【データで見る“勝負の3週間”】感染者数や人の動きは…

政府が「勝負の3週間」として新型コロナウイルスの感染拡大の対策を短期間に集中的に行うと呼びかけてから、16日で3週間となります。16日は、東京都でこれまでで最も多い678人、神奈川県や愛知県、京都府などでも過去最多の感染が確認されるなど、感染拡大に歯止めがかからない状況が続いています。政府は、観光需要の喚起策として始めていた「Go Toトラベル」を全国一斉に一時停止することにしました。この3週間での感染者数や人の動きはどうだったのか。振り返ります。

先月25日、西村経済再生担当大臣が「この3週間が勝負だ」として、感染対策を短期間で集中的に行うと呼びかけてから、今月16日で3週間となります。15日までの感染者数の推移と主な動きはご覧のとおりです。

感染者数の推移

「勝負の3週間」の前の3週間に全国で確認された感染者数は、
▽先月10日までの1週間では7163人、
▽先月17日までは1週間中では初めて1万人を超えて1万729人、
▽先月24日までは1万4502人でした。

それが「勝負の3週間」の呼びかけがあった後、
▽今月1日までの1週間では1万5174人、
▽今月8日までは1万5613人、
そして
▽今月15日までは1万8105人と過去最多を更新し続け、感染の拡大に歯止めがかかっていません。

死亡者数の推移

また、感染して亡くなった人の数は、
▽先月10日までの1週間では56人、
▽先月17日まででは69人、
▽先月24日まででは95人と、
先月初めから増加傾向が続きました。

「勝負の3週間」が呼びかけられた後、
▽今月1日まででは178人、
▽今月8日までが252人、
▽今月15日まででは257人と急増し、過去最多を更新し続けています。
政府の呼びかけのあとも感染拡大に歯止めがかからず、医療体制が厳しい状況に置かれる地域も出てきていて、亡くなる人も増え続ける状況になっています。

地域別の感染者数

地域別に1週間当たりの感染者数を見ます。

〈東京都〉
▽今月1日までの1週間で3114人、
▽今月8日までが3044人、
▽今月15日まででは3635人。

〈大阪府〉
▽今月1日までが2451人、
▽今月8日までが2402人、
▽今月15日まででは2427人。

〈愛知県〉
▽今月1日までが1286人、
▽今月8日までが1328人、
▽今月15日まででは1400人とそれぞれ、高止まりか増加の傾向が続いています。

〈北海道〉
一方で、「勝負の3週間」の前に札幌市内で不要不急の外出を控えることなどを呼びかけた北海道では、
先月24日までの1週間では1705人だったのが、
▽今月1日までが1490人、
▽今月8日までが1292人、
▽今月15日まででは1197人と減少する傾向が見られます。

地域別の死亡者数

ただ、亡くなる人の数は、感染者数の増加から遅れて増加する傾向があります。

〈北海道〉
感染の拡大が続いていた先月初めまでは1週間当たり10人未満でしたが、
▽今月1日まででは50人、
▽今月8日までが63人、
▽今月15日まででは70人と増加が続いています。

〈大阪府〉
また、大阪府でも同様の傾向で、先月中旬までは1週間当たり10人前後でしたが、
▽今月1日まででは44人、
▽今月8日までが45人、
▽今月15日まででは60人と増加しています。

主な都市の繁華街での人出は

一方、NTTドコモは、携帯電話の基地局の情報をもとに、プライバシーを保護した形で全国の人出のデータをまとめました。
それによりますと、今月15日午後3時時点の主な都市の繁華街での人出は、最初に感染が拡大する前のことし1月中旬から2月中旬までの平日の平均との比較では、次のとおりとなります。
▽札幌 すすきの周辺がマイナス33%
▽東京 新宿駅周辺がマイナス12%
▽大阪 難波周辺がマイナス22%
▽福岡 天神周辺がマイナス13%となった一方
▽名古屋 栄駅周辺は4%増えました。

さらに「勝負の3週間」直前の先月24日までの期間を1週間おきにさかのぼってみてみますと、
▽札幌 すすきの周辺がマイナス35%からマイナス37%
▽東京 新宿駅周辺がマイナス14%からマイナス17%
▽大阪 難波周辺がマイナス20%からマイナス26%
▽福岡 天神周辺がマイナス14%からマイナス16%
▽名古屋 栄駅周辺は逆に2%から4%増加しました。

15日と比べて目立って大きな変化はなく、札幌の減少幅が大きくなっています。

尾身会長「感染高止まりの地域あり しっかりした対策を」

政府が今週半ばまでを「勝負の3週間」と位置づけて対策を講じてきたことについて、政府の分科会の尾身茂会長は16日、「飲食店への営業時間の短縮要請は、東京を含め、国と自治体にやっていただいた。しかし、結果的にはまだ、感染が高止まりしている地域があり、さらにしっかりした対策をやっていく必要がある」と述べました。

官房長官「評価は評価 引き続き感染拡大防止に全力」

また、加藤官房長官は16日午前の記者会見で、今週半ばまでを「勝負の3週間」と位置づけて対策を講じてきたことについて「強い危機感を持って対応してきた。これに対する評価は評価として、しっかりとしていかなければならない」と述べました。

そして、年末年始は、営業時間の短縮要請に応じた飲食店などに対する1日当たりの協力金を、自治体と連携して、今の2倍にすることや、「Go Toトラベル」を全国一斉に一時停止するなど、最大限の対策を講じると説明しました。

そのうえで、「自治体と緊密に連携しながら、地域の感染状況に応じた取り組みを支援し、国民には、基本的な感染防止対策の徹底をお願いしたい。引き続き、専門家などの評価や分析も踏まえ、感染拡大防止に全力で取り組んでいきたい」と述べました。

一方、年末年始の帰省について、加藤官房長官は「自粛を一律に要請しているわけではないが、政府が最大限の対応をとっていることも踏まえ、個々の事情があるとは思うが、慎重に検討してほしい」と呼びかけました。

日本医師会 会長「完璧に抑え込むことはできず」

日本医師会の中川会長は記者会見で「勝負の3週間は、誰が勝ったのか、負けたのか分からないが、『みんなで3週間努力しよう』という政府の明確なアナウンスにより、かなりの層の国民が自粛の努力をしたと思うので、決して、そのアナウンスが、むだとか、無効だったということではないと思う。そうしたアナウンスも無ければもっと感染が広がっていたのではないか。ただ、完璧に抑え込むことはできなかった」と述べました。

都民の他県への移動 どの世代もほぼ同じ割合で減少

NHKは、NTTドコモが携帯電話の基地局からプライバシーを保護した形で集めたデータを使って、東京都から県をまたいで移動した人の数について、先月呼びかけが行われてからの「勝負の3週間」のうちの休日と、その前の3週間のうちの休日の平均を比較して分析しました。

その結果、県をまたいで移動した推計の人数は、「勝負の3週間」の前がおよそ111万人だったのに対し、「勝負の3週間」はおよそ96万人と、15万人、率にして14%減少していました。

さらに20代から70代の年代を3つに分けて、移動した人数を比較してみます。
その結果、人数では、20代から30代が最も多く、「勝負の3週間」の前におよそ47万人だったのが「勝負の3週間」にはおよそ41万人と14%減少しました。

次いで、40代から50代ではおよそ44万人からおよそ38万人と14%の減少、60代から70代はおよそ20万人からおよそ17万人と13%の減少となりました。

今月に入って「Go Toトラベル」の都内発着の旅行で65歳以上の高齢者などは利用の自粛を呼びかけられていましたが、今回の分析では年代別の移動の変化の差はほとんど見られませんでした。

専門家「各年代で移動控えるも 呼びかけ効果は限定的か」

人の移動の分析に詳しい早稲田大学の佐々木邦明教授は今回の分析結果について、「データからは、各年代ともやや移動を控えていることが読み解ける。ただ、高齢者などに大きな変化がなかったのはすでに自粛を続ける人が多かったため、今回の呼びかけの効果がそこまでなかったからだと見られる」と分析しました。そのうえで、「年末から『Go Toトラベル』の利用は地域を限った『自粛の呼びかけ』ではなく全国で『一時停止』となるので、その効果がどの程度出るのか注目される」と話しています。