宗教
なお広辞苑では、「神または何らかの超越的絶対者あるいは神聖なものに関する信仰・行事」としている[4]。
信徒数と信徒分布
[編集]世界の宗教の信者数は、キリスト教約20億人(33.0%)、イスラム教約11億9,000万人(19.6%)、ヒンドゥー教約8億1,000万人(13.4%)、仏教約3億6,000万人(5.9%)、シク教約3,000万人、ユダヤ教約1,400万人(0.2%)、その他の宗教約9億1,000万人(15.0%)、無宗教約7億7,000万人(12.7%)である[注 1]。
分類
[編集]19世紀から20世紀にかけて、比較宗教学の発展に伴い世界宗教という分類が定義された。たとえば、下記は宗教学の学者による分類の一例である。
- 世界宗教
- 文化の境界を越え(トランスカルチュレーション)、多くの国において信仰される宗教
- 民族宗教、土着宗教
- 世界宗教と比べてより小さく、特定の文化あるいは特定の国で信仰される宗教
- 新宗教
- 世界宗教、土着宗教と比べてより新しく形成した宗教[6]
キリスト教、イスラム教、仏教は人種や民族、文化圏の枠を超え広範な人々に広まっており、一般に世界宗教とよばれる[7]。また、ユダヤ教や神道、ヒンドゥー教[注 2]など特定の地域や民族にのみ信仰される宗教は民族宗教と呼ばれる[8]。
宗教を普遍宗教(universal religion: 世界中に信仰されることを望み、積極的に帰依を求める宗教)と民族宗教(ethnic religion: 特定の民族にのみ信仰され、積極的に帰依を求めない宗教)とに分類する学者もいる[9]。なお「教義にかかわらず全ての宗教の表現形式が特定の文化に由来する」との理由を挙げて「普遍宗教と民族宗教に分ける分類は正しくない」と主張する学者もいる[10][要ページ番号][11][要ページ番号][12][要ページ番号]。
神の数によって分類する方法では、一神教と多神教の2つの区分が存在し、キリスト教・イスラム教・ユダヤ教が一神教、ヒンドゥー教や神道は多神教に属する。こうした神を有する有神的宗教のほか、仏教のように本来神を持たなかった無神的宗教も存在する[13]。
それ以外の分類:
語源
[編集]日本語の「宗教」という語は、仏教学者の中村元によると、仏教に由来する。仏教において、「宗の教え」、つまり、究極の原理や真理を意味する「宗」に関する「教え」を意味しており、仏教の下位概念として宗教が存在していた[14]。幕末期に英語の Religion の訳語が必要となって、今でいう「宗教」一般をさす語として採用され、明治初期に広まったとされている。宗教は、キリスト教をイメージする用語として受容され、日本人の宗教のイメージに大きな影響を及ぼした[14]。
原語の英単語 Religion は、ラテン語の religio から派生したものである。 religio は、「ふたたび」という意味の接頭辞 re- と「結びつける」という意味の ligare の組み合わせであり、「再び結びつける」という意味で、そこから「神と人を再び結びつけること」、と理解されていた[注 3]。
磯前順一によれば[17][要ページ番号]、Religion の語が最初に翻訳されたのは日米修好通商条約(1858年)においてであり、訳語には「宗旨」や「宗法」の語があてられた。他にもそれに続く幕末から明治初頭にかけての間にもちいられた訳語として、「宗教」、「宗門」、「宗旨法教」、「法教」、「教門」、「神道」、「聖道」などが確認できるとする。このうち、「宗旨」、「宗門」など宗教的な実践を含んだ語は「教法」、「聖道」など思想や教義の意味合いが強い語よりも一般に広くもちいられており、それは多くの日本人にとって宗教が実践と深く結びついたものであったことに対応する。「宗教」の語は、実践よりも教義の意味合いが強い語だが、磯前の説ではそのような訳語が最終的に定着することになった背景には、日本の西洋化の過程で行われた外交折衝や、エリート層や知識人の価値観の西欧化などがあるとされる。
「宗教」の語は、1869年にドイツ北部連邦との間に交わされた修好通商条約第4条に記されていた Religionsübung の訳語に選ばれたことから定着したとされる[注 4][15]。また、多くの日本人によって「宗教」という語が 現在のように〈宗教一般〉の意味でもちいられるようになったのは、1884年(明治17年)に出版された辞書『改定増補哲学字彙』(井上哲次郎)に掲載されてからだともされている。
定義
[編集]「宗教とは何か」という問いに対して、宗教者、哲学者、宗教学者などによって非常に多数の宗教の定義が試みられてきた[18]。「宗教の定義は宗教学者の数ほどもある」といわれる[19][1]。代表的なものだけを取り上げただけでもかなりの数になり[20]、例えば、ジェームズ・リューバの著書[21]の付録には48の定義およびそれに関するコメントが書かれており、日本の文部省宗務課がかつて作成した「宗教定義集」[22]でも104の定義が挙げられていて[20]、その気になればさらに集めることも難しくはない[20]という。
ジェームズ・リューバによる定義の分類
[編集]アメリカの心理学者であるジェームズ・リューバは宗教についての多数の定義を三つのグループに分類している。すなわち、主知的(intellectualistic)な観点からの定義、主情的(affectivistic)な観点からの定義、主意的あるいは実践的(voluntaristic or practical)な観点からの定義の3つである[20]。
- 主知的な観点からの定義
- 代表例で古典的な定義の例としてはマックス・ミューラーによる「無限なるものを認知する心の能力」が挙げられる。比較的近年のそれでは、クリフォード・ギアツによる「存在の一般的秩序に関する概念の体系化」がある。
- 主情的な観点からの定義
- シュライエルマッハー(F.E.D.)による「ひたすらなる依存感情」。マレット(Marett, R.R.)なども他の学者などにみられる合理主義な観点を批判しつつ、宗教の原型を情緒主義(emotionalism)から論じた[20]という。
- 主意的あるいは実践的な観点からの定義
- C.P.ティーレによる「人間の原初的、無意識的、生得的な無限感覚」というものがある。
『世界宗教事典』では上記のリューバの分類・分析を踏まえ、また、宗教を成立させている基本要素が超絶的ないし超越的存在(神、仏、法、原理、道、霊など)をみとめる特定の観念であることを踏まえつつ、宗教とは人間の力や自然の力を超えた存在を中心とする観念であり、その観念体系に基づく教義、儀礼、施設、組織などをそなえた社会集団である[23]とまとめている。
- 線引きの難しさ
第三者から宗教(団体)だと見なされているが、組織自体が宗教(団体)ではない、と主張する例もある。
- 阿満利麿は「教祖・経典・教団」の3要素から成り立っている宗教を「創唱宗教」と定義した。東海林克也はこれを援用して「教祖・経典・教団」から成り立ち1つの神(=超越者)を信じること」と定義し、その延長上で靖国神社奉賛会では『宗教とは「教祖・教典・教義」の三要素を具備していなければならない』として「この定義から外れる神道は宗教ではない」という主張を展開していた時期がある。
- 「実践倫理宏正会」や「倫理研究所」、「モラロジー研究所」、「調和道協会」などは自らを「宗教ではない」としている。(そして、宗教法人格も取得していない。実践倫理宏正会は一般社団法人、モラロジー研究所は公益財団法人、調和道協会は公益社団法人となっている)
- 「崇教真光」、「世界真光文明教団」、「道ひらき」などは、(宗教法人でありながら)「宗教ではない」としている。
なお宗教に含まれる要素(あるいは要件)については、論者ごと、文献ごとに挙げているものがかなり異なる。
- Jamesの文献が挙げているのは「神性[24]:
- Durkheimの文献が挙げているのは「聖なるもの[25]」
- Tillichの文献が挙げているのは「信仰[26]」
- Vergoteの文献が挙げているのは「超自然的な存在[27]」
- Paul James and Peter Mandavilleの文献では「残りの人生に規範と力を与えてくれる、ある種の究極・超越なもの」[28]
要素
[編集]ある教えを基として信者が増大すると、やがて教団が形成される。各教団は信仰の場として寺院や教会、神社やモスクといった宗教施設を所持し、宗教に専念する聖職者を抱え、教団内部ではしばしば厳格な階梯制が導入される[29]。
また、教団と信徒は宗教の維持と拡大のため、布教を行う。布教は信徒の家庭内において親から子へ教化がなされるほか、外部の人間に積極的に布教を行い信徒数を増加させていく宗教も存在する[30]。
教団内部では初期の諸伝承を整理統合して矛盾のない形にまとめ、宗教の規範となる基本文書が編纂される。これは教典や経典、聖典と呼ばれ、教義を発展させるための根幹となり、この正典の解釈を巡っていくつかの宗教では神学が成長していった[31]。一方で正典の成立をもってしても異なる解釈を止めることはできず、宗教内においてさまざまな宗派が成立していった[31]。大宗教の内部においていくつかの宗派が並立することは珍しくない。例として、キリスト教においては2世紀から4世紀にかけて教義が確立したのち[32]、1054年の大シスマによって東方正教会とローマ・カトリック教会が分離し[33]、さらに1517年にマルティン・ルターによって『95ヶ条の論題』が発表されたことをきっかけにカトリックからプロテスタント諸派が相次いで分離した[34]。仏教においては、上座部仏教と大乗仏教の2つが有力となった[35]。イスラム教においても、正統カリフ4代のアリーの子孫のみをカリフと認めるシーア派が成立し、多数派であるスンナ派との2大宗派を形成している[36]。
このほか、さまざまな宗教儀礼が整えられ[37]、礼拝や瞑想、カトリックの告解といった信仰実践が行われる[38]。各宗教はそれぞれ独自の祭を執り行うが、多くの場合こうした祭は厳粛な祭儀だけではなく、信徒が賑やかに浮かれ騒ぐ祝祭の側面を併せ持つ[39]。各宗教の聖地は神聖化され、信徒はしばしば長距離の巡礼を行って聖域へと参詣する[40]。
宗教の歴史
[編集]一覧
[編集]影響
[編集]政治
[編集]古代には宗教と政治は分化しておらず、祭政一致の体制を取る国家が多く存在した。日本語において祭祀と政治がともに「まつりごと」と呼ばれるのも、その名残りのひとつである[41]。やがて宗教と政治は分離していき、近代に入るとヨーロッパにおいて信教の自由とともに政教分離原則が確立され、国家と宗教とは明確に分離された。ただし、政教分離の扱いは各国によって異なっており、国教を指定するものの各宗教の信仰を保証し平等に扱うイギリスのような緩やかな分離から、政府と宗教を厳格に分離するフランスのライシテまで幅がある[42]。また、政教分離は宗教団体の政治関与を否定するものとは必ずしもいえないため、特定の宗教団体が政治家や政党を支援したり、政治運動を行うことは各国において広く見られる。宗教を基盤とした政治思想も存在し、例えばヨーロッパのカトリック圏においては19世紀以降国家と教会の間の分離が進み、これに対抗する形でキリスト教民主主義の成立が促され、多くの政党が生まれた[43]。こうした宗教を基盤とする政党は、宗教政党と総称される[44]。
一方、宗教と政治が分離されておらず、政教一致に近い国家もいまだいくつかは存在している。ローマ・カトリック教会は宗教機関であるが、1929年のラテラノ条約においてイタリア王国からサン・ピエトロ大聖堂周辺の領有を認められ[45]、ローマ教皇を元首とするバチカン市国という独立主権国家を保持している[46]。サウジアラビアはイスラム教の一派であるワッハーブ派の宗教運動のなかで成立したためイスラム主義の影響が強く、1932年の建国以来イスラーム法に則った統治がおこなわれている[47]。1979年にはイランにおいてイラン革命が勃発し、イスラム共和制に基づくイラン・イスラム共和国を成立させた。イランは一応の民主制度は整っているものの、国の元首である最高指導者は宗教法学者しか就任できないなど宗教の権力が非常に強く、一種の政教一致体制と見なされている[48][49]。
さらに1970年代以降、宗教の脱政治化の流れが止まり、逆に宗教の側から政治へ積極的な関与を行い、厳格な宗教を基盤とした社会を構築しようとする動きが盛んとなった。こうした原理主義的な動きはキリスト教・イスラム教・ユダヤ教・仏教・シク教など各宗教に見られる[50]。なかでもアメリカでは、1970年代から宗教右派の勢力が拡大をはじめ[51]、1990年代に入るとアメリカ南部を中心にキリスト教原理主義の動きはさらに活発になった[52]。イスラム教圏においても、イスラム法の導入をはじめとするイスラーム国家の樹立を目指すイスラーム主義の動きが強まっている[53]。
社会
[編集]かつて宗教は政治や経済、科学などさまざまなものと融合していたが分化が進み、19世紀には明確に分離した[54]。これにともない宗教の社会的影響は低下し、社会そのものも世俗化した。特に共産主義国においては宗教一般に対し弾圧が行われ、宗教の影響力は大きく低下した[55]。こうしたことから1960年代以降、近代化に伴い宗教は衰退していくとする世俗化論が盛んとなった[56]。
一方で宗教は個人の内面を救済する需要に特化したため、宗教自体は衰退したわけではなかった[57]。個人の宗教心は必ずしも衰退傾向にはなく、宗教組織の社会的影響力は残存しており、旧共産圏やイスラーム圏、アメリカなど広い範囲で宗教は社会的影響力を再び強める傾向にある[58]。
キリスト教やイスラム教、仏教などいくつかの宗教は、伝統的に福祉事業や慈善事業といった社会貢献に積極的に務めてきていた[59]。19世紀から20世紀にかけて国家の権能が拡大していくに伴い、医療や福祉、教育といった社会事業の主体は国家へと移っていったが、その後もこれらの教団や信仰をバックとした各種法人・NPOは数多く存在しており、また宗教組織によるボランティアや災害支援活動は伝統宗教・新宗教を問わず盛んに行われている[60]。また、伝統宗教の宗教施設は古くから地域社会の核となっていることが多く、それを基にした社会活動は宗教の影響力の強い地域においてはいまだ盛んである[60]。
教義研究の必要性から、多くの宗教は教育的機能を持っており、特に高等教育と宗教の関係は深かった。やがて公教育が整備されるのに伴い、政教分離を重視する国家は教育から宗教的要素を分離する方向に向かったのに対し、政教一致に近い文化圏では宗教教育は重視され続けている[61]。また、公教育で宗教の影響を排除した国においても、多くの場合宗教団体による私立学校の設立は認められており、そこで宗教教育を行うことは可能である[62]。
社会規範・文化
[編集]宗教の教義や戒律が社会的規範ともなる場合がある。たとえばイスラム圏の女性の服装などのように戒律によって服装に制限が設定される場合がある[63]。
また宗教は文化にも大きな影響を与える。たとえば食文化では、厳格なユダヤ教徒はコーシェルな食事をとらなければならないと考え、豚肉のように「ひづめが2つに割れていて、反芻するもの」に当てはまらない動物の肉や正しく屠殺・血抜きをしなかった肉を食べず、乳製品と肉を同じ食事内で、あるいは前後して胃袋に同時にあるように食べることもしない[64]。イスラム教徒はブタを食べることが禁忌とされていることや[65]、ヒンドゥー教徒が牛を崇拝し牛肉を食べないことなども広く知られている[66]。一方で神へ酒や食物を供物とすることは広く見られ、また神道における直会やキリスト教における聖餐のように、食事が宗教儀式に取り込まれることは珍しくない[67]。
宗教の本山や名刹、聖地には巡礼者が集まり、彼らを対象とした商業の集積によって門前町のような宗教都市が形成されることがある[68]。もともと巡礼にはしばしば娯楽の要素が含まれていたが[69]、近代に入り観光が盛んとなると、それほど熱心でない信徒や、さらには信徒でない者も観光客として多数聖地へと訪れるようになった[70]。
宗教問題
[編集]信教の自由は世界人権宣言の第18条において保障されている[71]ものの、2022年時点で中国やロシアなどいくつかの国では信教の自由が保障されていないと見なされている[72]。
異なる宗教や宗派の住民の間で紛争や戦争が起こることは多く、こうした戦争はしばしば宗教戦争と呼ばれるものの、純粋に教義の対立による宗教戦争は多くはなく、実際は異なる社会集団間の対立が激化する過程で諸集団の文化の根幹にある宗教の存在がクローズアップされ、結果的に宗教間の対立となることが多い[73]。また、原理主義の隆盛により台頭した宗教過激派は自らの宗教的危機意識から先鋭化し、宗教テロを起こすことも多い[74]。
一部の宗教団体は急進化してカルト(セクト)と呼ばれる反社会的な存在となる場合があり、さまざまな問題を引き起こしている[75]。日本においては世界平和統一家庭連合(統一教会)による霊感商法などの触法行為や、エホバの証人による輸血拒否問題などが問題となってきた。カルトのなかでも特に急進化したオウム真理教は1989年(平成元年)の坂本弁護士一家殺害事件など多くの殺人事件を引き起こし、1994年(平成6年)には松本サリン事件、1995年(平成7年)には地下鉄サリン事件(オウム真理教事件)というテロ事件を実行して多くの死傷者を出した[76]。
宗教と政治との関わりも、大きな問題となる場合がある。アメリカでは原理主義者を中心とした進化論教育の拒否や[77]、宗教保守派による人工妊娠中絶への反対などがしばしば問題となる[78]。日本では創価学会を支持母体としている公明党が結党当初に政教一致ではないかとの批判を受けて1970年(昭和45年)に創価学会と公明党との政教分離を宣言している。しかし、未だに密接な関係であるために批判を受ける場合がある。また、戦没者の慰霊を巡る靖国神社問題もしばしば批判の対象となる[79]。
研究
[編集]宗教の研究は、主に宗教内部の立場から教義や文献を研究していく神学と、科学的手法を用いて宗教外の立場から研究を行う宗教学に区分される[80]。神学はキリスト教、仏教、神道をはじめとして伝統宗教の多くが古くから研究を行っていたが、19世紀に入るとフリードリヒ・マックス・ミュラーが各地の宗教の比較研究を行い、これによって宗教学の基礎が築かれた[81]。こうしたことから当初は宗教学は比較宗教学とほぼ同義であったが、19世紀末には隣接諸学の影響を受け、宗教心理学・宗教人類学・宗教社会学などが成立し、分化が進んだ[82]。
宗教の表現形式
[編集]宗教はさまざまな表現形式を通して時間や空間を超えて伝えられている。神話や伝説、教典の内容や教義は口伝や詠唱、詩、書物を通して伝えられる。また、通過儀礼や年中行事などの儀礼を通して伝えられる場合や、生活習慣や文化の中に織り込まれる場合もある。食事の際に生産者や自然に感謝をする場合などがこれにふくまれる。
また、絵画や彫刻などの芸術、音楽、舞踏、建築、文学などを通して伝えられる場合もある。こうした芸術は信仰と深くつながっており、各地で宗教美術が花開いた。音楽においても、ほぼ全ての宗教が音楽的要素を保持しており、キリスト教の聖歌や仏教の声明など、さまざまな宗教音楽が誕生し[83]、18世紀頃までのキリスト教会のように、教団組織が音楽の重要な担い手の一つとなることもあった[84]。その後、社会そのものの機能分化に伴い、18世紀末から19世紀ごろに宗教から芸術は分離した[85]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 計60億5,505万人(2000年)[5]。
- ^ ヒンドゥー教はヒンドゥー(文化圏としてのインド)の人々にのみ信仰されているが、さまざまな語族にまたがる数多くの人々に信仰されている(南アジアおよび東南アジアのバリ島が含まれる。なお、これらの地域にはイスラム教や仏教も伝わっている)。
- ^ 「神と人を再び結びつけること」という理解は神学者ラクタティウスの述べた説明による。ただし、このラクタティウスの説明は言語学的には正しいとは認められていないともする説もある[15]。 religio の語源とされる religare について、ラクタンティウスらをはじめとする人々に人気の語源は、ほかには、強意の接頭辞 re- と(同じく) ligare との組み合わせで「固く結び付ける」という意味としての religare があり、これは「義務を課す」や「人と神の間の絆」を意味するという説もある[16]。
- ^ その修好通商条約の第4条の訳文は右のとおり 「日本在住の独乙臣民は自国の宗教を自由に行うの理あるべし」
出典
[編集]- ^ a b 古野 1978, p. 231.
- ^ 村上重良『世界宗教事典』p.4[要文献特定詳細情報]
- ^ 古野 1978, pp. 234–235.
- ^ 新村出 編『広辞苑』(第五版)岩波書店、1254-1255頁。
- ^ 『朝日新聞データ年鑑 ジャパン・アルマナック2006』朝日新聞社、2005年、p247。ただし同書の当該部分はオックスフォード大学出版局発行 World Christian Encyclopedia を再引用したもの。
- ^ Harvey, Graham (2000) (英語). Indigenous Religions: A Companion. London and New York: Cassell. p. 6
- ^ 古野 1978, p. 233.
- ^ 愛知学院大学宗教研究会編 編『宗教と人間: 真の生き方を求めて』(第二版)大東出版社、2005年3月25日、16–17頁。ISBN 9784500007028。
- ^ Hinnells, John R. (2005) (英語). The Routledge companion to the study of religion. Routledge. pp. 439–440. ISBN 978-0-415-33311-5
- ^ Fitzgerald, Timothy (2000). The ideology of religious studies. New York: Oxford University Press. ISBN 1-4237-5678-9. OCLC 64685584
- ^ Prentiss, Craig R. (2003). Religion and the Creation of Race and Ethnicity: An Introduction. New York: NYU Press. ISBN 0-8147-6700-1. OCLC 50868272
- ^ Masuzawa, Tomoko (2005). The Invention of World Religions: Or, How European Universalism Was Preserved in the Language of Pluralism. Chicago: University of Chicago Press. ISBN 0-226-50988-5. OCLC 56599430
- ^ 櫻井義秀、平藤喜久子『よくわかる宗教学』(初版)ミネルヴァ書房、2015年3月10日、18頁。ISBN 978-4-623-07275-0。OCLC 907277782。
- ^ a b 岩井洋 「日本宗教の理解に関する覚書」関西国際大学研究紀要第5号、2004年
- ^ a b 石井研士『手に取るように宗教がわかる本』かんき出版、2002年、24頁。ISBN 4761259884。
- ^ “religion” (英語). www.etymonline.com. 2022年11月4日閲覧。 “popular etymology among the later ancients (Servius, Lactantius, Augustine) and the interpretation of many modern writers connects it with religare "to bind fast" …, via the notion of "place an obligation on," or "bond between humans and gods." In that case, the re- would be intensive.”
- ^ 磯前 2003, p. 不明.
- ^ 村上重良 『世界宗教事典』 pp.3-4。[要文献特定詳細情報]
- ^ 小口偉一・堀一郎 『宗教学辞典』 東京大学出版会、pp.255-263「宗教」。[要文献特定詳細情報]
- ^ a b c d e 『宗教学辞典』[要文献特定詳細情報]
- ^ Leuba, J. H. (1912). The psychological study of religion:Its origin, function, and future. New York:Macmillan. (かつて日本語訳が刊行されたことあり。リューバ 『宗教の心理学的研究』 同文館、昭和2年)。
- ^ 文部省宗務課 編『宗教定義集』1961年、154-173頁。
- ^ 村上重良 『世界宗教事典』 p.4。
- ^ James 1902, p. 31.
- ^ Durkheim 1915.
- ^ Tillich, P. (1957) Dynamics of faith. Harper Perennial; (p. 1).
- ^ Vergote, A. (1996) Religion, Belief and Unbelief. A Psychological Study, Leuven University Press. (p. 16)
- ^ James, Paul & Mandaville, Peter (2010). Globalization and Culture, Vol. 2: Globalizing Religions. London: Sage Publications
- ^ 「フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる宗教学」p140-143 井上順孝 日本実業出版社 2011年4月1日初版発行
- ^ 「フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる宗教学」p144-147 井上順孝 日本実業出版社 2011年4月1日初版発行
- ^ a b 「よくわかる宗教学」p24-25 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p59 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p62 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p64-65 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p88-89 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる宗教学」p48-49 井上順孝 日本実業出版社 2011年4月1日初版発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p25 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p36-37 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「プレステップ宗教学 第2版」p44-51 石井研士 弘文堂 2016年2月15日第2版第1刷発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p28-29 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ https://kotobank.jp/word/%E7%A5%AD%E6%94%BF%E4%B8%80%E8%87%B4-67987 「祭政一致」コトバンク 2021年9月10日閲覧
- ^ 「よくわかる宗教社会学」p192-193 櫻井義秀・三木英編著 ミネルヴァ書房 2007年11月25日初版第1刷発行
- ^ 「比較政治学」p186-187 粕谷祐子 ミネルヴァ書房 2014年9月30日初版第1刷
- ^ 「フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる宗教学」p166-168 井上順孝 日本実業出版社 2011年4月1日初版発行
- ^ 「バチカン近現代史」p92-94 松本佐保 中公新書 2013年6月25日初版
- ^ https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/vatican/data.html 「バチカン基礎データ」日本国外務省 令和4年5月17日 2022年8月13日閲覧
- ^ 「地図で見る中東ハンドブック」p84-85 ピエール・ブラン、ジャン=ポール・シャニョロー著 太田佐絵子訳 原書房 2020年3月31日第1刷
- ^ 「多文化時代の宗教論入門」p191-193 久松英二・佐野東生編著 ミネルヴァ書房 2017年6月10日初版第1刷発行
- ^ 「地図で見る中東ハンドブック」p85-87 ピエール・ブラン、ジャン=ポール・シャニョロー著 太田佐絵子訳 原書房 2020年3月31日第1刷
- ^ 「グローバリゼーション 現代はいかなる時代なのか」p137-139 正村俊之 有斐閣 2009年9月10日初版第1刷発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p155 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「グローバリゼーション 現代はいかなる時代なのか」p139-141 正村俊之 有斐閣 2009年9月10日初版第1刷発行
- ^ 「面白くて眠れなくなる宗教学」p198-200 中村圭志 PHP研究所 2018年2月6日第1版第1刷発行
- ^ 「グローバリゼーション 現代はいかなる時代なのか」p133-135 正村俊之 有斐閣 2009年9月10日初版第1刷発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p148-149 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる宗教学」p173-174 井上順孝 日本実業出版社 2011年4月1日初版発行
- ^ 「グローバリゼーション 現代はいかなる時代なのか」p134 正村俊之 有斐閣 2009年9月10日初版第1刷発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p149 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p158 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ a b 「よくわかる宗教学」p152-153 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる宗教学」p176-178 井上順孝 日本実業出版社 2011年4月1日初版発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p166 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「衣生活学」(生活科学テキストシリーズ)p48 佐々井啓・大塚美智子編著 朝倉書店 2016年1月20日初版第1刷
- ^ [1]
- ^ https://www.asean.or.jp/muslim/meal/meal2.html 「HALAL」国際機関日本アセアンセンター 2021年9月10日閲覧
- ^ 「文化人類学キーワード」p80 山下晋司・船曳建夫編 有斐閣 1997年9月30日初版第1刷
- ^ 「世界の食文化百科事典」p302-305 野林厚志編 丸善出版 令和3年1月30日発行
- ^ 「文化地理学ガイドブック あたりまえを読み解く三段活用 改訂版」p95 森正人・中川正 ナカニシヤ出版 2022年1月10日改訂版第1刷発行
- ^ 「フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる宗教学」p235 井上順孝 日本実業出版社 2011年4月1日初版発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p195 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ https://www.unic.or.jp/activities/humanrights/document/bill_of_rights/universal_declaration/ 「世界人権宣言テキスト」国際連合広報センター 2024年2月3日閲覧
- ^ https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN15CUK0V10C23A5000000/ 「信教の自由、「中国は最悪の侵害国」 米国務省が報告書」日本経済新聞 2023年5月16日 2024年2月3日閲覧
- ^ 「宗教世界地図 最新版」p263-264 立山良司 新潮文庫 平成16年5月1日発行
- ^ 「宗教世界地図 最新版」p264-265 立山良司 新潮文庫 平成16年5月1日発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p168 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p143 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p181 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p161 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p162-163 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる宗教学」p10-11 井上順孝 日本実業出版社 2011年4月1日初版発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p8-9 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p9-11 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「よくわかる宗教学」p190-191 櫻井義秀・平藤喜久子編著 ミネルヴァ書房 2015年3月10日初版第1刷発行
- ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」 p96 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
- ^ 「グローバリゼーション 現代はいかなる時代なのか」p134-136 正村俊之 有斐閣 2009年9月10日初版第1刷発行
参考文献
[編集]- 磯前順一『近代日本の宗教言説とその系譜:宗教・国家・神道』岩波書店、2003年。ISBN 4000225251。
- 古野清人 著、平凡社 編『世界大百科事典』 14巻、平凡社、1978年(原著1972年4月25日)。
- King, Winston L. (1987). Religion. in Mircea Eliade (ed.) The Encyclopedia of Religion Macmillan Publishing Company, New York.
関連項目
[編集]- 信念
- 信仰
- Cult (religious practice)
- 人生観
- List of foods with religious symbolism
- List of religious populations
- List of religious texts
- Morality and religion
- Nontheistic religions
- 宗派
- 宗教哲学
- 司祭
- Religion and happiness
- Religion and peacebuilding
- Religions by country
- 改宗
- Secularization
- 教会
- 宗教社会学
- 寺院
- 神社
- 神権政治
- 宗教の年表
- 日本国憲法第20条