風狸
中国の『本草綱目』、日本の鳥山石燕の『今昔百鬼拾遺』、根岸鎮衛の『耳嚢』、『和漢三才図会』など江戸時代の各種文献に名が見られる。
概要
[編集]風狸/風貍は他にも風母/猦𤝕(ふうぼ[3])、風生獣(ふうせいじゅう)、平猴(へいこう)などの異称がいくつかの古典にみつかり、『本草綱目』ではまとめて解説される。
外観はヒョウ柄で青色(緑色)とされ、名称の「貍」は斑点のあるヤマネコ類[注 1]を意味するが、他にも尾の無い(ごく短い)サルか、ウサギや似ていると表現される。大きさはこのヤマネコ(あるいは狸、貂)ほどとするのが主である。岩から岩、あるいは木から木へ飛翔して、果実を食う、あるいはクモを好んで食べるとされる。
嶺南地方の南部(現今の広西や広東)、および蜀(四川)の西部[注 2]に生息していたとされる。
ヒヨケザル(皮翼目)に同定する仮説があるが、ジャコウネコ科やスローロリス属を候補に挙げる学者もいる。
偽乳香の樹脂塊を食うと伝わる吉屈 (狤𤟎)は原典では別の動物だが、『本草綱目』では同じとみなす。
獲物を指せば必ず堕とせるという杖(草の茎)を持つとされる(§狩猟杖を参照)。また、叩けば簡単に絶命する(とみせかけるがじつは生きており)、風を受ければ蘇生するという。しかし石菖蒲(セキショウ)(の根)で鼻を塞ぐと死ぬとされる。また、尿はらい病に薬効があるなどと古い中国の本草学では主張されていた。
名称
[編集]『本草綱目』獸之二に風狸[4]、同、四庫全書本卷51に「風貍」と記されるが[5]、「風のヤマネコ」(斑点がある種)の意とみなされる[10]。江戸時代の『和漢三才図会』「
異称
[編集]「風貍」の名称は『虞衡志』にあるとされる[18]。
類書の『太平御覧』(10世紀)には「風母」の項があり[19]、『本草綱目』ではこれは風狸の異称とする[5][18]。「風母」については『南州異物志』(『廣州異物志』は誤写)に言及があり[21]、「平猴」の異名があると書かれる[22]。『玉篇・犬部』では猦𤝕とつくり、撃ち殺しても風を当てれば蘇生する有尾の獣と説明される[23]。
また『嶺南異物志』にある異称は風猩[19](ふうしょう/ふうじょう[?]; fengxing)が正しい[25]。
ほかにも風生獣(『[海内]十洲記』[26][27]、『抱朴子·内篇』[28])という別名において解説されている[29][11][30]。
香料を食らうという狤𤟎(きっくつ)という動物も同一であるとして『本草綱目』では風狸と習合させているが[29]、狤𤟎(吉屈とも表記[31])は、そもそも『酉陽雑俎』では風狸(巻15)[32]とは別項(巻16)[33]で語られており、外見の特徴も相容れないので分けて後述する(§吉屈)。
生息地
[編集]『本草綱目』[4]によれば、その生息地は
さらには蜀(四川)の西の
日本産の有無
[編集]『和漢三才図会』では、日本に風狸はいないとされているが[41]、『耳嚢』によれば日本でもときおり出くわすとし、"狸の一種"であるとみなしている[42]。
『広倭本草』(宝暦9/1759年刊)では狤𤟎(=風狸)を和名カマイタチだとみなし、能州(能登国)に多く出現する都市、民家で夜座っているとどこともなく現れ傷つけていくなどと記す。嶺南人による別称が風狸だとも付記している[43]。
外見
[編集]風狸の大きさは
風狸の外見については『本草綱目』では次の様にまとめている:見かけは尾無し(ごく尾短)で、小ぶりのサル似、目が赤く、体色は黄緑色と黒[48]で豹(ヒョウ)のような模様がある[注 9]。[49][50][6]。
風生獣は、青色の豹(ヒョウ)のごとしと原典では記されているが[51][52]、青色とは「暗い色(ダークカラー)」とも意訳される[45]。
サル似の部分の原典をみると、『桂海虞衡志』では[形]状が黄猿(黃猨)のごとしとしているが[53]、これはギボン(テナガザル)のことと現代解釈される[54]。『酉陽雑俎』では風狸/風貍は狙(というサル)のごとし、眉長で恥ずかしがり屋だという[32][55]。『南州異物志』では「風母獣」(平猴)は、猿に似て毛がなく赤目だという[56]。風狸は兎(ウサギ)似だとも記される[57]。
習性
[編集]風狸は兎に似て小さいと陳蔵器は言っており、風を孕んで飛び、木々を渡り、果物を食べるとしている[57][18]。風生獣が好んで餌とするのはクモとされる[34][58][注 10]。
さらには、昼は
捕獲・仮死・殺傷法
[編集]人に網で捕らえられると、恥しがるような素振りをし、憐れみを請うような仕草をする[62][60][61][63]。風狸類(風猩、風生獣)は打ち叩くとあっけなく死んでしまうが、風を口に含ませればたちまち生き返る[34][27][64]。また風生獣は、刀で斬っても刃が通らず、火で焼こうとしても焼けないが、骨や頭を砕かれると生き返ることはできないとされる[23][27][65][60][61]。
ただ、一説によれば石菖蒲(セキショウ)[注 12](の根[67])で鼻を塞いでも殺すことができるとされる[68][60]。
狩猟杖
[編集]南人の言い伝えによれば、風猩は常に一本の小さい杖をもっており、これで指すと(鳥や獣は[69])飛んだり走ったりできなくなる[34](身動き取れなくなる[69])。人がこの杖を得れば、指し示すだけで獲物が必ず取れる。しかしいざ網で風猩を捕えてみても杖がどこにも見当たらない(棄ててしまっている[69])。しかし風猩を百回杖せば(したたかに擊打せば[69])そのありかを白状するとのことである[34]。
異聞ではいささか内容が異なる。風貍/風狸がもっている「杖」は翳形草(という姿隠しの草)よりも入手が難しい、と名医(風疾術士)のあいだではいわれる。この「杖」も実は草の茎を長さ一尺強ばかりに風猩が手折って使うもので(常に持っているのではない)、その現場をおさえるために人間は綱を樹と樹のあいだに張り木のうろに三日ほど隠れて機会をうかがう。風狸は、樹上に鳥が集まっているのをみつけると、草の茎で指して墜落させ、これを食らう。そこを人間が捕まえようとするが、人が現れると風狸は草を食べようとするか、まにあわなければ放ってしまう。ので、数百回打ち叩いて責め、それを拾わせる[32][12]。
江戸時代の『耳嚢』にも言及されるが、ある者が風狸からその草を奪い、鳥を捕らえようとして木に登り、鳥に向かって草をかざしたところ、鳥とともにその者も木から落ちてしまったというエピソードを伝える[注 13][42][44]。
薬効
[編集]脳を菊花と合えて十斤ほど服すと五百歳[27][45]の長寿が得られると主張されているが[71]、これは仙人が能く飛ぶにことにこじつけている(つまり飛ぶ獣を食せば仙人の長寿を得られる願望)と南方熊楠は説明する[61]。
尿も「大風疾」など[72]、「諸風」に効くと書かれているが[73]、「大風」(らい病[61][54][74])等は中国では風によって起こされると信じられていたため、諸風の獣の尿に有効性が求められたのだと解説される[61]。
尿は乳のようで、入手困難であるが、飼育すれば得られると記述される[18]
吉屈
[編集]狤𤟎(吉屈[31]、きっくつ[18]、けっくつ[43])は『酉陽雑俎』によれば、好んで薫陸香(偽乳香)も食べるというが[33][75][47][76][注 14]、そんなものを食べるというのは風説であろうと評される[31]。
大きいものでは十斤あり、すがたは獺(カワウソ)に似るという。鼻から尾まで幅一寸ほどの青毛(緑毛)の筋がはしっており、毛の一本一本は3,4分(0.3–0.4寸)ほどの毛深さである[12][33][77][47][6]。
実在動物の同定
[編集]ヒヨケザル
[編集]南方熊楠は、コウモリに似た(近縁類と考えられ[78]たこともかつてはある)コルゴ[注 15]すなわちヒヨケザル(皮翼目)のことであろう、と考察した[61]。コウモリのように毛なしでツルツルな翅膜と違い、コルゴの被膜は上面だけは毛深い[61]。この説は妖怪関連の近著でも紹介される[78][44]。
ジャコウネコ科
[編集]『本草綱目』(鈴木訳)では合致する動物の同定はされていないが[79]、ジャコウネコ類という木村重の見解を記載する。厳密にはジャコウネコ科 Paradoxurus属(P. hermaphroditus syn. P. musanga)のアジアパームシベットに同定している[注 16][37]。
またジャコウネコ科ハクビシン(Paguma larvata; 中国名:果子狸)説もみられる[80]。
スローロリス属
[編集]清代に宮廷画家を務めたジッヘルバルト(中国名:艾啓蒙〔がい・けいもう〕)による一幅の絵、『風猩図』[注 17]があるが(右図参照)、写実的であり、おそらくスローロリス類を描いたものとみられる[81]。
風貍がスローロリスという説は、その漢名ランホウ(Lan Hou 树懒; 懒猴)をもちいてB・E・リード[注 18]の本草参考書の一覧表[注 19]にも記述される[注 20][82][83]。
風狸/風貍がスローロリス属(懶猴属)Nycticebus であるという意見は本邦の学術論文にもみえる[注 21][84]。
注釈
[編集]- ^ 分類学上ベンガルヤマネコ属であるが、イリオモテヤマネコやツシマヤマネコも同属である。
- ^ 旧・康定県や現今の阿壩(アバ)県)。
- ^ 参考まで、『楚辞』「九歌」の「山鬼」において、女神が「文狸」をしたがえるが、「狸」でなく正字は「貍」で[16]、ここは「まだらの山猫」と説明される[17]。
- ^ 邕州の首領の寧洄が「風猩」を得て巨万の富を築いたという記述もある[34]。
- ^ 嶺南は広西・広東・香港などを含む地方。
- ^ 邕州も嶺南地方の一部。邕州を含む4つの(少数民族の[35])州に『本草綱目』禽部「秦吉了 qinjialo」(別名 結遼鳥 jieliao niao)という鳥がいる[36]。
- ^ 蜀西(Shu xi)ならば四川の西方だが、「蜀西徼外」(Shu xi jiao wai)もまた地名であり、四川西部の特に康定県(康定縣)と阿壩県を指すとされる[39]。
- ^ 『本草綱目』の貍を狸(タヌキ)[11]または貍大を狸の大きさに充てる[30][44]のは厳密には誤りであると既に指摘したが、版本によっては"大如狸"と刷られているようである。また『抱朴子』にも"大如狸"とあり[23]、" as big as a badger"と英訳される[45]。
- ^ 鼻から尾の一筋の毛あるという異聞、じつは§狤𤟎の描写であるが、『本草綱目』では習合している。
- ^ 薫陸香という香料は、風狸でなく§吉屈の好物とされるもの。
- ^ 蝟だが[34][53]、"螬(すくもむし)"と『和漢三才図会』では読む[11]。ジムシのこと。
- ^ 菖蒲(しょうぶ)の近似種。ただし「石上」に生える「菖蒲(ショウブ)」ともつくる(「風生獣」『抱朴子・内篇』[23][45]、「風生獣」『[海内]十洲記』[27])。
- ^ 『耳嚢』の作者がどの漢籍から異聞を得たのか分からないが、『捜神記』に風狸の記述があるというのは虚偽である(長谷川注)[70]。
- ^ 薫陸香が"松に似た香木の香"と解説されているが[30]、香木でなく樹脂の塊であって、それが琥珀(松など針葉樹液の化石)に酷似するという話である。また、日本国内では久慈などに産する琥珀が代用品として香料に使われることもあるという。
- ^ colugo
- ^ 鈴木訳の欄外註。 Paradoxurus musanga (和名 キノボリザル)としているが、現今分類学の統一学名は Paradoxurus hermaphroditus であり、マレー語に由来する名称"musang"もこの種にあたる。
- ^ 繁字:《風猩圖》;簡字:《风猩图》。
- ^ バーナード・エムス・リード(Bernard Emms Read、中国名:伊博恩、1887–1949)。
- ^ Feifel は本書を"RMM" "Read's Materia Medica"と略す。
- ^ ただしリードは英語の俗名を"slow loris"とせず、中国名(「懶猴」)を直訳して"sloth monkey"(ナマケモノ=ザルの意)とした。また、Loris属の一種(Loris sp.)だとリードは併記しているが、この分類はいまでは刷新されており、スローロリスは Nycticebus 属に配される。
- ^ ただし杤尾論文で「蜂猴属」としているのは誤記であり、蜂猴属すなわちロリス属 Loris spp.は、現在の分類学上はスローロリス属とは別属である。
出典
[編集]- 脚注
- ^ 鳥山石燕「風狸(ふうり)」『百鬼夜行拾遺(今昔百鬼拾遺) 3巻』 中、長野屋勘吉、1805年 。「風によりて巌をかけり木にのぼり、そのはやき事飛鳥の如し」
- ^ 志田義秀; 佐伯常麿, eds (1909). “ふうぼ【風母】”. 日本類語大辞典. 晴光館. p. 1323 . "支那に住し猿に似たる獣"
- ^ 読み仮名は鈴木訳に欠けるが、『日本類語大辞典』で確認[2]。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 李時珍 (1596), “獸之二 風狸” (中国語), 本草綱目, ウィキソースより閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 李時珍 (1782), “卷51風貍” (中国語), 本草綱目 (四庫全書本), ウィキソースより閲覧。
- ^ a b c d e f g h i Li Shizhen Paul U. Unschuld訳 (2021). “Four-legged Animals II. 24 Feng li wind leopard cat”. Ben Cao Gang Mu, Volume IX: Fowls, Domestic and Wild Animals, Human Substances. Univ of California Press. pp. 920–922. ISBN 9780520379923
- ^ a b c d Li Shizhen Luo Xiwen訳 (2003). “Drug 51-24 Fengli”. Compendium of Materia Medica: Bencao Gangmu. 6. Foreign Languages Press. pp. 4079–4080. ISBN 9787119032603
- ^ a b 鈴木訳 (1931), p. 346.
- ^ 南満洲鉄道株式会社北満経済調査所「ヤマネコ Prionaelurus euptilura microtis (A. Milne-Edwards), 1871」『北満野生哺乳類誌』興亜書院、1939年 。
- ^ 英訳では"wind leopard cat"で[6][7]、すなわち貍をベンガルヤマネコに同定する。鈴木訳では「貍」の項でmicrotis種をLynx microtidと誤記しているが[8]、これも同種の亜種である。すなわちベンガルヤマネコ(Prionailurus bengalensis)の別名発表のひとつが P. euptilura だったが、microtis はその亜種[9]。
- ^ a b c d e 寺島良安「三十八 獣類:風貍」『和漢三才図会 : 105巻首1巻尾1巻』《(全81冊中)第26冊》1712年、巻之38、21葉表 。
- ^ a b c d Duan Chengshi Chiara Bocci訳 (2021). “The jiqu 狤𤟎: “the one that bows to good fortune”?”. On Feathers and Furs: The Animal Section in Duan Chengshi's 段成式 Youyang zazu 酉陽雜俎 (ca. 853). An annotated translation. Harrassowitz Verlag. pp. 145–152. ISBN 9780520379923. JSTOR j.ctv2bfhhkv
- ^ 既述したように『本草綱目』英訳では"wind leopard cat"で[6][7](「風のベンガルヤマネコ」)である。なお『酉陽雜俎』英訳では"wind-li"として[12]、「貍」の同定をあえて行っていないが、タヌキのの定訳である"badger", "raccoon dog"とはしていない。
- ^ 『和漢三才図会』巻三十八 獣類:狸Kan-no-38. Beasts:貍 たぬき"
- ^ 『和漢三才図会』では前項に「貍(たぬき)を置くが[14]これがそもそも誤りで、『本草綱目』の前項「貍」の和名は「やまねこ」とされている[8]。
- ^ “九歌”. 楚辭. 国訳漢文大成 文学部 第一巻. 国民文庫刊行会. (1922). p. 131
- ^ 松枝茂夫 編「山鬼」『中国名視選』 上〈岩波文庫 赤33-1〉、1997年、121頁。
- ^ a b c d e f g h 鈴木訳 (1931), p. 352.
- ^ a b c d “卷九百八.獸部二十. 風母” (中国語), 太平御覽, (c. 980), ウィキソースより閲覧。
- ^ a b Zheng, Jinsheng; Kirk, Nalini; Buell, Paul D.; Unschuld, Paul Ulrich, eds. (2018). "Guang zhou yi wu zhi /Gui hai Yu heng zhi". Dictionary of the Ben Cao Gang Mu, Volume 3: Persons and Literary Sources. University of California Press. pp. 158, 159. ISBN 9780520291973。
- ^ 『本草綱目』では『廣州異物志』に「風母」と記すとされるが[5][18]、これは『太平御覧』の股引きなのであって[20]、現の『太平御覧』には「南州異物記」とみえる[19](南州異物志に訂正[20])。
- ^ 『太平御覧』引『南州異物記(南州異物志)』[19]。
- ^ a b c d e f 國立編譯館 中華叢書編審委員會; 中華文化復興運動總會, eds (2001). “仙藥篇第11”. 抱朴子內篇今註今譯. 陳飛龍 註訳 陳飛龍. 臺灣商務印書館. p. 433. ISBN 9789570516807
- ^ 李時珍 (2016). “風狸《拾遺》”. In 胡承龍 Hu Chenglong. The Ben Cao Gang Mu: Chinese Edition. Univ of California Press. pp. 1469–1470. ISBN 978-0-520-95974-3
- ^ 『本草綱目』の原書では『嶺南異物志』を引いて「風母」だが[5][18]、胡承龍(2016年)編カリフォルニア大学出版本では"風猩"に訂正される[24](『太平御覧』引きに合わせている)。
- ^ Zheng et al. (2018) "Shi zhou ji", pp. 920–922
- ^ a b c d e f g 『[海内]十洲記』「風生獣」について(『太平御覧』引)。
- ^ a b 『抱朴子·内篇』「風生獣」について(『太平御覧』引)。
- ^ a b 鈴木訳 (1931), pp. 351–352.
- ^ a b c d 寺島良安 著、島田勇雄、竹島淳夫、樋口元巳訳注 編『和漢三才図会』 6巻、平凡社〈東洋文庫〉、1987年、93頁。ISBN 978-4-582-80466-9 。
- ^ a b c 山田憲太郎「乳香・没薬小史「諸蕃志」の記述を中心にして」『名古屋学院大学論集: 人文自然科学篇』第10巻第2号、1974年、76–77頁。
- ^ a b c 段成式 (1781), “卷15 南中有獸名風狸..” (中国語), 酉陽雜爼 (四庫全書本), ウィキソースより閲覧。
- ^ a b c 段成式 (1781), “卷16 狤𤟎徼外勃樊州熏陸香所出也如楓脂狤𤟎好啖..” (中国語), 酉陽雜爼 (四庫全書本), ウィキソースより閲覧。
- ^ a b c d e f g 『嶺南異物志』「風猩」について(『太平御覧』引)。
- ^ Luo 訳 (2003), p. 3839
- ^ Unschuld 訳 (2021) IXp. 311
- ^ a b c d 鈴木訳 (1931), p. 351.
- ^ "outside of Xi jiao in Shu",[6]; "outside Xijiao in Sichuan"[7]。
- ^ Zheng et al. (2018), 蜀西Shu xi, 蜀西徼外 Shu xi jiao wai . p. 281
- ^ "風狸生邕州以南... 其獸生嶺南及蜀西徼外山林中"[4][5]。
- ^ "未聞在于本朝"[11]。"風狸は嶺南(広東・広西地方)の山林中に多くいて、まだわが国にいるとは聞かない"[30]。
- ^ a b 根岸鎮衛 著「風狸の事」、長谷川強校注 編『耳嚢』 下、岩波書店〈岩波文庫〉、1991年、220頁。ISBN 978-4-00-302613-7 。; 平凡社、1972年、133頁
- ^ a b 直海元周「狤𤟎 キツクツ」『広倭本草 10巻別録2巻 [6]』 別録下、永田調兵、1759年、22–23頁 。
- ^ a b c 宮本幸枝「第4章 空と海の妖怪 §風狸」『日本の妖怪FILE』学研、2013年、116–117頁。ISBN 978-4-054056-63-3。
- ^ a b c d e f g Feifel, Eugene, ed (1946). “Pao-P'u Tzu 抱朴子 Nei-P'ien 內篇 Chapter XI”. Monumenta Serica 華裔學志 11: 13–14. doi:10.1080/02549948.1946.11744875. JSTOR 40725995 .
- ^ "其大如狸如獺"[4][5]。
- ^ a b c d 鈴木訳 (1931), pp. 352–353.
- ^ 鈴木訳では原文に沿って"色は靑黃で黑く"としているが[18]、今どき「青黄色」などという日本人はいないだろうから、英訳の"Their color is greenish-yellow and black"に従うことにする[6]。
- ^ "其目赤 其尾短如無 其色青黃而黑 其文如豹 或云一身無毛 惟自鼻至尾一道有青毛 廣寸許 長三四分"[4][5]。
- ^ "猿猴のやうで小さく、目は赤く、尾は短くして無いかと思ふほどである。色は、その文は豹のやうだ。"[47]
- ^ 『[海内]十洲記』[27]。
- ^ 『抱朴子·内篇』[23][45]。
- ^ a b c d 范成大(中国語)『桂海虞衡志』 。, ¶75.
- ^ a b c Fan Chengdai James M. Hargett訳 (2021). “Quadrupeds. § Wind cats [Fengli”]. Treatises of the Supervisor and Guardian of the Cinnamon Sea: The Natural World and Material Culture of Twelfth-Century China. University of Washington PressVerlag. pp. 78–79. ISBN 9780295802060
- ^ (英訳)"In the south lives an animal called wind-li. It looks like a ju-monkey, it has long eyebrows and it likes to shy away".[12]
- ^ a b 『南州異物志 (Nán zhōu yìwù zhì)』(即ち『太平御覧』引き『南州異物記』。『本草綱目』で『廣州異物志』と呼ぶ)
- ^ a b 陳蔵器『本草拾遺』?(『本草綱目』引)"藏器曰風貍生邕州以南似兎而短棲息高樹上候風而吹至他樹食果子其尿如乳甚難得人取養之乃可得"[4][5]。
- ^ "其性食蜘蛛"[4][5]。
- ^ "晝則踡伏 不動如蝟 夜則因風騰躍甚捷 越巖過樹 如鳥飛空中[5]。または「蜷伏」とつくる[4]。
- ^ a b c d e 鈴木訳 (1931), p. 353.
- ^ a b c d e f g h 南方 (1920)「十二支考・猴」南方 (1971), p. 354。
- ^ "人網得之 見人則如羞而叩頭乞憐之態"[4][5]。
- ^ "若行逢人,便叩頭,狀如懼罪自乞"という表現が『南州異物記』(『太平御覧』引き)にみえる[56]。
- ^ "人撾擊之 倏然死矣 以口向風[4][5]。
- ^ "須臾複活 惟碎其骨 破其腦乃死 一云刀斫不入 火焚不焦 打之如皮囊 雖鐵擊其頭破 得風複起"[4][5]。
- ^ 方以智「風生獸」『物理小識: 十二卷』寧靜堂、1884年、巻十 十二裏頁 。
- ^ 原文にはないが、英訳で"[root]"[6]、"rhizome"[7]と補足される。清代の方以智が"十洲云以石菖蒲根塞鼻乃死"として「根」と補完している[66]。
- ^ "惟石菖蒲塞其鼻 即死也"[4][5]。
- ^ a b c d 『嶺南異物志』(『本草綱目』引き) 鈴木訳 (1931), p. 353
- ^ 藪野直史 (2015年3月17日). “耳嚢 巻之十 風狸の事”. 鬼火 Le feu follet. 2023年1月24日閲覧。
- ^ 『[海内]十洲記』(『本草綱目』引)
- ^ 『桂海虞衡志』[53][54]、『虞衡志』(『本草綱目』引)。鈴木訳 (1931), p. 354。
- ^ 陳藏器(『本草綱目』引)。鈴木訳 (1931), p. 354
- ^ Unschuld訳 (2021), p. 355.
- ^ 『本草綱目』"亦啖薰陸香"[4][5]。
- ^ 英訳ではマスティックすなわち「洋乳香」を充てている[6]。
- ^ 『本草綱目』にも以下のように「或いは」と断って風狸の容姿として転載される:"或云一身無毛 惟自鼻至尾一道有青毛 廣寸許 長三四分 其尿如乳汁"[4][5]が、"尿は乳液のようだという"の部分は『酉陽雑俎』にみえない。
- ^ a b 中野美代子『孫悟空の誕生: サルの民話学と「西遊記」』岩波書店、2002年、265頁。ISBN 9784006020507 。
- ^ 学名不詳と記される[37]。
- ^ 曾雄生「中國歷史上的果子狸」『九州學林』第2巻第3号、2004年、230頁。
- ^ 「zh:一幅《风猩图》,画中的动物疑似穿越[古代了,是乾隆御用画师的作品]」『Tencent 腾讯网』2020年3月9日 。
- ^ Feifel訳、注70) [45]
- ^ Chinese Materia Medica. Peking Natural History Bulletin. (1931). p. 3 (#373)
- ^ 杤尾武「滇金絲猴を求めて : 雲南の旅」『成城国文学』第20巻、成城大学、2004年3月、108頁、CRID 1050001337472195968。
- 参照文献
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- 南方熊楠「十二支考(7):猴に関する民俗と伝説」『太陽』第26巻、第1,2,5,,13,14号、1920年。. 青空文庫 No.2539