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こも巻き

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アカマツの幹に巻かれたこも巻き
マツカレハの天敵となるヤニサシガメ幼虫

こも巻き(こもまき、菰巻き)とは、江戸時代から大名庭園で行われてきた害虫駆除方法で、マツカレハの幼虫(マツケムシ)を除去する方法のひとつ。

概要

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マツカレハはアカマツクロマツチョウセンマツカラマツなどを食害する昆虫で、その幼虫は10月下旬頃になると樹幹から根際などの狭い場所に潜伏して越冬する習性をもつ[1]。この越冬のために移動する習性を利用し、藁でできた菰(こも)をマツの幹に巻き付て呼び寄せ、春に藁ごと焼却処分する防除法である[1]

虫が入りやすいよう上部は緩く、下部はきつく結束するが、こもの設置には利休結びなど独特の結束技術が用いられる[2]

伝統的には二十四節気霜降の頃に設置し、啓蟄の頃に取り外される[3]

効果の検証

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マツカレハの防除

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こも巻きは本来は造園などの分野でマツカレハの防除法として行われてきた[4]。この防除法の効果と問題点を、比較検証した研究としては、兵庫県立大学環境人間学部准教授の新穂千賀子らが、2002年(平成14年)から5年間かけて姫路城で行った調査があり[5][6][7]、この研究結果によれば、こも巻きに捕まったマツカレハは僅かであり、対して害虫の天敵となるクモやヤニサシガメが大多数を占めた[8]

この「姫路城のマツのこも巻き調査」で以下の点が指摘された[9]

  1. こもには益虫に越冬場所を提供して増やす効果があること[9]
  2. 害虫防除効果は僅かであること[9]
  3. こも外し作業の際の幹の点検が重要であること[9]
  4. こも巻きの昆虫調査は害虫モニタリングの一つの方法として有効であること[9]

そして、こも巻きについて「活用の仕方によっては益虫を増やし、環境に負荷をかけない害虫防除法としての利点がある。しかし、益虫を集めて殺すことにならぬよう、こもの処理には十分な配慮が必要である。」としている[9]

もっともこの研究以前から、天敵や設置方法への配慮が必要との声は、古くから上がっており[10][11]、天敵の捕殺の程度を検証し、害虫を効果的に選択するための研究も行われている[12]

そのため、宮内庁が管理している皇居外苑京都御苑では、既に新穂らによる研究の20年以上前の1980年代から行われておらず、浜松市2007年(平成19年)から廃止し[5]姫路公園でも例年行っていたが逆効果であることが分かったため、2015年平成27年)12月から廃止した[13][14]

他の害虫への適用

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アメリカシロヒトリの防除法に適用する研究が行われており、2023年(令和5年)8月30日に五稜郭保安林でこも巻きが行われた[4]。同年12月26日に回収にしたところアメリカシロヒトリの蛹が多く潜り込んでおり、夏季の個体数の減少の方法として研究が続けられてる[4]

脚注

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  1. ^ a b 公園・街路樹等病害虫・雑草管理暫定マニュアル”. 環境省. p. 12. 2024年10月22日閲覧。
  2. ^ 戸越公園で冬支度 松のこも巻き”. 品川区. p. 22. 2024年10月22日閲覧。
  3. ^ 3/1(金)旧芝離宮恩賜庭園 菰(こも)巻き外しレポート(芝浦一丁目地区まちづくり協議会)”. 野村不動産. 2024年10月22日閲覧。
  4. ^ a b c 五稜郭保安林におけるアメリカシロヒトリ防除に向けたこも巻きの実施”. 北海道森林管理局檜山森林管理署. 2024年10月21日閲覧。
  5. ^ a b “マツの「こも巻き」効果に?、捕まるのは益虫ばかり”. ヨミウリ・オンライン(読売新聞). (2008年3月21日). オリジナルの2008年3月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080328005454/http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080322-OYT1T00383.htm 2008年6月18日閲覧。 
  6. ^ “「こも巻き」 害虫駆除効果ナシ…兵庫県立大調査”. ヨミウリ・オンライン(読売新聞). (2008年3月21日). オリジナルの2008年9月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080924022228/http://osaka.yomiuri.co.jp/eco_news/20080321ke02.htm 2013年5月18日閲覧。 
  7. ^ マツの「こも巻き」効果に?、捕まるのは益虫ばかり (上記、読売新聞記事のブログ保存版)”. 2013年5月18日閲覧。
  8. ^ 新穂千賀子、中居裕美、村上諒、松村和典 (2007), “姫路城のマツのこも巻き調査”, 日本応用動物昆虫学会大会講演要旨 51: pp. 54, https://cir.nii.ac.jp/crid/1571980077179278848 
  9. ^ a b c d e f 新穂千賀子,中居裕美,村上諒,松村和典. “姫路城のマツのこも巻き調査(2002年-2007年)”. 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨. 2024年10月21日閲覧。
  10. ^ 藤田昇 (1963), “マツカレハの防ぎ方”, 植物防疫 17: pp. 464 
  11. ^ 久居宣夫 (1981), “マツのわら巻き”, 採集と飼育 43: pp. 58 
  12. ^ 吉村仁志、木上昌己、矢野宏二 (1995), “バンドトラップで捕獲されたマツ害虫とその天敵昆虫とクモ : こも巻き法の再評価”, 昆蟲 63 (4): pp. 897-909, https://cir.nii.ac.jp/crid/1540854195306345344 
  13. ^ 害虫より益虫駆除だから…姫路城の恒例「こも巻き」廃止
  14. ^ 姫路城の冬の風物詩中止 松の「こも巻き」逆効果

関連項目

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