ジャニー喜多川氏の性加害問題を見過ごしてきたメディアに批判が向けられています。問題を調査した外部専門家らは「マスメディアの沈黙」が被害拡大の一因となったと指摘しました。東京新聞がこの問題にどう向き合ってきたのか振り返ります。(編集局次長 飯田孝幸)
◆週刊文春が1999年に追及を開始、裁判に
喜多川氏による性加害は、週刊文春が1999年に連載で追及を始めました。喜多川氏側は名誉を傷つけられたとして文春側を提訴。一審は喜多川氏側が勝訴しましたが、東京高裁は2003年に性加害を認定。最高裁も喜多川氏側の上告を退けました。
本紙は週刊文春の報道後も、問題を正面から取り上げることはありませんでした。裁判の一、二審判決は掲載しましたが、二審判決の扱いは小さく最高裁の上告棄却は掲載していません。2019年7月に喜多川氏が死亡したときも、本紙は「所属タレントへのセクハラを報じられ、民事裁判で争った」と言及しただけです。
国内メディアの沈黙が続く中、英BBC放送が今年3月に喜多川氏の性加害問題を報じると、4月12日には元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトさんが外国特派員協会で会見して被害を告白しました。
本紙はカウアンさんの会見以降、性加害問題の報道を続けていますが、読者から「ジャニーズ事務所から恩恵を受けていた報道機関が忖度 した」「(マスコミは)事務所怖さに看過してきたように見られる」という批判が届いています。
ジャニーズ性加害問題の記事一覧
本紙はカウアンさんの会見以降、性加害問題の報道を続けていますが、読者から「ジャニーズ事務所から恩恵を受けていた報道機関が
◆裁判担当記者たちは「全く覚えていない」
性加害を認定した高裁判決時に裁判取材に関わっていた本紙の複数の記者に聞くと、いずれも「全く覚えていない」という反応でした。私自身、最高裁決定時に裁判を扱う司法記者クラブにいましたが記憶にありません。
私たちは記事にすると何らかの不利益があるから書かなかったのではなく、「しょせん芸能界のスキャ...
残り 782/1564 文字
今なら最大2カ月無料
この記事は会員限定です。
- 有料会員に登録すると
- 会員向け記事が読み放題
- 記事にコメントが書ける
- 紙面ビューアーが読める(プレミアム会員)
※宅配(紙)をご購読されている方は、お得な宅配プレミアムプラン(紙の購読料+300円)がオススメです。
おすすめ情報
コメントを書く
有料デジタル会員に登録してコメントを書く。(既に会員の方)ログインする。