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大蜘蛛

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
曽呂利物語』より「足高蜘の変化の事」

大蜘蛛(おおぐも)は、日本怪談随筆、民俗資料などにある巨大なクモの怪異。『狗張子』『諸皐記』『耳嚢』『宿直草』などの古書に記述があり[1]、『土蜘蛛草子』『平家物語』では山蜘蛛として知られる[2]

伝説

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寛文時代の奇談集『曽呂利物語』には「足高蜘の変化の事」と題し、ある山野に住む男のもとに夜、大蜘蛛が60歳ほどの老婆に化け、髪を振り乱して襲いかかり、男に刀で足を斬り落とされたという話がある[3]

『狗張子』によれば、京都五条烏丸で、ある山伏が大善院という寺に泊まったところ、夜更けに激しい音とともに、天井から毛むくじゃらの手がのびて山伏の顔をなでたので、刀で斬り落としたところ、翌朝には仏壇のそばに2尺8寸(約84センチメートル[1])の大蜘蛛の死骸があったという[4]

天保時代の『信濃奇勝録』には、大蜘蛛が人間の生気を吸って病気にさせたという話がある。信濃国(現・長野県下水内郡飯山に、母子2人暮しの農家があったが、息子が病気になって「クモが来る、クモが来る」と言って苦しむようになった。母親はクモを殺そうとしたものの、クモは病人にしか見えないらしく、祈祷にすがっても効果はなかった。その内に息子を想う母の念の力か、次第に母にもクモが見えるようになり、寝床にいるクモを押さえつけたが、逆にクモの糸に捕えられてしまった。母の苦しむ声を耳にした近隣の人々が駆けつけ、クモを殺して母を救い出すと、それは見たこともない巨大なクモだった。息子は一命をとりとめたものの、血を吸われた上に体のあちこちの皮が剥げ、しばらくは杖無しでは歩けないほどだったという[5]

これらのようなクモの怪異の伝承は、歳を経たクモが怪しい能力を持つという俗信から生まれたものとも考えられている[1]

脚注

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  1. ^ a b c 村上健司編著『日本妖怪大事典』角川書店〈Kwai books〉、2005年、59頁。ISBN 978-4-04-883926-6 
  2. ^ 岩井宏實『暮しの中の妖怪たち』河出書房新社河出文庫〉、2000年(原著1986年)、156-158頁。ISBN 978-4-309-47396-3 
  3. ^ 著者不詳 著「曾呂利物語」、高田衛編・校注 編『江戸怪談集』岩波書店岩波文庫〉、1989年(原著江戸時代初期)、36-38頁。ISBN 978-4-00-302572-7 
  4. ^ 浅井了意 著「狗張子」、朝倉治彦 編『仮名草子集成』 第4巻、東京堂出版、1983年(原著1691年)、138-139頁。ISBN 978-4-490-30160-1 
  5. ^ 井出道貞 著「信濃奇勝録」、巖谷小波編纂 編『大語園』 第2巻、名著普及会、1978年(原著1887年)、180-181頁。 NCID BN02844836https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1773988/1062015年8月28日閲覧 

関連項目

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