「悲しみもトホホな気持ちも歌い飛ばそう」と言う佐藤壮広さん=東京都内、磯村写す 大学など10校を掛け持ちし、年収は200万円ちょっと。東京都内に住む宗教人類学者、佐藤壮広(たけひろ)さん(41)は非常勤講師だ。その悲哀を「非常勤ブルース」という曲にした。教壇でギターを抱えて熱唱。学生にも自分の心を見つめた歌詞をつくってもらう。異色の授業が好評だ。 沖縄の民間巫者(ふしゃ)ユタの研究が佐藤さんの専門。教えている私立大のほとんどで、契約は1年ごとの更新だ。「おつかれさまでした」のひと言もなく、メールで「来年度の任用予定はありません」と告げられたこともあった。 事情を知らない学生がよく尋ねる。研究室は何号館ですか、と。そんなものはない。卑屈になりかけたが、これを歌にしようと開き直った。 ♪先生いつも どこにいるんですか?/聞かれるたびに おれは答えるよ/おれはいつも お前らの目の前だ