東京・池袋で2019年4月、乗用車が暴走して通行人を次々とはね、松永真菜 さん=当時(31)=と長女莉子 ちゃん=同(3)=が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長飯塚幸三被告(89)の公判が27日午後1時半から東京地裁であり、被告人質問が行われた。これまで無罪主張をしてきた飯塚被告が、質問に何を語ったのか。法廷での質疑を詳報する。
池袋暴走事故 起訴状などによると、飯塚幸三被告は2019年4月19日正午すぎ、豊島区東池袋4の都道で、ブレーキと間違えてアクセルを踏み続けて時速約96キロまで加速し、赤信号を無視して交差点に進入。横断歩道を自転車で渡っていた近くの松永真菜さん=当時(31)=と長女莉子ちゃん=当時(3)=をはねて死亡させたほか、通行人ら男女9人に重軽傷を負わせたとされる。
13:30 昼食にレストラン
飯塚被告が車いすに乗り、法廷に現れた。グレーのスーツとネクタイを締め、前を向いた。事故で妻と娘を亡くした遺族の松永拓也さん(34)は検察官側の前列に座っている。
飯塚被告は、弁護人に車いすを押されて、証言台に移った。裁判官から「これから被告人質問を始めます」といわれると「はい」としっかりした声で答えた。
最初に弁護側の被告人質問から始まった。自動車の運転歴について質問されると、「53年以上たったと存じます」。2001年に自転車との接触事故で略式処分をされたことや、この10年は交通違反をしていないことを説明した。
普段は車いすを使っていないが、「昨年の秋ぐらいからふらつきが大きくなり、歩行器を使ってなんとか歩ける」と説明。裁判所の勧めもあり、この日は車いすを利用したという。
事故当日は、午後零時半にレストランを予約していたといい、12時過ぎに自宅を出たという。「急がないで十分間に合います」と説明した。毎回運転の際には「ブレーキペダルを踏んで、正常に機能しているかをチェックしている」といい、この日もチェックしていたという。
13:45 「思ったより早いスピードで…」
飯塚被告は、普段の運転操作や、事故現場手前の東池袋交差点での状況を説明した。飯塚被告は普段、アクセルとブレーキを右足で踏み分けているのか問われ「その通りです。(事故当日の4月19日も)同じです」と説明。カーブでは「ブレーキペダルを踏んで減速し、カーブに沿ってハンドルを切って、曲がり終わったところでアクセルペダルを踏んで加速します」と述べた。
事故現場近くの東池袋交差点に差しかかる際は、右足で断続的にブレーキを踏んだと説明。交差点を左に曲がっている最中の右足の位置を問われ、「ブレーキペダルの上においていました。普通、カーブで曲がるときは、いつでも止まれるようにブレーキペダルの上に足を置いていましたので、その時もそのようにしました」と答えた。
左折中の車の時速は「40キロか50キロあったと思います」と述べた。普段との速さの違いを問われると、少しだけ大きめな声で「速いんです。思ったより速いスピードで曲がってしまいました」と述べた。
ドライブレコーダーには左折中、「おう」という飯塚被告の声が録音されていた。飯塚被告は「覚えていません」と答えた上で、声が出た理由について「思ったよりスピードが出てしまい、アクセルを踏んでいないのに、不思議に思ったためだろうと思います」と話した。
14:00 7秒の沈黙…「エンジンが異常に高速回転」
飯塚被告は図面を使いながら、東池袋交差点を左折する準備をした地点や走行ルートを説明。その様子を被害者遺族の松永拓也さんは机上で両手を組みじっと見ていた。
弁護側に「なぜ左車線に変更したのか」と問われると「いつも左車線を走っていたので」。「カーブを曲がりきったところで車に何か起きましたか」と問われると7秒ほど沈黙。「エンジンが異常に高速回転しました」と回答した。「アクセルペダルを踏んだことは」と問われると「ありません」ときっぱりと述べた。
「警告音が鳴ったことはありますか」と聞かれると「覚えていません」。当時の速度については50キロ~60キロくらいだと説明。「アクセルペダルを踏んでいないのにエンジンが高回転になり速度も加速した」と述べた。
意図しない加速が起きたときの気持ちを聞かれると「車が制御できないのかと思って非常に恐ろしく感じました。パニック状態になったと思います」と答えた。
さらに速度が加速してどう行動したかを尋ねられると「右足でブレーキを踏みました。減速せずにますます加速しました」と話した。交差点を過ぎた後にどうしたかを聞かれると「アクセルペダルを踏んでいないのになぜ加速したのか分からなかったのでアクセルペダルを調べようと思いました。視線を落としてアクセルペダルを見ました」
「座ったままで見ることができましたか」の問いに「できました。床に張り付いて見えました」。アクセルペダルを確認した時間については「一瞬です」と述べた。
松永さんは飯塚被告と弁護人のやりとりをノートにメモを取りながら聞いていた。
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