カウティリヤ

古代インド紀元前300年代の宰相であり軍師。

カウティリヤサンスクリット語 कौतिल्य Kautilya, Kauṭaliya :紀元前350年 - 紀元前283年)は、古代インド宰相であり軍師であった人物。名前はチャーナキヤ(サンスクリット語 चाणक्य Cāṇakya)、あるいはヴィシュヌグプタ(サンスクリット語 विष्णुगुप्तn Viṣṇugupta)とも。マガダ国マウリヤ朝はインド最初の本格的な統一王朝であり、その初代チャンドラグプタ王(紀元前340年 - 紀元前293年)による建国の礎となったと伝わる。『実利論』(アルタシャーストラ、サンスクリット: अर्थशास्त्र)の中でも代表的な「カウティリヤ実利論」を著したとされる[1][2]。チャンドラグプタを援けてナンダ朝を倒した権謀術数家として知られ[3]、近現代には「インドのマキャヴェリ」と評されている[4]

カウティリヤ
カウティリヤ(画家の想像図)
別名 チャーナキヤ、ヴィシュヌグプタ
職業 大学教官、チャンドラグプタの政治顧問
著名な実績 マウリヤ朝の建国
代表作 実利論
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人物

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カウティリヤはバラモンであり[3]紀元前324年頃のインド北西部におけるチャンドラグプタの挙兵に大きく関わったとされる。補佐を受けたチャンドラグプタはガンジス川中流域へと侵攻してナンダ朝の首都パータリプトラを占領し、国王ダナナンダを殺害してナンダ朝を滅ぼすと、マウリヤ朝を建国した。カウティリヤは王朝草創期において引き続き政治顧問の役割を果たし、事実上の宰相となっていた。また、タキシラにあった大学の教官でもあった[要出典]。チャンドラグプタの死後も、その息子で後継者のビンドゥサーラ王のもと、引き続き補佐を行っていたとされる。

カウティリヤの残したと伝わる「実利論」はサンスクリット語で書かれた冷徹な政治論であり、マックス・ヴェーバーは「マキアヴェッリの『君主論』などたわいのないものである」と評している[5]。この「実利論」は同時に、当時のマウリヤ朝やインド社会を知るための貴重な資料ともなっている[5]

主な著作

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著作の翻訳、発行年順。

  • Shama Sastri, R. (Rudrapatna) 、 Kauṭalya『實利論』中野義照(訳)、生活社、1944年。NCID BN08982628
  • カウティリヤ『実利論』(上・下)、上村勝彦(訳)、原實(解説)、〈岩波文庫〉、1984年。復刊1998年・2013年。NDLJP:11928788NDLJP:11928447
洋書
  • Kauṭalya ; Kangle, R. P. A critical edition with a glossary.(英語) (2nd ed). University of Bombay (University of Bombay studies : Sanskrit, Prakrit and Pali no. 1 . The Kauṭilīya Arthaśāstra ; pt. 1), 1969. NCID BA40761549
  • Kauṭalya ; Kangle, R. P. An English translation with critical and explanatory notes (2nd ed). University of Bombay (University of Bombay studies : Sanskrit, Prakrit and Pali no. 2, The Kauṭilīya Arthaśāstra ; pt. 2), 1972. NCID BA40763919
  • Scharfe, Hartmut ; Kauṭalya. Investigations in Kauṭalya's manual of political science.(英語) (2nd, rev. ed. of "Untersuchungen zur Staatsrechtslehre des Kauṭalya" (ドイツ語).) Harrassowitz, 1993. ISBN 3447033304, NCID BA24166770.

脚注

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  1. ^ 山崎、小西 et al. 2007, p. 106
  2. ^ アルタ・シャーストラとは”. コトバンク. 日本大百科全書(ニッポニカ). 2021年10月19日閲覧。
  3. ^ a b 山崎 1972, p. 483-490
  4. ^ 野口 2000, pp. 83–100
  5. ^ a b 北村 2005, p. 102.

参考文献

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脚注の典拠、主な執筆者名と出版年月の順。

  • 山崎元一小西正捷 編「序章 インド古代史と文化の諸相、第3章 十六大国からマウリヤ帝国へ」『先史・古代』執筆者:小磯学、近藤英夫、上杉彰紀、辛島昇、藤井正人、渡瀬信之、定方晟、小谷仲男、古井龍介、山崎利男、三田昌彦、宮元啓一、宮治昭、横地優子、矢野道雄、山川出版社〈世界歴史大系 南アジア史1〉、2007年、106頁。 ISBN 4634462087
    • 年表(先史〜12世紀、巻末30-55頁)、参考文献(巻末56-93頁)、系図(巻末94-105頁)。

関連資料

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本文の典拠以外の資料、発行順。

  • 中村 元「第4章 国家統一と諸宗教の変動」『インド思想史』岩波書店〈岩波全書〉、1956年。国立国会図書館内公開。
    • 「§1 マウリヤ王朝による全インドの統一」64頁- (コマ番号0041.jp2)。
    • 「§2 カウティリヤの国家主義」66頁- (コマ番号0042.jp2)。
  • 野田福雄「1 カウティリヤ政治学研究序説 = 1 An Introduction to the Study of Kautilya's Arthastra」『東京学芸大学研究報告』第13巻第3号、東京学芸大学、1962年、1頁- (コマ番号0003.jp2-)、doi:10.11501/11208606。国立国会図書館/図書館送信参加館内公開。
  • 中村元「第三章 政治理想―国家統一から国家を超えたものへ― §第一節 カウティリヤの政治理想」『インド古代史 上』、春秋社〈中村元選集:第5巻〉、1963年、535頁-(コマ番号0278.jp2-)、doi:10.11501/2967221、国立国会図書館内公開。
  • 白井駿「カウティリヤの法律思想と刑法学」『国学院法政論叢』第19巻第19号、国学院大学大学院、1998年3月、1-25 (コマ番号0003.jp2-)。国立国会図書館/図書館送信参加館内公開。掲載誌別題『Kokugakuin annual review of law and politics』。
  • 村上昌孝『Kautiliya Arthasastra成立過程の研究』京都大学、博士論文甲第7598号、1999年、3-68頁。doi:10.11501/3149282、国立国会図書館/図書館送信参加館内公開。
    • 「1 KAŚの著者と伝承される人物の問題」
    • 「3 Kauţilya非作者説をめぐって」

関連項目

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外部リンク

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