今年の春先に、本社の部長から魚をもらった。 取引先のオヤジさん(と呼ばれる人)が釣ったものだ。 これまでも部長の元にはしばしば釣果が届けられていたらしいが その日は出張が入っていて自宅に持ち帰れない、誰か代わりに食ってくれー とのことで、俺がもらうことになった。 消去法で俺しかいなかった、とも言える。 魚は新鮮で、しかも下処理は完璧に済んでいた。 クーラーボックスの中で一匹ずつ丁寧にラップでくるまれ 魚種の名前が手書きメモで貼ってあった。 しかも市販の煮魚用タレまで添えられていた。 末端の俺には取引先のことなど分からないが 部長はそのオヤジさんと良い関係を築いている、それだけは分かった。(気がした。) ところで俺の隣席には、釣りが趣味だという先輩がいる。 先輩は、俺が魚をもらった日に小声で言った。 「それ食べるの? どこを泳いでいたか分からない魚だぞ?」 ( ゚д゚) そうか。そうなのか。