志で、5200万円にて販売スタートしたのでした。
早速あらわれた「購入希望者」
不動産会社のCさんが、まずはご近所さんへあいさつまわりをしました。これから販売活動をおこなうむね、そして、「よかったら購入しませんか」というお話をするためです。どなたも「購入はしない」とのことで、いよいよ一般公開がなされました。
一般公開での販売を開始すると、すぐに数件の問い合わせと見学の申し込みがありました。反応や引き合い状況は順風満帆のまま2週間が経過した時点で、早々に一組のご家祖族から購入をしたいと申し込みがありました。
購入希望をされた方は近隣の仲介業者さんが連れてきてくれたお客様で、「学区限定」で土地を探していた40代の田村さんご家族でした。ご夫婦にお子様3名とワンちゃんの家族です。
田村さんご家族は、今は10年前に購入した建売住宅に住んでいますが、その物件を売却し、自分たちの夢の詰まった注文住宅を建てるための土地を探していました。ワンちゃんが遊べる庭があって吹き抜けのリビングがある……そんな「夢のマイホーム」です。
田村さんは小学生であるお子様に転校させたくなく、今の学校と同じ学区限定で土地を探していました。2年ほど前から土地を探しており、やっと理想の形・立地の土地を見つけたと大変喜ばれての購入希望でした。
佐々木さんも、思っていたより早期に売却が決まったため、ご機嫌でした。田村さんご家族と顔を合わせたところ、印象もよく、「お隣さん」としても申し分ないと感じたそうです。さらに、お互いの趣味が「釣り」であることも発覚し、お互いに釣り情報の交換などもできるようになるのではとご満悦だったのです。
佐々木さんは、土地を売却に出す前は、「新築ができる時の建築中の音が気になるかも…」なんて思っていましたが、そんなことはすっかり忘れて、むしろ田村さんご家族が引っ越してくるのが、楽しみにさえなっていました。
そう、あの連絡が入るまでは。
このあと佐々木さんは、隣人の68歳男性・河合さんによる「クレーム攻撃」に遭い、売買で信じられないほどの大きな損をしてしまいます。
【後編】「「反対運動起こすから」。5200万円で土地を売ろうとした男性に「68歳の隣人」が放った衝撃の一言」でくわしく見ます。