水 工 学 論 文 集,第49巻,2005年2月
河 川合 流 点 を含 む流 れ に 関す る研 究
STUDY
OF FLOW
IN THE VICINITY
OF RIVER
CONFLUENCE
舛 甚 甲介1・ 清 水 康 行2
Kosuke
At
北海 道 大 学 大学 院 工 学 研 究 科 (〒060‑0813札
幌 市 北 区北13条 西8丁 目)
2正 会 員
工博
北海 道 大 学 大学 院 工 学 研 究 科 (〒060‑0813札
幌 市 北 区北13条 西8丁 目)
vicinity
of
be
at the
typhoon
fallen
trees
and
analysis
the
flow
flow
using
was
k-ƒÃ
model
the
similar
at the
Key
was
vicinity
Words:
understand
Therefore,
it
is
confluence
2003.
By
velocity
in
performed
was
applied
the
river
vicinity
the
to
the
the
field
A
rather
river
this
the
than
confluence
investigation
of
numerical
the
results.
analysis
with
analysis
and
model
damage
can
rivers.
a powerful
most
serious
directions
of
was
0-equation
. The
model
numerical
model.
Calculated
tool
is
been
confluence
0-equation
Biu
be
river
the
the
area
had
was
by
results
using
the
been
this
investigation
using
calculated
has
discharge,
estimated
including
Atsubetsu
This
the
was
Numerical
compared
high
Field
where
flow
fluctuations
the
experiment
The
were
the
Rivers,
flood
flume
velocity
during
mechanism.
Biu
of
precisely.
results
and
Especially
situation
houses.
measured
well
of
separations
and
the
of
flow
understand
Atsubetsu
wall
was
vicinity
with
challenging
experimented
reproduced
to
characteristics
the
flume
and
the
to
phenomena.
investigation,
at
the
due
its
of
this
remained
model
complexity
to
trace
of
the
engineers
of river
No.10,
model
numerical
showed
flooded.
the
The
confluence,
river
vicinity
the
E
river
for
during
conducted.
1.は
of
interest
to
conducted
k-
SHIMIZU
工学
vulnerable
and
and Yasuyuki
1学 生 員
the
subject
MASUJIN
This
results
to
analyze
confluences.
of river
confluence,
flood
じめ に
河 川 合 流 点 で は,本 川 と支 川 の流 れ の 相 互 干 渉 に
よ り複 雑 な流 れ が発 生す る.合 流 点 付 近 で は 流 れ の
急 激 な減 速 や 死 水域 の発 生 な どに起 因 して 大 量 の 土
砂 が堆 積 し,氾 濫 に つ な が る場 合 も しば しば 報 告 さ
れ て い る.例 えば,韓 国 の洛 東 江 で は, 2002年 の9
月 の大 雨 と, 12月 の 台風 に よる 出水 で,支 川 の新
盤 川 との 合 流 点 で 大規 模 な氾 濫 が報 告 され て い る
1) .洛 東 江 の 場合 は,本 川 か ら支 川 へ の出 口部 分
に大 量 の 土砂 が 堆積 し,新 盤 川 の流 れ が せ き止 め ら
れ,大 規模 な 氾濫 の 引 き金 とな った.一 方,北 海 道
で も2003年8月 の 台風10号 に よ って もた らされ た
大 雨 に よ り日高 地方 の 中規 模 河 川 で あ る厚別 川 を 中
心 に至 る所 で 氾濫 被 害 が発 生 した.こ の うち,厚 別
川 本 川 とそ の支 川 の比 宇 川 の合 流 点 で 特 に 大規 模 な
氾 濫 が発 生 した2).厚 別 川 の場 合 は,合 流 点付 近
の 川 幅 が狭 か っ た こ と と,支 川 の 合 流 点 角度 が ほ ぼ
直 角 で あ っ た こ とか ら,合 流 点 付 近 で 急激 に水 位 が
上 昇 し,こ の結 果,周 辺 の 農 地 や 牧 場 へ 大 量 の氾 濫
水 が 流れ 出 し,被 害 が 大 き く広 が った もの と推 定 さ
れ る.
これ ら河 川 合 流 点 付 近 の 流 れ や 河床 変動 の メ カ ニ
ズ ム を調 べ る こ とは,河 川 工 学 上 重 要 な課 題 で あ る
― 529―
flow
, 0-equation
model,
k-ƒÃ model
と考 え られ る.本 研 究 で は,(1)洪 水 後 の 河川 の 現
地 調 査,(2)模 型 実 験 お よび(3)数 値 解 析 を 用 い て
河 川 合 流 点 にお け る流 れ の特 徴 を検 討 す る もの で あ
る.現 地 調 査 は氾 濫 直 後 の厚 別 川 と比宇 川 の 合 流 点
にお い て行 われ,土 砂 の堆 積 状 況 や 倒 木 や 流木 の 方
向 に よる流 向 の推 定,痕 跡 調 査 や 聞 き 取 りに よ る最
大 水 位 の推 定 を行 い,洪 水 ピー ク 時 の合 流 点 の 流 れ
の様 子 を推 定 した.模 型 実 験 は厚 別 川 と比宇 川 と同
様 に直 角 に合 流 す る河 川 合 流 点 付 近 の流 れ の様 子 を
調 べ る た め に水 路 を作 成 し,流 向,流 速 お よび水 位
の実 測 を行 っ た.数 値 計 算 モ デ ル は2次 元 の 浅水 流
方 程 式 を用 い た もの で,本 川 ・支 川 か ら任 意 の流 量
を流 入 で き る よ うに した も の を用 い た.モ デ ル の検
証 は本 研 究 で の水 路 実 験 結 果 を比 較 す る こ とに よ り
行 われ た.最 後 に,こ のモ デ ル を用 い て 実 際 の厚 別
川 と比 宇 川 の洪 水 時 の流 量 を用 い た計 算 を 実施 し,
洪 水 時 の流 れ の様 子 を推 定 した.ま た,現 地 を対 象
と した計 算 で は,現 地 調 査 で 明 らか に な っ た合 流 点
近 傍 の橋 梁 地 点 の 閉塞 とこれ に伴 う氾 濫 お よび 住 宅
の 被 害 な どの 因 果 関係 を検 討 す べ く,橋 梁 地 点 の 閉
塞 を想 定 した 計 算 も行 った.
以 上,本 研 究 で は河 川 合 流 点 の流 れ を多 角 的 に検
討 し,複 雑 な合 流 点 付 近 の 流 れ に関 す る理 解 を深 め
る こ とが 可 能 と な った.
図‑1厚
図‑2
2.現
図‑3実
別 川 と比 宇 川 の 合 流 点 の航 空 写真
験水路
図‑4合
流 点付 近 の流 速 ベ ク トル(実 験 結 果)
図‑5実
験 水 路 の数 値 計 算 に用 い た 計 算 格 子
C地 点 に あ る被 害 を受 け た 民家
地調査
2003年8月9日 の夜 半 か ら10日 の朝 に か け て北 海 道
日高 地 方 を 襲 っ た 台風10号 に よ り,日 高 地 方 で は 局
所 的 に 総 雨 量 で400mmを 上 回 る集 中豪 雨 が記 録 され,
特 に河 川 改 修 が 十 分 に進 ん で い な か った 厚 別川 で は
未 曾 有 の大 氾 濫 が発 生 した.厚 別 川 は幹 川 流 路 延 長
34.7km,流 域 面積266km2の 中規 模 河 川 で あ る.現 地
調 査 は10日 の 午 後 か ら断 続 的 に行 われ た が,本 格 的
な 調 査 は道 路 状 況 が 回 復 した9月 に入 っ て か ら行 わ
れ た.本 研 究 の 調 査 対象 は 特 に被 害 の激 しか っ た 厚
別 川 の河 口か ら上 流 約15kmに 位 置 す る比 宇 川 の 合 流
点 を含 む そ の周 辺 で あ る.
現 地調 査 で は河 川 や 氾 濫 原 の堆 積 ・侵 食 状 況,橋
梁 や 民 家 の被 害 状況,の構造 物 と植 生 の傾 きや 聞 き 取
り調 査 に よ る氾 濫 時 の 流 向 と水 深 の 推 定 な どが行 わ
れ た.図‑1は 氾 濫 直 後 に撮影 され た 厚 別 川 と比 宇 川
の合 流 点 の航 空 写 真 で あ る.図 中 にお い て 左 か ら右
に 向 か っ て流 れ て い る のが 本 川 の厚 別 川 で あ り,上
か ら下 に 向 か っ て流 れ てい る の が支 川 の 比宇 川 で あ
る.図 か ら も分 か る よ うに,厚 別 川 は 比 宇川 合 流 直
後 が 狭 窄 部 とな っ てお り,さ らに比 宇 川 の 合 流 形 状
も ほ ぼ 直角 に合 流 す る とい う地 形 的 特性 が 氾 濫 を促
した と も言 え る.図 中の 矢 印 は 現 地 調 査 に よ り推 定
され た流 向で あ る.図 中 のA, B地 点 に は橋 梁 が あ る
が この 両 方 とも低 水 路 の橋 脚 の 問 に大 量 の流 木 が詰
ま り,低 水 路 は 閉 塞 状 態 で あ っ た と推 定 され る. C
地 点 の 民家(図‑2)はA地 点 の橋 が 塞 き止 め られ た こ
とに よ り,支 川 の 主 流 が 右 方 向 に 急激 に 曲 が る よ う
に氾 濫 し,こ の 氾 濫 流 の直 撃 を受 けた も の と思 わ れ
る.B地 点 で も橋 梁 の 手 前 で 急 激 に 低 水 路 か ら溢 れ
出 した 流 れ が 氾 濫 原 の 農 地 を流 れ た様 子 が 分 か る.
3.水
理模 型実 験
現 地 調 査 の 結 果,お お よ そ の流 れ の様 子 は 推 定 で
きた が,よ り詳 し く合 流 点 を含 む 流 れ の 状 態 を検 討
す る方 法 と して数 値 解 析 を行 うこ と と した.た だ,
既 往 の 比較 的簡 易 な 数値 計 算 モ デ ル が 合 流 点 を含 む
流 れ に適 用 可能 か ど うか を検 証 す る必 要 が あ り,そ
― 530―
こ で,以
下 に 述 べ る 模 型 実 験 を 実 施 し た.実
は 図‑3に 示 す よ うに,本
角 に 合 流 す る 水 路 で,そ
川 幅20cm,支
験装置
川 幅5cmで
直
表‑1
れ ぞ れ 上 流 側 か らポ ン プ に
モデル定数
繋 が る バ ル ブ で 流 量 を 調 節 し な が ら通 水 させ る構 造
と な っ て い る.流 速 は, 2次 元 の 小 型 電 磁 流 速 計 に
よ り河 床 か ら6割 の 地 点 で 本 線 の 縦 断 方 向 に5cm毎 に
20点,横
断 方 向 に2cm毎8点 に 合 計160点 で 計 測 し た.
水 深 は ポ イ ン トゲ ー ジ を 用 い て 本 川 の 水 路 中 心 に
沿 っ て5cm間 隔 で15点 計 測 し た.勾
支 川1/50と
0.71(1/s)で
配 は,本
川1/100,
し,実 験 流 量 は,本 川1.14(l/s),支
川
あ る.本 川 下 流 端 で は 簡 易 な 堰 を 設 け,
厚 別 川 と 同 様 に 堰 上 げ 背 水 の 状 態 を 作 っ た.こ
の結
果,本 川,支 川 と も に 常 流 と な っ た.
実 験 結 果 の 流 速 ベ ク トル 図 を 図‑4に 示 す.支
川合
流 後 の 本 川 右 岸 側 に 沿 っ て 逆 流 域 が 形 成 され て い る
こ と が 分 か る.な お,詳
しい 実 験 結 果 に つ い て は 次
図‑6
0‑方 程 式 モ デ ル を 用 い て 計 算 した 流 速 ベ ク ト
ル 図 と コン ター 図
に 述 べ る 数 値 計 算 の 結 果 と 比 較 し な が ら示 す.
4.
数 値 計 算 モ デ ル と実 験 の 比 較
流 れ の 計 算 を,二 次 元 非 定 常 の 浅 水 流 方 程 式 お よ
び 連 続 の 式 を 用 い て 行 っ た.運 動 方 程 式 は 移 流 項 と
そ れ 以 外 の 項 に 対 し て 分 離 解 法 を 用 い,移 流 項 に は
CIP法,拡
散 項 に は 中 央 差 分 法 を用 い て 計 算 を行 っ
た.運
動 方 程 式 中の 拡 散 項 に含 まれ る渦 動 粘 性係 数
νtは, 0‑方 程 式 モ デ ル とk‑ε
法 で 求 め,結
モ デ ル の2種 類 の 方
果 を 比 較 す る こ と と し た.渦
動粘性係
数 νtを求 め る 式 は, 0‑方 程 式 モ デ ル の 場 合 は(1)式
で あ る.
(1)式 の 係 数 κ/6は,乱
水 平 混 合 が 主 要 因 の 場 合,
れ が2次 元 浅 水 流 の
0.2程 度 の 値 と な る こ と
が 知 られ て お り3), κ/6の 代 わ り に0.2を
算 も行 っ た.
k‑ε
図‑7
用い て計
k‑ε
モ デ ル を 用 い て 計 算 し た 流 速 ベ ク トル
図 とコ ン ター 図
モ デ ル の 場 合 の 渦 動 粘 性 係 数 νt
を 求 め る 式 は(2)式 で あ る.こ
Rodi4)に よ る も の で あ る.
こ でk‑ε
モデ ル は
(1)
(2)
た だ し,
kと
ε は 次 式(3),
図‑8
実験 水 位 と計 算 水位 の 比較
(4)で 求 め る.
(5)
こ こ で,
(0.4),
(3)
間 座 標,
νt:渦
U*:摩
(U,
速 で あ る.ま
動 粘 性 係 数,
擦 速 度,
V):そ
た,
h:水
κ:カ
ルマ ン定数
深,(x,
れ ぞ れ(x,
Cμ,
C1ε,
y):空
y)方
C2ε,
σK,
向の流
σ εは
定 数 で あ り,モ デ ル 定 数 を 表‑1に 示 す.
境 界 条 件 と して,本
川,支
川 両 方 の 上 流 端 で 流 量,
本 川 の 下 流 端 で 水 位 を 与 え,流
川 を1.14(1/s),
(4)
ま た,
PkvとPεvは,次
式(5)で
量 は 実 験 と同 様 に本
支 川 を0.71(1/s)と
試 行 計 算 の 結 果,マ
し た.若
干の
ニ ン グ の 粗 度 係 数 を0.011と
し
た.計 算 格 子 は 図‑5に 示 す と お り と し,時 間 刻 み を
0.001秒 と し て 計 算 を 行 っ た.計 算 は 開 始 後50秒 程
表 さ れ る.
―531―
度 で 安 定 し た 後 の60秒 か ら90秒 間 を 平 均 して,計
算
図‑8は 本 川 中 心 線 上 の 水 位 の 実 験 結 果 と 計 算 結 果
の 比 較 で あ る.な お,図‑8中
の水 位 の計 算 結 果 は 両
計 算 の 結 果 得 られ た 流 速 ベ ク トル 図,お よ び 流 速
コ ン タ ー 図 を 図‑6お よ び 図‑7に 示 す .こ こ で,図‑6
モ デ ル で こ の 図 で は判 別 で き な い ほ どの違 い しか 無
結 果 と した.
は,渦
動 粘 性 係 数 を0‑方 程 式 モ デ ル で,図‑7はk‑
した.
εモ デ ル で 求 め た も の で あ る. 0‑方 程 式 モ デ ル の 係
数 は,
κ/6を 用 い た 場 合 と, 0.2を 用 い た 場 合 と で
結 果 に 大 差 が な か っ た た め,
結 果 を 示 し て い る.ま
た,流
κ/6を 用 い て 計 算 した
速 コ ン タ ー 図 は,逆
域 を 分 か りや す く す る た め に,
か っ た の で, 0‑方 程 式 モ デ ル に よ る も の の み を 掲 載
X方 向,
Y方 向 の 流 速 を そ れ ぞ れuお よ びvと し,
ま た こ れ らの 横 断 分 布 を 実 験 結 果 と両 モ デ ル で 比 較
を 行 う.図‑5で
のXが0.4mか
ら0.8mま
0.2mお き に 表 示 し た の が 図‑9か
こ で,各
図 中 のXお よ びYは,図‑5の
X方 向(本 川 下 流 方
い る.図
中 の 実 線 が0‑方 程 式 モ デ ル を 用 い て 計 算 し
向)成 分 の み の 値 で 表 して い る.ど
ち らのモ デ ル も
の幅 と
長 さ に若 干 の 違 い が あ る.
た も の で,点
で あ り,黒
座 標 と対 応 し て
線 がk‑ε モ デ ル を 用 い て 計 算 した も の
丸 が 実 験 結 果 で あ る.合
流 前 のX=0.4m
の 横 断 に お け る 流 速 分 布 は0‑方 程 式 モ デ ル とk‑ε モ
デ ル で の 計 算 結 果 は ほ ぼ 同 じで あ り,実
図‑9
X=0.4mのX方
向 の 流 速(u)の
横 断 方 向分 布
図‑11
X=0.6mのX方
向 の 流 速(u)の
横 断 方 向分 布
X=0.8mのX方
向(u)の
あ る.こ
流
合 流 点 下 流 に 逆 流 域 が 形 成 され て い る が,そ
図‑13
で の範 囲 を
ら 図‑14で
図‑10
流 速 の横 断方 向分 布
―532―
験 結 果 とも
X=0.4mのY方
向 の 流 速(v)の
横 断 方 向 分布
図‑12
X=0.6mのY方
向 の 流 速(v)の
横 断 方 向 分 布
図‑14
X=0.8mのY方
向 の 流 速(v)の
横 断 方 向 分 布
図‑16
図‑15
計 算 水位 と痕 跡 水位 の 比 較
厚 別 川 と比宇 川 の合 流 点 の 数値 計算 に用 い
た 計 算格 子
ほ ぼ 一 致 し て い る.合
流 後 のX=0.6m,
0.8mの 横 断 に
験 お け る 流 速 分 布 で は,ど ち ら の モ デ ル も,右 岸 側
の 逆 流 域 が ほ ぼ 再 現 出 来 て い る が,特 に 下 流 側 の
X=0.8mの
流 速 分 布 はk‑ε モ デ ル の ほ うが 良 く実 験 結
果 に 一 致 して お り, 0‑方 程 式 モ デ ル の も の は 逆 流 域
の 長 さ が 過 大 に 表 現 され る よ うで あ る.
以 上,
0一方 程 式 モ デ ル とk‑ε モ デ ル の 二 つ の モ デ ル
を 用 い て 計 算 を 行 っ た 結 果,共
に 定性 的 に は実 結 果
と類 似 した 結 果 が 得 られ た が,逆 流 域 の 形 状 はk‑ε
モ デ ル の ほ う が よ り現 実 に 近 い よ うで あ る.そ こ で,
次 章 で 行 う河 川 合 流 点 を 含 む 流 れ の 計 算 で はk‑ε モ
デ ル を 用 い る こ と とす る が,計
算 負 荷 の 少 な い0一方
程 式 モ デ ル で も 流 れ の 計 算 を 行 う.
な お,本
研 究 で は時 間 平 均値 の み の 比較 を行 っ た
が,合 流 点 の 流 れ の 検 討 を 行 う場 合,非 定 常 渦 運 動
の 再 現 性 も 考 慮 し な く て は な ら な い5).こ の こ と は,
今 後 の 重 要 な 課 題 で あ る.
図‑17
5.
河 川 合 流 点 を含 む 数 値 計 算 モ デ ル の 実 河
厚 別 川 氾 濫 再 現 計 算 の 流 速 ベ ク トル 図 と コ
ン タ ー 図(k‑ε モ デ ル)
川への適用
を 図‑17に 示 す.本 川 の流 れ は蛇 行 複 断 面流 れ の特
上 記 の 河 川 合 流 点 を含 む 数 値 計 算 モ デ ル を,前
の 厚 別 川 と比 宇 川 の 合 流 点 に 適 用 した.洪
記
水 時 の流
量 は,ウ
ォ ン サ4)ら に よ っ て 推 定 され た ピー ク 時 の
も の(本
川863m3/s,支
て 与 え,下
川732m3/s)を
一 定流 量 とし
流 端 の 水 位 は 現 地 調 査 に よ る痕 跡 水 位
(標 高49.5m)と
した.マ
ニ ン グの 粗度 係 数 は低 水
路 で0.03,高
水 敷 で0.065と し た.計 算 の 時 間 刻 み
は0.01秒 と し,計 算 は5000秒 ま で 実 施 し た.こ の う
ち,1000秒
と した.計
か ら3000秒 の 間 の 値 を 平 均 し て 計 算 結 果
算 格 子 は 河 道 だ け で な く,氾 濫 原 も 計 算
で き る よ う に 計 算 格 子 を 広 範 囲 に 配 置 し た(図‑15)
計 算 格 子 は,流
向,流
速 の 急 変 部 に も対 応 で き る よ
うに で き る だ け 滑 ら か に 配 置 し た.計
水 位 の 比 較 を 図‑16に 示 す.図‑16は,本
心 に 沿 っ た 縦 断 図 で あ る.こ
算 水 位 と痕 跡
川低水 路中
こ で 図 中 のSは 流 下 方
向 距 離 で あ る.実 線 が 河 床 高 と 計 算 水 位 で あ り,○
が 痕 跡 水 位 で あ る.計 算 水 位 と痕 跡 水 位 は 良 く一 致
し て い る.水
深 平 均 流 速 の コ ン タ ー 図 と ベ ク トル 図
―533―
徴 で あ る低 水 路 曲頂 部 よ りや や 下流 か ら氾 濫 して氾
濫 原 を直 線 的 に流 下す る よ うな流 状 とな っ て い る.
さ らに,こ の 氾 濫 原 の流 れ に 対 して,支 川 か らの流
れ がぶ つ か る よ うな形 に な り,前 述 の 実 験 結 果 同様
に合 流 点 下 流 に大 き な 剥離 域 が発 生 して い る.こ の
結 果,本 線 の 流 れ は全 体 的 に合 流 点 の対 岸 側 に 押 さ
れ る よ うな形 とな っ て い る.こ れ と,下 流 の 狭 窄 部
の影 響 が 重 な り,合 流 点 上流 の氾 濫 を助 長 して い る
よ うで あ る.図‑2に 示 した 民 家 が洪 水 流 の 直 撃 を受
け た理 由 は,図‑1中 のA地 点 の橋 がせ き止 め られ,
流 向が 変 化 した た め と考 え られ る.そ こで, A地 点
の橋 脚 間 の閉 塞 を考 慮 して計 算 を行 っ た.具 体 的 に
は, A地 点 の 河 床 高 さ周 辺 の地 盤 と同 じ高 さま で 上
げ,前 記 と同 じ水 理 条 件 で計 算 を行 っ た.結 果 を
図‑18に 示 す.支 川 低 水 路 の流 れ が, A地 点 の 閉塞 に
よ り右 方 向 に急 激 に 曲 が る よ うな形 で氾 濫 し,こ の
氾 濫 流 が 流 速3m/sを 超 え る速 度 でC地 点 の 民家 を
襲 った と推 定 され る.
図‑19
図‑18A地
A地 点 の 橋 梁 の 閉 塞 を 考 慮 した 場 合 の 流 速 ベ
ク トル 図 と コ ン タ ー 図(0‑方 程 式 モ デ ル)
点 の 橋 梁 の 閉 塞 を 考 慮 した 場 合 の 流 速 ベ
ク トル 図 と コ ン タ ー 図(k‑ε モ デ ル)
6.
ま とめ
ま た, 0‑方 程 式 モ デ ル を 用 い て 計 算 し た 場 合 の 結
果 を 図‑19に 示 す.
K‑ε モ デ ル を 用 い て 計 算 した 結
果 と0一方 程 式 モ デ ル を 用 い て 計 算 し た 結 果 を 比 較 す
る.本
川 の 蛇 行 に よ っ て 低 水 路 の 流 れ が 氾 濫 したD
地 点 付 近 と,橋
梁 地 点 の 閉塞 に よっ て迂 回 す る流 れ
が 発 生 し たC地 点 付 近 の2つ
の 地 点 で, k‑ε モ デ ル
を 用 い て 計 算 した 結 果 の ほ うが,乱
れ が過 大 に表 さ
れ て い る.実 際 の 洪 水 時 の 流 速 や 流 向 は 細 か く は 分
か ら な い が, C地 点 とD地 点 に あ っ た 民 家 の 被 害 状 況
が 甚 大 で あ っ た こ と を 考 え る と,両
地点での流速や
流 向 が 複 雑 で あ っ た と 考 え られ る.
k‑ε モ デ ル で
計 算 し た 結 果 の ほ うが,こ
れ ら両地 点 とも に乱 れ が
大 き く計 算 され て い る が,実
い て 今 後 検 討 を 行 い た い.
以 上,厚
現 象 との対 応 関係 に つ
別 川 と比 宇 川 の 合 流 点 の 氾 濫 を 再 現 す る
計 算 を 行 っ た が,流
向,水
深,さ
らには 橋 梁 地 点 の
流 木 に よ る 閉 塞 とそ れ に 伴 う氾 濫 流 の 挙 動 な ど,実
際 の 洪 水 氾 濫 の 様 子 を 良 く再 現 し て い る よ うに 思 わ
れ る.
本 研 究 で は,現 地調 査,模 型 実 験 お よび 数 値 算 計
に よ り河 川 合 流 点 を含 む河 川 の 流 れ の 検 討 を行 っ た.
特 に数 値 計 算 モ デ ル は,実 河 川 の複 雑 な流 れ の様 子
を推 定 す る の に非 常 に有 効 な もの で あ る こ とが示 さ
れ た.実 河 川 の合 流 点処 理 は治 水 上 極 め て重 要 で あ
り,本 研 究 で述 べ た よ うな数 値 計 算 を用 い る こ とに
よ り,計 画 の比 較 検 討 や,流 量 規 模 の違 い に よる治
水 安 全 度 の検 討,さ らに は超 過 洪 水 時 にお け る氾 濫
流 の予 測 な どが 比較 的簡 単 に行 うこ とが可 能 と考 え
られ る.
参考文献
1) 賓 馨: 2002年 朝 鮮 半 島 にお け る豪 雨 洪 水 土 砂 被 害 に 関
す る研 究 調 査, 京 都 大 学 防 災 研 究 所, 2003.
2) 土 木 学 会 水 工 委 員 会: 平 成15年 台 風10号 北 海 道 豪 雨 災
害 調 査 団報 告 書, 土木 学 会 水 工委 員 会, 2004.
3) 池 田駿 介: 水 理 学,技 報 堂 出 版, 1999.
4)Wolfgang Rodi: Turbulence
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4)
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5) 木 村 一 郎,
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pp.
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開水路横 流
水 工学論
1997.
(2004.
―534―
台
2004.
入 部 に お け る 渦 運 動 の 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン,
文 集,
2003年
に よ る 北 海 道 日高 地 方 河 川 の 洪 水 流 出 及 び 土 砂 動
9. 30受
付)