PC-8200シリーズ
PC-8200シリーズは、日本電気が発売していたパーソナルコンピュータのシリーズである。「シリーズ」と名付けられているが、日本国においては1機種のみの発売だった(日本国外では、PC-8201の国外仕様であるPC-8201Aの他に、後継機のPC-8300も存在する)。日本電気の特約店(NECビットイン、NECマイコンショップ)のほか、日本電気ホームエレクトロニクスの家庭電化商品の販売ルートで販売された。
PC-8000シリーズとPC-8800シリーズの中間に位置づけられ、A4サイズのハンドヘルド型本格ビジネスパソコンとして展開された。まだノート型パソコンが存在しなかった当時におけるノートPCに相当する役割の製品だった。
PC-8201
[編集]A4サイズのハンドヘルドコンピュータで、液晶ディスプレイとキーボードが一体となっている。本体の色はアイボリーホワイト、ワインレッド、メタリックの3種類。
液晶ディスプレイはかなり横長で、グラフィックは最大240×64ドット、テキストは40文字×8行。
キーボードは標準的なJIS配列。ただし、本体のサイズが小さいためかテンキーがないのはもちろんのこと、「ロ(ろ)」のキーが最下段にはみ出ていたのが特徴的だった。
簡易英文ワードプロセッサ(機能名TEXT)をROMで搭載。また電話機を取り付けることでデータ通信(機能名TELECOM)が可能だった。
電源はACアダプタ、Ni-Cd電池パックの他に、PC-2001と同様に単3乾電池4個でも稼働する点が特徴。
元は京セラのOEMで、日本国外ではTandy社のTRS-80 Model 100、OlivettiのM-10として発売された。またPC-8200シリーズとしても、PC-8201Aという日本国外仕様のモデルが発売されている。
仕様
[編集]- CPU 80C85(8085のCMOS版)2.4MHz
- ROM 標準32Kbytes(最大192KB,本体内に64Kbytesまで拡張可能)[1]
- RAM 標準16Kbytes(最大96KB,本体内に64Kbytesまで拡張可能)[1]
- 画面解像度 テキスト:40桁x8行、グラフィック:240x64ドット[1]
- BASIC N82-BASIC(N-BASICをベースとしてコマンドとステートメントの追加と削除が行われている)[2]
- 削除された主なコマンド、ステートメント(AUTO、CONSOLE、SWAP、TRON、TROFF、LINE、MON)[2]
- 追加された主なコマンド、ステートメント(BLOAD、BSAVE、EDIT、SOUND)[2]
- N-BASICで作成、テープにSAVEされたプログラムをN82-BASICでLOADすることができた(削除されたコマンドやステートメントは "*PC*" で置き換えられた[3])
- プログラムを修正する時、N82-BASICモードからEDITコマンドでTEXTモードに移行する必要がある。TEXTモードからN82-BASICモードに戻るには、F・10(ファンクションキー10)を押す[4]。
- インタフェース
- バッテリ駆動時間 マンガン電池使用時:6時間,アルカリ電池使用時:18時間
- バッテリバックアップ RAM16KB:26日以上,RAM64KB:7日以上[2]
- 外形寸法 300(W)×215(D)×35〜61(H)mm(キーボード側が35mm、ディスプレイ側が61mm)[1]
- 重量 1.7kg
主な周辺機器
[編集]- PC-8201-01 漢字ROMカートリッジ
- PC-8201-06 増設RAM(容量8KB)
- PC-8201-90 Ni-Cd電池パック
- 本体裏の乾電池用スペースに装着して使用
- 連続稼働時間5.5時間(常温時)
- PC-8205 ROMカートリッジ(容量128KB)
- PC-8206 RAMカートリッジ(容量32KB)
- PC-8233 FDD I/Fユニット
- 本体背面のFDコネクタに接続して使用
- 接続可能なミニディスクユニット(PC-8031-1W, PC-8032-1W, PC-80S31, PC-80S32, PC-8031-1V, PC-8031-FDI)[5]
- PC-8201とは19200bpsのシリアル転送。ディスクユニットはパラレル接続
- PC-8240 CRTアダプタ
- CPU: μPD780C-1(Z80-A互換)4MHz
- テキスト表示: 横40文字または80文字、縦20行または25行、モノクロまたはカラー8色
- グラフィック表示: 640×200ドットのモノクロ/アトリビュートカラー表示、または320×200ドットの4色カラー表示
- JIS第一水準漢字ROMボード(PC-8001mkII-01)を装着してCRTに漢字表示が可能
- PC-8246 バーコードリーダー
- PC-8268 パーソナルカプラ(バッテリ駆動、300bps、全二重)
- PC-8269 インテリジェントテレホン(モデム内蔵)
- PS82-1014 簡易日本語ワードプロセッサ(ROMカートリッジ)
- JIS第一水準漢字と編集ソフト(32KB ROM)と単漢字変換辞書(32KB ROM)を内蔵
- RAMファイル16KBを標準搭載。32KBに拡張可。
- テキストは全角文字12文字×3行表示で、画面の右側はレイアウト表示、最下行はファンクション表示と漢字変換に使用される
- 作成した文章データをモデム(RS-232C)経由で上位機種(文豪シリーズ)に転送が可能
PC-8201の姉妹機及び後継機
[編集]日本国外では、TRS-80 Model 100が姉妹機で、アーキテクチャはかなり近いものの、インターフェイスには違いがある。両者はどちらも、京セラがハードウェアの設計と製造を担当した。また、日本国ではPC-8201の直接の後継機は出なかったが、日本国外においてはPC-8300という後継機が出た。また、PC-8200シリーズの後継的シリーズとして、ROM-BASICを廃しCP/M80を搭載したPC-8401(Starlet)およびPC-8500という機種も出ている。
PC-8201やこれら後継機の開発の経験が、後のPC-98LT、さらには98NOTEの開発へと繋がっている。そのためか、PC-98LTのデザインはPC-8401や8500に酷似している。
脚注
[編集]- ^ a b c d e f ASCII 1983年2月号, p. 80.
- ^ a b c d ASCII 1983年2月号, p. 81.
- ^ ASCII 1983年2月号, p. 81-82.
- ^ ASCII 1983年2月号, p. 82.
- ^ ASCII 1983年9月号, p. 4.
参考文献
[編集]- 「ASCII 1983年2月号」第7巻第2号、株式会社アスキー出版、1983年2月1日。
- 「ASCII 1983年9月号」第7巻第9号、株式会社アスキー出版、1983年9月1日。