コンテンツにスキップ

のぞきめ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
のぞきめ
著者 三津田信三
イラスト 遠田志帆
発行日 単行本:2012年11月30日
文庫版:2015年3月25日
発行元 単行本:角川書店
文庫版:KADOKAWA
ジャンル ホラー
ミステリ
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 単行本:四六判上製本
文庫版:文庫判
ページ数 単行本:352
文庫版:416
公式サイト 単行本:株式会社KADOKAWAオフィシャルサイト|のぞきめ
文庫版:株式会社KADOKAWAオフィシャルサイト|のぞきめ
コード 単行本:ISBN 978-4-04-110346-3
文庫版:ISBN 978-4-04-102722-6
[ ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

のぞきめ』は、三津田信三による日本ホラー小説推理小説。単行本は、2012年11月30日に角川書店より書き下ろしで刊行された。文庫版は、2015年3月25日に角川ホラー文庫より刊行された。装丁は単行本・文庫版ともに鈴木久美が手がけている。装画は単行本・文庫版ともに遠田志帆が手がけている。文庫版は発売から7日ほどで重版が決定した[1]

2015年3月、発売された文庫版の帯により映画化決定が告知された[2]。2016年、実写映画化[3][4]

東雅夫は「この物語は、語り手があたかも三津田信三本人であるかのように書かれ、その後に示される話が、実際にあったものなのか判然としない、というように、虚実が混淆する趣向が味わえ、また怪談ミステリの融合も堪能することができる好著である」と評価している[5]

あらすじ

[編集]

序章

[編集]

「覗き屋敷の怪」が、利倉成留が体験した怪異の記録であり、「終い屋敷の凶」が、四十澤想一が体験した怪異の記録であることが示される。

覗き屋敷の怪

[編集]

成留は、O大学4回生の夏休みに、S山地のM地方にある貸別荘〈Kリゾート〉で、阿井里彩子、岩登和世、城戸勇太郎とともにアルバイトをしていた。成留たちはアルバイトの初日に、三野辺から「名知らずの滝に巡礼者が来ているのを見かけても、自分たちで対応しないように」との説明を受ける。しかし、渡された地図に名知らずの滝が載っていないことに、成留は首をかしげる。

8月のある日、和世が巡礼の母娘に呼ばれてついていくと、大きな岩がある場所に出たという。数日後、成留たちはその大岩まで行ってみることにする。大岩のある場所にたどり着き、岩に登った和世は、遠方に村があることに気づく。そして和世はまるで何かに憑かれたように、その村へと歩を進める。成留たちもついていき、そこが廃村だとわかる。その村のはずれに、崖の中途に建つ大きな屋敷を見つける。表札には「鞘落」とあった。屋敷の背後には墓所があり、その近くにお堂と祠があった。墓所の下のほうには、もうひとつの小さな墓所のようなものがあった。その小さな墓所内の石碑付近で、和世が何かに憑かれたような動きを見せる。

成留は、こんなところにいつまでもいるべきではないと感じたが、和世は屋敷の中から何者かが彼女らを見ている、と言い出す。逃げることにした成留だったが、大勢の何かが自分たちを目で追っている気配を感じていた。翌日、和世と勇太郎がアルバイトを辞めることになる。その後、勇太郎がY町の駅の階段で転落死する。そのようなこともあり、成留と彩子もアルバイトを辞めることにする。アルバイトを辞めた後も、何かに覗かれる恐怖を成留は感じる。成留と彩子は奈良の杏羅町の拝み屋を尋ね、お祓いを受ける。続いて、拝み屋が和世の家へ行き、お祓いを行うが、翌日、例の大岩の近くで和世が転落死しているのが発見される。

終い屋敷の凶

[編集]

ある日、想一は惣一から、鞘落(さやおとし)家は終い屋敷と呼ばれ、また鞘落家には六部殺しの伝説がある、ときかされる。さらに、鞘落家は以前、巡礼の母娘を生き埋めにしたといい、いつしか鞘落家には、母娘がのぞきめという化物になって出るとささやかれ出し、鞘落家にまつわる怪異のために過去に何人も死者が出ている、ともきかされる。その後、惣一の死を知った想一は、侶磊(ともらい)村の鞘落家を目指す。村に着いた想一は、鞘落家の野辺送りを目撃し、その後、雑林や鞘落家の人々と会う。

想一は、雑林から「鞘落家で何を見ても、知らないふりをすることだ」と言われる。想一は、その家の大広間でひとりになったとき、柱の陰から彼を覗く女の子を目撃する。また、嘉栄門の長男が怪異を鎮めるために建てたという巡鈴堂(じゅんれいどう)で女の子の声を耳にする。その後、義一が不自然な状況で亡くなる。そして想一は鞘落家で、のぞきめを目撃する。そのすぐ後、訓子が頭から血を流してこと切れているのを発見する。さらに勘一、季子、昭一の3人も死体となって発見される。

終章

[編集]

語り手の怪異体験は最小限で済んだ。それは、のぞきめという怪異を正しく推理したからではないか、と語り手は考えている。

登場人物

[編集]
語り手
作家。『忌館 ホラー作家の棲む家』などの作家三部作や『厭魅の如き憑くもの』などの刀城言耶シリーズを発表。
利倉 成留(とくら しげる)
O大学付属T小学校教師。
四十澤 想一(あいざわ そういち)
民俗研究者。怪談好き。怪談小説を愛読。
南雲 桂喜(なぐも けいき)
ライター。四十澤の家に入り込み、四十澤がのぞきめに関して記録した大学ノートを見つけ、それを勝手に持ち出し、語り手に送りつける。
祖父江 耕介(そふえ こうすけ)
ライター。語り手の親友。
三野辺(みのべ)
Kリゾートの管理人。60代前半。男性。実家は侶磊村の隣にある総名井村で旅館を経営。
阿井里 彩子(あいざと さいこ)
K大学4回生。利倉成留より2歳年上。
岩登 和世(いわのぼり かずよ)
N大学3回生。
城戸 勇太郎(しろと ゆうたろう)
S大学2回生。
雑林(ぞうりん)
侶磊村の真磊(まらい)という集落の心願寺(しんがんじ)の住職。
隺蔵(かくぞう)
砥館(とだて)家当主。
鞘落 惣一(さやおとし そういち)
想一の学友。出身は梳裂(すくざ)山地付近の侶磊村の南磊。東京文理科大学で想一と出会い、親しくなる。怪談好き。怪談小説を愛読。民俗調査のさなか、蒼龍郷(そうりゅうごう)[注釈 1]の爬跛(はは)村で崖から転落死する。
嘉栄門(かえもん)
女性の巡礼者が鞘落家を訪れたときの鞘落家当主。
勘一(かんいち)
惣一の異母兄。
季子(ときこ)
勘一の妻。
小能枝(このえ)
惣一の祖母。
義一(ぎいち)
惣一の父。
訓子(のりこ)
惣一の義母。
昭一(しょういち)
勘一と季子の子。惣一の甥。
揆一(きいち)
義一の父。惣一の祖父。

書誌情報

[編集]

映画

[編集]

2016年4月2日公開[6]。監督は三木康一郎、主演は板野友美[7]。興行収入は1億円[8]

キャスト

[編集]

スタッフ

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 蒼龍郷は『厭魅の如き憑くもの』の舞台となった場所でもある。

出典

[編集]
  1. ^ 三津田信三さんはTwitterを使っています: "文庫版『のぞきめ』(角川ホラー文庫)の重版が”. 2015年6月13日閲覧。
  2. ^ 三津田信三さんはTwitterを使っています: "本日は文庫版『のぞきめ』(角川ホラー文庫)”. 2015年6月13日閲覧。
  3. ^ KADOKAWA、2015〜2016ラインナップ発表/ニュース - CINEMAランキング通信”. 2015年6月13日閲覧。
  4. ^ 映画化決定!三津田信三『のぞきめ』”. 2015年5月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年11月20日閲覧。
  5. ^ 『のぞきめ』文庫版 解説
  6. ^ a b c d e 板野友美主演のホラー「のぞきめ」特報公開、白石隼也ら共演陣も発表”. 映画ナタリー (2015年11月20日). 2015年11月20日閲覧。
  7. ^ a b 板野友美が映画初主演 苦手なホラーで「自分の殻を破った」”. ORICON (2015年8月6日). 2015年8月6日閲覧。
  8. ^ キネマ旬報 2017年3月下旬号』p.71

外部リンク

[編集]