バケルくん

藤子不二雄の藤本弘による日本の漫画

バケルくん』は藤子不二雄名義で発表されたSF生活ギャグ漫画。藤本弘(のちの藤子・F・不二雄)による単独執筆作品。

1987年には本作を原作とするテレビドラマが放送された。

概要

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小学生・須方カワルが宇宙人から不思議な人形をもらい、その人形に乗り移って姿を変えることができるようになるという日常SF作品。「バケルくん」はその人形のうちの1つ。人形を手に入れて変身できるようになったカワルの日常生活を描く。

アニメ化はされておらず、コミックスも長く絶版になっていたため、藤子不二雄作品の中では知名度が低い。『小学四年生』に掲載された「ドラとバケルともうひとつ」の中の一作で、『ドラえもんてんとう虫コミックス第9巻に収録された「ぼく、桃太郎のなんなのさ」(ドラえもんとの共演作品)が比較的知られている。「ぼく、桃太郎のなんなのさ」は1981年に映画化されたが、この映画はバケルくんの登場しないドラえもん単体の作品として作られており、「バケルくん」に関する部分は設定変更されている。

てんとう虫コミックス小学館)、藤子不二雄ランド中央公論社)、ぴっかぴかコミックス(小学館)などから単行本が発行されたが、一部未収録作品があった。藤子・F・不二雄大全集(小学館)で刊行された『バケルくん』では、初めて全作品が収録された。

なお、『まいっちんぐマチコ先生』などの作者えびはら武司によると、「自分がクレーム付けたら書きにくくなったから終わったとのこと」「当時はSNSなどなかったから一番近くにいた自分が意見を言った」などをインタビューで答えている[1]

掲載誌

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コミックス

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あらすじ

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ある日、友達と飛行機のラジコンで遊んでいたさえない小学生・カワルは通称「おばけやしき」と呼ばれる薄気味悪い屋敷にラジコンを飛び込ませてしまう。責任を取らされて一人でラジコンを探しに行ったカワルはその屋敷で人形と人間が次々に入れ替わる家族を目撃する。カワルが近くにあった犬の人形を手に取ったところ、自分がその犬に乗り移り自分の体が人形になってしまう。実はこの屋敷にいたのは体を持たない魂だけの宇宙人で、研究のために地球に来ており地球人型の人形に乗り移っていたのだ。宇宙人の目的は研究のみであり、すでに目的を果たしたので自分の星に帰る直前であった。宇宙人はおどかしてしまったおわびとして自分の持つ様々な人形コレクションを屋敷ごとカワルに譲り、UFO型人形に乗り移って帰っていった。以後カワルはバケルくんはじめ様々な姿に変身できるようになる。

人形

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人形は片手の中に収まるような大きさで[2]、鼻がスイッチになっており、鼻を押すことでカワルに限らず誰でも人形に乗り移ることができる(元の人間は人形になる)。バケルの家族の他にも様々な人や動物の人形も無数に存在し、変身している間はその人形の能力を発揮できる(バケルに変身して運動神経の良さを発揮したり、外国人の人形を使って外国人と会話したり、犬の人形で鋭い嗅覚を発揮したりした)。また、同時に複数の人形の鼻を押すことで複数の人形を同時に動かすことも可能。1人で同時に複数の人形に乗り移った場合、カワルは当初は全ての人形に同じ動きをさせることしかできなかったが、後の猛特訓により、同時変身している複数の人形がそれぞれ別の動きをしたり別のセリフを話すことも可能となった[3][4]

主なキャラクター

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須方カワル (すがた かわる)
主人公。力が弱く頭も良くない小学生。宇宙人からもらった人形を使って様々な人・動物などに変身する。下手の横好きで野球を趣味とするが、作中で特訓の成果あって主力打者になっている。カワルがバケルをはじめとする様々な人形を持っていることは誰も知らない。そればかりか、バケルなどバケ田一家は実在人物であると周囲には思われている。周囲からはバケルとは親友同士と思われている。
人形をくれた宇宙人
研究目的で地球に来訪していただけの意識生命体。地球では人形を使って地球人の姿に偽装していた。第1話でカワルに人形を譲り、宇宙へ帰っていった[5]。UFO人形の姿で時々カワルに会いに来る。作中では「人形をくれた宇宙人」と呼ばれるのみで、素性については語られていない(UFO人形は映画『宇宙戦争 (1953年の映画)』のマーシャンウォーマシンがモデル)。
バケ田バケル (ばけた ばける)
宇宙人の人形の1つでカワルが主に使う人形家族・バケ田一家の長男。運動神経抜群。ハートマークの帽子がトレードマーク。
バケ田ユメ代 (ばけた ゆめよ)
バケルの姉。頭が良く美人でスタイルもいいが、運動は苦手。カワルを苛めるゴン太をたびたび袖にする。
バケ田バケ左衛門 (ばけた ばけざえもん)
バケルの父。体を使うことは苦手。いくらでもお金が出てくる不思議な財布を持っている。財布の中は四次元空間に通じているため、いくらでも物が入る。財布の中のお金は決して偽札ではなく、人形をくれた宇宙人が研究資金のために自分の星で採掘した大量のダイヤを地球で売って稼いだ本物のお金であるという。おかげでカワルが小遣いに困ることは全く無く、空き地を地主から買い取ったり、倒産寸前の出版社を建て直したり、北極に不時着した旅客機の乗員・乗客のために非常食や毛布などの物資を大量購入したり、店の商品を買い占めたりすることもあるが、お金は一向に尽きる様子がない。
バケルの母
優しく、家事全般が得意。
一時期、バケタ家がブティックを開業したときには、既製服のリメイクを行い、ユミ子の愛犬が着ていた犬用の服を人間用にリメイクした際には、誤ってノミまで大きくしてしまう。
作中に名前は登場しない(1984年の解説記事にのみ「オボロ」と記載)。
第1話でカワルがはじめて乗り移った人形。バケ田家の犬。とても鼻がきく。カワルが乗り移っているときにはあくまでも犬であるが人間の能力も失わないようで、人間の言葉を話していたり、2足歩行していることもある[6]
作中に名前は登場しない(1984年の解説記事にのみ「トロン」と記載)。
カワルの父
丸の内の会社に勤める係長。上司に気に入られており、課長昇進も約束されていた(本編で実現はしていない)。家事は苦手。
カワルの母
専業主婦だが、内職をしている。勉強をしないカワルへの小言が多い。
ユミ子
カワルの同級生。周りからはユミちゃんと呼ばれている。バケルのことが好きで、彼の頼みなら絶対に断らない。その一方でカワルに好かれており、バケル - ユミ - カワルの三角関係になっている。当然だが、バケルがカワルであることには気付いていない。また、ユミ子自身、カワルへの好意はさほど持っていない。
ゴン太
ガキ大将。カワルの入っている野球チームの監督で、野球に情熱を燃やす。かなり男らしい面もあるが、普段はカワルを苛めている。ユメ代のことが好きであり、彼女の言うことなら何でも聞く。父親は不動産屋。
ホー助
ゴン太の野球チームに入っている。ゴン太の子分。茶色い髪。

ドラマ版

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藤子不二雄のバケルくん』(ビデオリリース時『藤子不二雄名作シリーズ4 バケルくん』)。1987年5月4日フジテレビ系列の月曜ドラマランド枠内でドラマ化された。

しかし、原作でカワルに当たる主人公を女性である畠田理恵が演じたために性別が変更、それによって名前がかわりとなり、他にもバケルに超能力が使える、須方家が祖父母と同居している、などと様々なオリジナル設定が付け加えられている。

アイキャッチでバケルとトロン(犬)のアニメーションが流され、そのパートが本作唯一のアニメ化となっている。

スタッフ

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キャスト

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主題歌

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脚注・出典

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  1. ^ 藤子・F・不二雄先生に“文句連発”で連載が終了 一世風靡したえびはら武司先生が語る師匠の素顔”. ENCOUNT. 2024年9月8日閲覧。
  2. ^ 第1話でカワルが初めて手にとった犬(トロン)の人形はもう少し大きいように見える。
  3. ^ 「バケルくん 新ひみつ変身百科」『別冊コロコロコミック』第4巻第5号、小学館、1984年8月、10頁、全国書誌番号:00035044 
  4. ^ 藤子・F・不二雄藤子・F・不二雄大全集』 6巻、小学館、2009年11月30日、525頁。ISBN 978-4-09-143414-2 
  5. ^ このとき、自分のことを誰にも言わないとカワルに約束させたことが語られる話が後にあるが、第1話の中にはそういう台詞はない。
  6. ^ 「ぼく、桃太郎のなんなのさ」の中で2足歩行の描写がある