ワインの糖
ワインは、ワイン用のブドウに含まれる糖によって製造が可能になる。発酵の間に糖は酵母によってエタノールと二酸化炭素に変換される。
ブドウは、葉で光合成により作られたスクロース分子を成長につれて果実に蓄積させる。果実が熟す間、スクロース分子はインベルターゼの作用により、グルコースとフルクトースに加水分解される。収穫時には、15-25%が単糖になっている。グルコースもフルクトースもどちらも六炭糖であるが、炭素数3、4、5、7の糖もブドウ果実中に存在する。発酵後もワイン中に残っているアラビノース、ラムノース、キシロース等の五炭糖の様に、全ての糖が発酵可能なわけではない。アルコール濃度がある程度に達すると、非常に高い濃度の糖で効率的に酵母を殺すことができる。これらの理由から、完全に「ドライ」なワインは存在しない。ワインの最終的なアルコール度数影響を与える糖の役割から、補糖(シャプタリゼーション)と呼ばれる過程で糖(通常はスクロース)を加える醸造家もいる。これは、アルコール度数を高めることが目的であり、補糖によってワインの甘味が増すことはない[1]。
グルコース
[編集]グルコースとフルクトースは、ワイン用のブドウに含まれる主要な糖である。ワイン中では、グルコースはフルクトースほど甘くない。果実が熟し始める段階では、通常、グルコースはフルクトースの5倍以上も多く含まれていくが、フルクトースへの変換が急速に進み、収穫時期にはほぼ同じ量になる。レイトハーベストワインのように過熟させると、フルクトースの方がグルコースより多くなることもある。発酵中には、酵母はまず最初にグルコースを分解する。グルコースをアグリコンとして結合し、グリコシドを形成することも、ワインの風味に役割を果たしている[2]。
フルクトース
[編集]収穫時期には、果実中のフルクトース量はグルコースとほぼ同じになり、主要な糖となる。ワイン中では、フルクトースはグルコースの約2倍も甘く、デザートワインの甘味の主成分になっている。発酵中は、酵母はグルコースを最初に分解するため、温度管理や酒精強化ワイン用にブランデーを加える等して発酵を途中で中断すると、フルクトースが多く残ることになる。
ズースレゼルヴという手法では、発酵が完了した後に未発酵のムストが加えられるが、発酵を途中で中断したものよりは甘味は少ない。これは、未発酵のムストは、フルクトースとほぼ等量の甘味の少ないグルコースを含んでいるためである。同様に、スクロースを添加する補糖によっても、ワインの甘味はほとんど変化しない[3]。
スクロース
[編集]大部分のワイン中には、スクロースはほとんど存在しない。例外はシャンパンやその他のスパークリングワインで、二次発酵の後にスクロースが添加されることがあり、これはドザージュと呼ばれる。
テイスティング
[編集]ワインのテイスティングでは、苦味や酸味と比べると甘味は感じにくい。大部分の人は、ワイン中の1-2.5%の糖の甘味を感じることができるが、酸やタンニン等の別の味にマスクされてしまうためである[1]。
フラッシュリリース
[編集]フラッシュリリースは、圧搾に用いられる手法である[4]。これにより、含まれる多糖がより多く抽出される[5]。
その他
[編集]酸性糖のグルコン酸もワイン中に見られる。
出典
[編集]- ^ a b J. Robinson (ed) The Oxford Companion to Wine Third Edition pg 665-666 Oxford University Press 2006 ISBN 0-19-860990-6
- ^ J. Robinson (ed) "The Oxford Companion to Wine" Third Edition pg 317 Oxford University Press 2006 ISBN 0-19-860990-6
- ^ J. Robinson (ed) "The Oxford Companion to Wine" Third Edition pg 290 Oxford University Press 2006 ISBN 0-19-860990-6
- ^ Flash release and wine quality. Escudier J.L., Kotseridis Y. and Moutounet M., Progrès Agricole et Viticole, 2002 (French)
- ^ Effect of Flash Release and Pectinolytic Enzyme Treatments on Wine Polysaccharide Composition. Thierry Doco, Pascale Williams and Véronique Cheynier, J. Agric. Food Chem., 2007, 55 (16), pages 6643–6649, doi:10.1021/jf071427t