7月に死刑が執行された秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大 元死刑囚=執行時(39)=は2015年から毎年、イラストやエッセーなどを「死刑囚表現展」(死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金主催)に応募していた。選考委員として作品に接してきた評論家の太田昌国 さん(78)は、加藤元死刑囚の意識の変化を感じたという。10日は世界死刑廃止連盟(本部・パリ)が定める世界死刑廃止デー。14日から始まる作品展示を前に、8年間の加藤元死刑囚の表現の軌跡をたどった。(小嶋麻友美)
初期の応募作は、数字をヒントにマス目を塗りつぶすと絵になる「イラストロジック」と呼ばれるパズルだった。便せんの裏に数字とマス目が細かく連ねてあった。母親に厳しく管理されていた幼少期、得意としていたという。2年目の16年は200問にも及び、太田さんは「解けなかった」と正直に講評を返した。
17年の作品「あしたも、がんばろう。」では、方眼紙81枚を貼り合わせるよう指示が添えられていた。選考委員らが手がかりを探しながらつなぐと、縦2.5メートルものアニメゲームの絵が完成。精緻にマス目を埋めているのは「鬱 」の文字だった。
変化の兆しは18年のイラストにあった。毎年の表現展開催後、応募者には冊子が送られ、来場者の意見や他の死刑囚の作品を知ることができる。加藤元死刑囚は他の作品に敬意を表し、その人の名をタイトルに入れたり、模写したイラストを描いたりした。「コミュニケーションをかたくなに拒否していたように見えた彼に、他者との連帯の意思が見え始めた」と太田さんは振り返る。
20年以降は文章表現が増え、支えに素直な感謝をつづった短歌もあった。
職員の 口には出せぬ 親切を 目から読み取り 頭を...
残り 793/1585 文字
今なら最大2カ月無料
この記事は会員限定です。
- 有料会員に登録すると
- 会員向け記事が読み放題
- 記事にコメントが書ける
- 紙面ビューアーが読める(プレミアム会員)
※宅配(紙)をご購読されている方は、お得な宅配プレミアムプラン(紙の購読料+300円)がオススメです。
おすすめ情報
コメントを書く
有料デジタル会員に登録してコメントを書く。(既に会員の方)ログインする。