横浜スローライフ -- My slow life in Yokohama

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Googleマップの利用規約について(まとめ)

2008年10月01日 23時18分17秒 | 地理情報関連

 初回、前回とGoogleマップの利用規約について投稿したが、いろいろなご指摘をいただいたことで、私なりにまとめることができるようになった。以下、簡潔に整理したい。

【文書の構成】
 「Googleマップ」の利用に関しては、「利用規約」(英文和文)があり、そしてAPIに関しては規約が英文しかない。さらに、APIについてはFAQ(英文)が用意されている(この記事の話題になる商用利用に関してはこの項目が相当)。このうち、和文の利用規約は、肝心な箇所が英文に書かれているとおり忠実に翻訳されていないことが判明したので、やはり英文を「正」として整理する必要がある。
 これらの3種類の規約は、上記で述べた順に従って派生しているので、根本は「利用規約」であり、「API規定」は従で、FAQは補足説明となる。

【商業利用について】
 「利用規約」においては、明快に商業目的の利用を禁止している。「API規定」でも、その利用規約に従うのが前提であるのだが、ここで「except that map data may be accessed and displayed by using the Google Maps API pursuant to the API terms and conditions.」という表現があり、(訳すと)「API規定に従ってGoogle MapのAPIを使用し、地図データにアクセスして表示することを例外にして」商業目的の利用を禁じている。要するに、Google MapのAPIは、商業目的に使っても良いと読み取れる。

 APIだけOKだが、それ以外の全ては商業目的の利用はダメ、というのでは心配になる人が多いためか、FAQで具体的に説明がある。

(原文と抄訳)
Can I use the Google Maps API on a commercial website?
APIを商業目的のWebサイトで使って良いのか?

    As long as your site is generally accessible to consumers without charge, you may use the Google Maps API. For example, if your website is supported by advertising, it likely falls within the Google Maps API Terms of Service. If you charge people to place information on your map (e.g. to list their homes for sale), but you display this information using the Google Maps API on a free part of your site, you'll also meet the Google Maps API Terms of Service.
課金することなくコンシューマがアクセスできるサイトである限りは、APIを使ってもよい。そのWebサイトが広告によって運営されているのであれば、API規定内にあると言える。もし地図に何か情報を置くことに対して課金するような場合に、そのサイトの無償の部分でAPIが使われてその情報を表示している場合にも、API規約に合致することになる。

    However, not all commercial uses are allowed. If your site meets any of the following criteria you must use Google Maps API Premier:
しかし、全ての商業目的の利用が認められているわけではない。以下の場合に該当すれば、Premier版のAPIを使わなければならない。

        * Your site is only available to paying customers
        * Your site is only accessible within your company or on your intranet
        * Your site will be used to perform vehicle tracking
  ・サイトが有償の顧客に対してのみアクセス可能となっている
  ・サイトが企業あるいはイントラネット内のみアクセス可能となっている
  ・サイトが車両位置トラッキングとして利用される場合

    Remember, Google reserves the right to suspend or terminate your use of the Google Maps API at any time, so please ensure that you read the Terms of Service carefully.
 ただし、GoogleはAPIの利用をいつでも休止または終了する権利を保有している。従って、サービス規定をしっかり読んで欲しい。


ということで、現時点ではAPIを使っている場合に限り、上記の3種類の利用形態でなければ、商業目的での利用が認められていることになる。


【考察】
 さて、大元の利用規約で商業目的利用を禁じて、API規定では(例外として)全く逆に利用を認めている、という少々不思議な運用をGoogleはしている。Googleは非営利団体でも、政府機関でも無く、アメリカの営利企業である。APIを無償で使ってもらうことは、Googleという企業が、あらゆるタイプの検索に伴う広告事業で、支配的な地位を占めるためには、これが当面必要な戦術であると考えているから、こういう運用をしているのだと思う。Googleが今の方針を継続する限りにおいては、”地図の無償利用”はまるで空気や水のような当たり前のものに見え続けるのである。

 だが、ひとたびGoogleの方針が変更されれば、当然この運用も変わりうるし、API利用者はそれに対して何か稼働保証を要求することはできない。冷静に考えてみれば、Googleは四半期単位でコロコロと方針が変わるアメリカの上場企業だから、実際に発生しうる確率は無視できないほど高いのではないだろうか。

 企業の運営するサイトで、地図機能が企業活動の要になるような場合に、Google MapのAPIを使うことは、そのリスクがどのくらいあるかどうかを検討すべきだろう。

 無償であること、それはコスト面で大変助かることである。しかしそのトレードオフで何がどうなるか、ここをよ~く考えておく必要があると思う。私はアメリカ資本の企業で働いたことがあるから多少わかるが、いつどんな方針変更でもあり得るので、その際に慌てないように準備は怠ってはいけない。


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2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
サイバー特区 (通りすがり)
2008-10-06 21:25:40
総務省のサイバー特区
あります。
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参考になりました (玉置三紀夫)
2008-10-08 13:51:31
今私は奈良県の県政GISアドバイザーも兼務していますので、この問題は関心があります。最近でも福岡県が全庁型GISの背景にGoogleMAPを利用していると聞いて危ういものを感じたばかりです。
Googleは地図上に集まったデータを収集し分析してマーケッティングデータとして流用しているという話も聞いた記憶があります。そうなると税金で集めた情報を一私企業(それもUS)に無償提供することになります。その辺を踏まえた議論を交わし合意の上で利用しているのか気になります。
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