戦国武将には気が休まるときがなかった。奪うか奪われるか、殺すか殺されるか、いつも紙一重の状況に置かれ、ひとつの判断ミスが文字どおり命とりになった。だから、常に情実を排除した冷静な判断が求められ、キレイごとをいっている余裕などなかった。 【写真】築山殿を演じた有村架純 むろん家臣たちも、正しい判断を重ねられない主人に仕えて一緒に滅ぶのはいやだから、主人に判断力がなければすぐに離れた。また、すぐれた武将ほど、家臣の力量や人間性をシビアに評価した。天下をねらうほどの名将であれば、人を見る目も一級だった。 ところが、本潤)は情にほだされてばかりで、ほかの武将たちも、よくいえばエッジが立ち、厳しくいえば、一面的なキャラクターでわかりやすく描かれすぎている。 感情の起伏を誇張したほうがドラマとして描きやすい、という事情はわかる。だが、その結果、歴史への