多数代表制
多数代表制(たすうだいひょうせい)とは、単一の集団として採用する意志を体現する人物・政党を選出する選挙制度である。
多数代表制に属する選挙制度
[編集]定数が1
[編集]多数代表制を実施する最も単純な方法は多数決を行うことである。多数決で選出される選択肢は一つしかないので、この方法では選挙区定数を1にする必要がある。大統領選など全ての首長選挙が当て嵌まる。小選挙区制については多数代表制#区割りの効果を参照。日本の首相指名選挙も、有権者が議員に限られているだけの多数代表制である。また、多数決の選択肢を候補者ではなく政党にして、選ばれた政党に全議席を与える方法も多数代表制になる。
可能連記数の多い連記式投票
[編集]大選挙区制などの複数の選択肢が選出される制度でも、可能連記数の多い連記式投票を使えば、選出された異なる選択肢が同一の意志を持つようにすることができる。連記式投票では、得票数の最も多い候補が自分と票田が完全に重なるクローン候補を立てても、有権者は複数の候補に同時に一票を投ずることが出来るのでクローン候補はオリジナルと等しい得票数を得る。このため可能連記数が定数以上である、完全連記式投票や単純な無制限連記式投票では、最強の政党が定数分の自党クローン候補を擁立することによって、大選挙区の議席を一党で独占しがちになる。
なお、可能連記数が定数未満でも、(定数/2)以上であれば、政党間の競争により異なる政党でも政策が似て来るかもしれない[1]。
利点・欠点
[編集]多数代表制の最大の利点・欠点は、当選者間での意思統一が既に済まされていることである。このため、緊急時など議論の時間の無いときや、裁判や内閣など一貫した方針が求められる作業を当選者で分担して処理する時などは、事前準備が殆ど必要ない。一方、あくまで代表している意志は一つだけなので、議会閉会中に議員が地元に帰るような、当選者とその支援者だけの努力に任せる方法では有権者全体の多様な意見を吸い上げるのは不可能であり、選挙のやり直しに近いことが必要になる。議会での議論も多様な見方を欠いたモノになりがちになる。
また、首長が一人しかいない行政府は何らかの多数代表制で選出されているため、立法府も多数代表制で選出すると行政府・立法府間の対立が少なくなる。このため、この対立を解消する規定が未整備の国の政治が停滞する可能性を減らすことが出来る。大統領選挙・首相公選などの行政府の直接選挙が無い国でも、国民の行政府への意向を直接反映させるため、立法府を多数代表制で選出する所がある。当然副作用として、行政府・立法府が似たような政党に握られることになるので、三権分立の目的である行政府・立法府間の相互監視機能も落ちる。
単記非移譲式投票を用いる場合の性質
[編集]Approval votingやSchulzeなどの政党の規模が考慮されない方法を使う場合と違い、選挙方法に単記非移譲式投票を使うものはデュヴェルジェの法則により、二大政党制になりやすい。
区割りの効果
[編集]区割りを用いると、特定の政治問題については多数代表制にならない。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 堀江湛『政治学・行政学の基礎知識』一藝社、2004年。ISBN 4901253433。