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AN/SPS-6

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
AN/SPS-6C
ギリシャ海軍の記念艦「ヴェロス」(旧米艦「チャレット」)の搭載機
種別 捜索レーダー
開発・運用史
開発国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
就役年 1948年 ※原型機
送信機
周波数 Lバンド(1,300±50 MHz
パルス (a) 4マイクロ, (b) 1マイクロ秒
パルス繰返数 (a) 150 pps, (b) 600 pps
送信尖頭電力 500 kW
アンテナ
形式 リフレクタアンテナ
直径・寸法 横5.18 m×縦2.44 m
アンテナ利得 27 dB
ビーム幅 横3.5°×縦30°
走査速度 2.5-15 rpm
探知性能
探知距離 70–140 nmi (130–260 km)
60–80 nmi (110–150 km) ※戦闘機に対し
探知高度 43,000 ft (13,000 m) ※-6A/Bの値
その他諸元
重量 アンテナ: 924 lb (419 kg) ※架台を含む
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AN/SPS-6は、ベンディックス社およびウェスティングハウス・エレクトリック社製の2次元レーダーアメリカ海軍において、第二次世界大戦後第1世代の対空捜索レーダーとして用いられたほか、広く同盟国にも輸出された。また、改良型のAN/SPS-12や、各国で開発された派生型についても本項で扱う。

AN/SPS-6

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本機は、従来用いられていたLバンドの対空捜索レーダーであるSR-3ないしSR-6レーダーの後継機種として開発された。開発に当たっては、地上用の可搬式対空レーダーであったAN/TPS-1英語版の影響を受けたとされている。アンテナとしては、1次放射源としてホーンアンテナを用いるパラボラアンテナが採用されている。また、モジュラー化設計によって、搭載艦に応じて構成の拡大・縮小が可能であり、初期においては、下記の3機種が存在した。

-6
アンテナ寸法は18 ft (5,500 mm)×5 ft (1,500 mm)、ビーム幅は3°×10°で、戦闘機に対して80 nmi (150 km)で探知できた。
-6A
アンテナ寸法は-6と同様であったがビーム幅は3°×20°で、戦闘機に対して70 nmi (130 km)で探知できた。
-6B
ビーム幅は3°×30°で、戦闘機に対して60 nmi (110 km)(FH-1に対してはその3分の1程度)、高度31,000 ft (9,400 m)のB-29に対して145 nmi (269 km)で探知できた。

原型機は1948年より海軍への引き渡しを開始され、同年9月に重巡洋艦メイコン」で試験に着手した。また、12月には駆逐艦ウィンスロー」および「ゼラース」、「マッセイ」のほか、空母サイパン」にも搭載された。量産機であるAN/SPS-6A/Bは1950年から1952年にかけて順次に引き渡しを開始しており、レーダーピケット艦(DER)やエセックス級の再建造型(SCB-27A)、インディペンデンス級対潜空母改装型(SCB-54)に搭載された。しかし、-6は25セット、-6Aは45セット、-6Bは110セットが生産されたところで、生産は、改良型の-6C~Eへ移行した。

AN/SPS-6C-Eは、より多数が生産された。-6Cは、-6Bに類似しているが、アンテナがより軽量化されており、従来型の1,000 lb (450 kg)に対して800 lb (360 kg)となっている。一方で、このためにショック耐性は低く、また、回転速度も落とされている。-6Dは-6Cを元にIFFを省いたもの、最終型にあたる-6Eはより改良された送信機を採用したものである。

搭載艦

AN/SPS-12

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AN/SPS-12は、SPS-6Cを元にした全面的な改良型である。アンテナは大きさ17 ft (5.2 m)×6 ft (1.8 m)、重量550 lb (250 kg)に軽量化されたほか、PRFは300ないし600ppsとなっている。レーダー覆域はSPS-6Bと同様であった。また、風速70 kn (36 m/s)までの環境下で運用できた。

初号機の引き渡しは1953年9月に行なわれた。また、その後、新しく強力な送信機(12MW)が導入可能となり、この場合、ジェット機に対して90 nmi (170 km)、最大で200 nmi (370 km)の探知距離を発揮できた。改良型としては、-12Bが一度は開発されたが導入中止となり、その後、送受信機にRCAパラメトリック増幅器を導入した-12Cが配備された。

AN/SPS-12シリーズは、アメリカ国内で139セットが生産されたほか、イタリアでもライセンス生産がなされた。また、AN/SPS-6とともに派生型の基盤となっている。

後継となるAN/SPS-28(AN/SPS-17の小型化版)は1957年より配備に入ったが、まもなく、より優れたAN/SPS-29によりとってかわられた。これらはいずれも、大戦中のCXAM等と同様のUHFバンド(Bバンド)を使用していた。

搭載艦

派生型

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OPS-1/2

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OPS-2レーダー

1950年代初頭、日本海上自衛隊では、はるかぜ型護衛艦(28DD)への搭載用として、MSA協定に基づく軍事援助計画(MAP)でAN/SPS-6を入手し、これをもとに国産化したOPS-1を開発して、初代あきづき型汎用護衛艦などに搭載していた。また、あやなみ型対潜護衛艦(30DDK)ではAN/SPS-12が搭載され、この技術ものちにOPS-1にバックフィットされた。さらにのちには、いすず型護衛艦(34DE)に搭載するため、送受信機は同一でアンテナを小型化したOPS-2も開発された。PV-2を目標とした場合の最大探知距離は、OPS-2で50海里 (93 km)であった。

1次防(昭和33~35年度/1958~1960年度)までの建造艦において、OPS-1は甲型警備艦(DD)、OPS-2は乙型警備艦(DE)に搭載されたが、2次防(昭和37~41年度/1962~1966年度)以降の艦ではP(B)バンドのOPS-11が搭載されるようになった。しかしその後、OPS-1/2を元にOPS-14が開発され、3次防(昭和42~46年度/1967~1971年度)以降の乙型警備艦・補助艦等および一部の汎用護衛艦(52-59DD)に搭載された。

搭載艦

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OPS-1
OPS-2

SPS-501

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カナダにおいて、AN/SPS-12の送信機と、オランダのシグナール(現在のタレス・ネーデルラント)社製のLW-03のアンテナを組み合わせて開発された。1967年に同国海軍の空母「ボナヴェンチャー」に搭載されて就役した。また、イロクォイ級ミサイル駆逐艦においても、1980年代後半から1990年代にかけてTRUMP改修が行なわれるまで搭載されていた。

脚注

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注釈

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  1. ^ a b c d e f g 一部艦が改装により搭載
  2. ^ カピターニ・ロマーニ級軽巡洋艦改修型
  3. ^ a b c マルコーニ製SPS-503に後日換装

出典

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参考文献

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  • Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. ISBN 9781557502629. https://books.google.co.jp/books?id=4S3h8j_NEmkC 
  • Norman Friedman (1981). Naval Radar. Conway Maritime Press. ISBN 9780851772387 
  • Sandy McClearn (2006年). “Canadian Navy RADAR Systems” (英語). 2012年10月13日閲覧。