とある外資系コンピュータ企業で部長を務める50代の男性は、夜7時ちょうどにやってきた。「先生、こんばんは、よろしくお願いします」。外見にふさわしい渋い低音の声で言った。 しかし、その声は直後に驚くべき変貌を遂げた。ピアノ伴奏に合わせた発声レッスンで、講師が音階を「ラ~」「シ~」とあげていくと、威厳に満ちた部長は突然、素っ頓狂な裏声を張り上げたのである。ウィーン少年合唱団のように、あるいは、森山直太朗のように──。 ここは以前、取材で訪れた音痴矯正スクール(東京・渋谷区)。1カ月前から週1回通うこの部長の目的は、福山雅治の「桜坂」を社内の飲み会(2次会のカラオケ)で歌い通すこと。「部長、1曲お願いします」という部下からの要望に応えないわけにはいかないのだ。 裏声や高音の発声レッスンによって声帯の筋肉を鍛え、バランスを整えれば音痴は直る、というのがこのスクールの考え。駆け込み寺のような感覚でエ
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