気象庁マグニチュード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/12 02:30 UTC 版)
気象庁マグニチュード(きしょうちょうマグニチュード、Mj, MJMA)は、日本の気象庁の定める地震のエネルギー量を表す指標値(マグニチュード)である[1]。
気象庁の公式報告として利用され、日本で単に「マグニチュード(M)」と報告された値は一般的に気象庁マグニチュードの値である[2]。2003年の約80年前まで遡って一貫した方法で決定され、モーメント・マグニチュードともよく一致している[1]。
マグニチュードには国際標準の規格がなく、気象庁マグニチュードは日本固有の指標値であるが、他国で用いられている指標値とおおよそ同じ値をとる。ただし、M8を越える巨大地震では過小測定するため、気象庁の公式報告でも気象庁マグニチュードと併行してモーメント・マグニチュードも利用される。
なお、気象庁の地震に関する指標値(震度)には気象庁震度階級もある[3]。
歴史
気象庁マグニチュードは1920年代まで遡って気象庁の報告・記録する地震のエネルギー量を表す指標値として利用されている[1]。1970年代後半、地面が動く速度を観測可能な高感度地震計を整備してから、規模の小さな地震では地面の動く速度からマグニチュードを測定する速度マグニチュードを導入した。整備直後は速度マグニチュードを計測する実験式を定めるための蓄積情報が十分に集まっていかなかったため、速度マグニチュードで測定した気象庁マグニチュードの精度は低かった。2000年代初頭に、速度マグニチュードのための蓄積情報が集まったこと、速度マグニチュードと変位マグニチュードの計測法を切り替える閾値周辺に誤差があること、変位マグニチュードと他国で利用されているモーメント・マグニチュードに差異があることから、気象庁マグニチュードの値の見直しが実施された。2001年4月23日に一部の地震の気象庁マグニチュードが更新され[4]、2003年9月25日に気象庁マグニチュードを計測する実験式・経験式の改定が行われた。
計測
気象庁マグニチュードは地震計で観測した地震波による地面の動く速度もしくは変位から値が計測される[1]。
小規模の地震では、高周波成分が強調され、ノイズが含まれづらい地面が動く速度を測定し、測定した値からマグニチュードを計測する速度マグニチュードを利用する。中規模以上の地震では、低周波成分が強調され、マグニチュードの飽和の上限の高い変位マグニチュードを利用する。それぞれの計測法の利用範囲はおおよそマグニチュード3を閾値にして利用計測法を切り替える。閾値の前後で速度マグニチュードと変位マグニチュードが同値となるよう実験式・経験式は設計されており、計測法の切り替えによって異なるマグニチュードが計測されることはない。
気象庁マグニチュードは計測の情報源・計測にかかる時間によって幾つか段階を踏んで計測・報告される[5]。
- 速報値
- 地震発生直後の緊急地震速報で報告される限られた地震観測点の表面波から計測されたマグニチュード。S波の測定、P波の測定で都度再計測され、一定値以上に値が更新された場合は連続して報告される。
- 暫定値
- 地震発生翌日に報告される速報値より多くの地震観測点の地震波から計測されたマグニチュード。速報値より精度は高いが情報の収集、値の計測に時間がかかる。ただし、規模の大きな地震では翌日を待たず、報道発表資料などで暫定値が報告される。
- 公式記録
- 後日に地震の観測情報を精査して計測・報告されるマグニチュード。気象庁の公式記録として残される。
計算方法
2003年9月24日以前
2003年9月24日までは、下記のように、変位マグニチュードと速度マグニチュードを組み合わせる方法により計算していた。
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