石摺絵
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石摺絵(いしずりえ)は、日本における浮世絵版画の一形態である。
概要
[編集]拓本のように、背景を墨地に、線を白抜きにして表現した版画。拓本を「石摺」とも呼ぶことに由来する[1]。墨摺絵の白黒が反転した図になる。篆刻での「白文」にあたる。
紅摺絵と同時期の、延享年間(1744-48年)に創始されたと考えられる[2][1]。創始者は奥村政信[3]もしくは西村重長とされる[4]。
錦絵が登場した後(1765年(明和2年)以降)でも、葛飾北斎・歌川広重[5][1]の作例がある。
浮世絵師ではないが、伊藤若冲による、淀川下りの情景を図した「乗興舟(じょうきょうしゅう)」(1767年(寛文7年)、一巻)は、「石摺絵」に見えるが、版木に湿した紙をあて、その上から墨を付けたタンポで叩く、拓本同様の制作法が取られており、「拓版画」と呼ばれる[6]。
図版
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奥村政信「許由洗耳 ・巣父牽牛」、1750年頃、メトロポリタン美術館蔵。『荘子』『史記』等に記される逸話で、隠遁する許由と巣父は、政(まつりごと)に関わるのを嫌い、仕官の申し出を聞いた許由は、穢れた耳を滝で洗い、巣父はその水を牛に飲ませなかった。
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葛飾北斎『図入水滸伝』、1805-35年、ロサンゼルス郡美術館蔵。
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歌川広重「花筏」1850年頃、アメリカ議会図書館蔵。
出典
[編集]参考文献
[編集]- 菊池貞夫、ほか「石摺絵」『原色浮世絵大百科事典3 様式・彫摺・版元』大修館書店、1982年4月15日、16頁。
- 藤澤紫 著「浮世絵版画における摺りの変遷とその顔料」、小林忠・大久保純一編 編『浮世絵の鑑賞基礎知識』至文堂、1994年5月20日、141-145頁。ISBN 978-4-7843-0150-8。
- 藤澤紫 著「面を持つ遊女と禿・簾の下で酒を飲む二人の遊女」、東京都江戸東京博物館・日本経済新聞社編 編『錦絵の誕生-江戸庶民文化の開花』1996年2月20日、129頁。
- 武藤純子 著「石摺絵」、国際浮世絵学会編 編『浮世絵大事典』東京堂出版、2008年6月30日、21頁。ISBN 978-4-4901-0720-3。
- 松岡まり江 著「初期浮世絵展 絵師解説」、田辺昌子編 編『初期浮世絵展-版の力・筆の力』千葉市美術館、2016年1月9日、274-277頁。
- 村田隆志 著「乗興舟」、浅野研究所ほか編 編『奇想の系譜展-江戸絵画ミラクルワールド』日本経済新聞社ほか、2019年2月9日、261頁。ISBN 978-4-907243-08-1。